紺碧とドレスと彼女
今更ですが初めまして。
拙い文章で読みにくく、おかしい所もあるかも知れませんがどうか最後までお付き合い下さい。
毎度の事ながらエリザベスは悩んでいた。
この前は淡い水色にレースを使いシンプルだが可憐な印象のものだった。
次は思い切って真紅の生地に胸元が空いたものを着てみようか。
いや、それは思い切り過ぎだろうか。
などと心の中で独り言を言いながら選んでいたのは次の舞踏会で着るドレスだ。
しかし忘れてはいけない。
彼女の家は貴族とはいえ決して裕福ではないのだ。
ドレスを選ぶにしても予算を考えるといつも周りの令嬢達より遥かにシンプルなものになる。
型はあまり派手に出来ないがゆえ色にはとことんこだわる。
しかしいつまで経ってもなかなか決まらない。
女性なら着るものにこだわって長時間悩むのは当然のことだろうが、彼女は選び始めてかれこれ3時間以上が経つ。
そんなエリザベスの様子を見てとうとう痺れを切らしたアイレンが更に何着かドレスの見本を抱えてやって来た。
「いい加減だいたいの形は決めたわよね?別に今度の舞踏会が特別ということはないんだから無難なものを選んだらどう?」
ため息まじりでそうこぼすアイレンに視線を移したエリザベスはアイレンが持っているドレスの一着に目がとまった。
海の底のような紺碧から上に向かって淡い色になっていくドレス。深い青は何を隠そうレイヴンの瞳の色なのだ。
エリザベスが彼に関するものが嫌いな筈がない。
「アイレン、その青いドレスよく見せてくれないかしら。凄く素敵なドレスだわ」
アイレンが広げたドレスをエリザベスに宛がい、鏡にその姿を映して見ると、なるほど、よく似合う。
無駄な飾りは一切ない流れるようなマーメイドドレスは小柄ながらスレンダーかつ胸もある色っぽい体型のエリザベスに驚くほど似合っていた。
「よく似合ってるわリザ。このドレスを着るなら庭の青薔薇を髪に挿したらどうかしら?素敵だと思うわ」
エリザベスも頷いて微笑んだ。
「えぇ。このドレスに決めたわ。形も素敵だけど、これはレイヴンの瞳の色だもの」
そう言ってエリザベスは彼を想いながらドレスに合う装飾品を選び始めた。