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彼女の杞憂

大分遅くなりました。

長期休みに入ったので時間がある時にぼちぼち更新したいと思います。

舞踏会の準備も終わり、自室で読書をしていたエリザベスの元へ3つ下の弟アゼルレッドが訪ねてきた。

彼は今年騎士団に入団したばかりの新人のため、鍛練の後暇だといってしょっちゅう屋敷に帰ってくる。

それはいいのだが、いつも両親に挨拶もなしに真っ先にエリザベスの部屋へとやってくるのだ。

若干シスコン気味の16歳である。

アイレンが彼の好きなケーキやお菓子の乗ったカートを引いて部屋に入ってくると彼は目を輝かせてそれらに手を伸ばした。

その様子を見てエリザベスは柔らかく微笑んだ。

「アゼルは相変わらずね。甘いものを見るといつも子供のように無邪気になるんだから」


「しょうがないだろう?俺は甘いものには目がないんだ。特にトニーが作ったものは絶品だからな」

そう言って屋敷の料理長自慢のケーキを頬張りながらニコニコしている弟を見るエリザベスの目は優しく慈愛に満ちている。



「姉上、そういえば噂で聞いたけどレイ兄が今度の舞踏会に侯爵家の跡取りとして出席するらしい。しかもそこで婚約者候補を見つけろって親父さんに言われたってさ。姉上、ピンチじゃねーの?」


その言葉を聞いたエリザベスは文字通り固まってしまい、アゼルが話しかけても揺らしても反応しなかった。



冷静になって考えてみれば、彼も自分と同い年の19歳だ。自分の所にも縁談の話が来ていると言うことは侯爵家の跡取りである彼の元にそういう類いの話が来ていない訳がないのだ。


「…アゼル、彼には地位も名誉もある。私より当然相応しい方がいるし、そもそも好きになること自体いけなかったのよ」


静かに言うとアゼルは呆れた顔をした。


「姉上が鈍感なことは知っていたけど、こんな意気地無しだとは思わなかった。好きなら好きで良いじゃないか。恋に身分とか地位なんて関係ないって俺に言ったのは何処のどいつだよ。自分は気持ちも伝えずにいるくせに」





アゼルが去った後の部屋はひどく静かでいつもの和やかな雰囲気はなく、この部屋の主が沈んでいて暗い為か常に凛としている優秀な侍女の顔も何処と無く元気がないようだった。


夕食もこの日は部屋で摂り、湯浴みを済ませて早々に就寝の準備を済ませたエリザベスはベッドに入ったものの、眠ることが出来ずに寝返りを繰り返していた。

アゼルの言うことは的を射ていた。



1年前、弟も身分違いの恋をした。

相手は弟より1つ年下の公爵令嬢であり、社交界デビューしたばかりだが美しいと評判がある方だった。

王城の舞踏会で出会った2人はあっという間に恋に落ち、両家の親の猛反対を受けたが、根気強く粘った結果公爵家の方が先に折れた。その為格下である伯爵家が反対することは出来なくなった。

それから暫くして2人の婚約が公になったことは、まだ記憶に新しい。


エリザベスは10年以上彼を想い続けているのに一度も気持ちを伝えた事がない。

幼馴染みで仲が良いと言ってもやはり貴族としての身分は違うのだ。

彼の家は伝統のある有名な侯爵家。

対してエリザベスの家は貴族と言えど金銭的に余裕のない貧乏伯爵家。

釣り合う筈もない。


…実際は彼女の父の頑張りで少しずつ金銭的な余裕が出来始めたのだがそんなことを知らないエリザベスは未だにこんな事を気にしているのである。

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