エピローグ
深まりつつある秋の日、グランゲルドの王都の門を、一人の少女がくぐり抜けた。
黒髪黒瞳の大男を影のように従えた、燃えるような紅い髪に輝く新緑の目をしたその少女は、その瞬間から自由で気ままな日々を捨て、多くのものを背負わねばならない新たな道を歩むことになったのだ。
それは、華奢な肩にはあまりに大き過ぎるものだった。
だが、彼女は自ら選択し、決意したのだ。
彼女にとって、大それた理由など必要なかった。彼女の目には、『国の為に』『みんなの為に』などという、そんな大きなものは映っていなかった。
彼女がその道を選んだ理由は、ただ一つ。
自分の手の中にあるものを、自分が愛しいと思うものを、壊したくない――ただそれだけのことで、ある意味、至極利己的な理由だった。
そんな『小さな』理由を胸に、彼女は暗く険しい道へと一歩を踏み出した。
その選択の末に彼女が何を失い、何を得ていくのか……どこに辿り着くのか。
それは、これから語られることである。
――これは、一人の少女の戦いの物語。
第一部「戦乙女の召還」は終了です。本文の推敲も終わりました。
次回からは第二部「大いなる冬の訪れ」となります。将軍としてのフリージアがいろいろ動く予定です。