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グレイスノーツ大陸記  作者: ailisyu
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カイトとケンジャケンゾウの記

 都心の電気店の前は、しばしば行列ができる。俺もテレビで見たことがあるし、友人が並んで買ったものを自慢げにしてきたこともある。

 だが自分で並ぶとなればこれほど苦痛なことはない。


 熱い太陽に一向に減らない時間、隣にいる友人のうるさい声…


「なぁ凱斗、いい加減に静かにしてくれないのか?何日同じテンションが維持できるんだよ」

「同じじゃない!後15分だぞ?テンションは最高潮だ!」

「それ並び始めた時も言ってたぞ」



 凱斗とは十数年の付き合いだが、これほど面倒だったことはない。

 3年前にお気に入りのゲームで都大会優勝を成し遂げた時でもここまでじゃなかった。


「ケンゾウ、おまえもこのGSだけはやったほうがいいって!な!わかるだろ!」

「わかってるから開店まで静かにしてろ。それにケンゾウじゃなくて賢治だ。」



 本当になんでこんなところで座ってるんだろ

 凱斗の持ってきたくたびれた雑誌を眺めて溜息を吐く


 グレイスノーツ大陸記。通称GS

 近年開発された記憶投射型仮想現実作成ゲームハード「aluF」の最新ゲーム。

 要は記憶の中の植物等をもとに仮想の世界を創造し、その世界でゲームをする、というもの。

 また、脳に直接作用させられるので高速処理が可能になり、理論上は「1秒で1日分の処理をさせられる」と書いてある。

実際は体調に悪影響のため、ほとんどのタイトルで使われいていないか、二倍か三倍程度に抑えられているらしい。


「ケンゾウ、店ひらくぞ。頼むな。」


さっきまでうるさかった凱斗が店の入り口を見つめる。ちょうど店員がブラインドを開け始めたらしく、緊張した表情だ。


雑誌をかばんにしまい、俺も立ち上がる。

「新作コーナーは店舗向かって左奥、最短ルートは込み合いが予測されるので一本横を走るぞ。

最初にもらった整理番号はカバンに入れておけ。それと商品があって初めて手に入るんだ。

距離は約350メートル、曲がり角三回だ。曲がる角は指示する。」



静かに了解、とだけ答えた凱斗の前には8人の面々が同じように構えている。この人たちと同じ道を行ったら、俺たちは減速しなければならないので後続に飲み込まれる。

整理番号をもう一度カバンに入れてあるか確認し、店長らしき人物が扉の前に立つのを見守る。


「大変お待たせいたしました、間もなく開店いたします。店内では事故等に十分にお気を付けください。」



自動ドアの上のスピーカーからの声とともにドアが開く。先頭集団に引っかからないようにドアを潜り抜ける


「直進、左七本目に入れ。」

「おお!!」


全力疾走をする集団の二本先の通路に凱斗を行かせ、俺も進む。狭いルートゆえに前が詰まるとと走りにくいが、二人ならばなんとかなる。


「大通りに出たら右、大交差点三つ目を左!」


事前に示し合わせされた内容をもとにルートを指示。大交差点を走っていると、後方を驚愕顔で追いかけてくる集団と出会い、凱斗に向かって言った


「あとは突っ走れ!レジ確保しておく!」

「任せろ!二つもっていくからしっかり待っててくれ」



猛追する二位集団をわき目にレジに向かい、レジ店員と雑談をして時間をつぶすと、満面の笑みを湛えた凱斗がやってくる


「さすが賢治だぜ。連れてきた甲斐があった」

「予定通りさ」



二人して笑って、店員に商品を渡した。




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