彼の日常 2
昼を過ぎ、春とはいえ陽射しは強い。
休憩も兼ねた昼食の時間を設けたレイヴンは適当な木陰を見つけると腰を下ろして一息ついた。
雲ひとつない清々しいほどに青い空を見上げるとずっと昔から自分の心を捕まえて離さない憎らしくも愛しい幼馴染みが頭に浮かんだ。
彼女はこんな青空が大好きで、晴れた日には2人で屋敷を抜け出し森や湖へ遊びに行った。
陽に照らされてキラキラと輝く湖を見て瞳を輝かせた彼女の方が眩しかった。
『また行こうね』
そう約束した時から何年経っただろうか。
何も知らなかったあの頃はこのままずっと一緒なのだと信じて疑わなかった。
しかし2人は成長し、大人になった。
いずれは互いに結婚し家庭を持つことになるのはわかっている。
実際、この1、2年は父から何度もその類いの話をされた。
今までは仕事が忙しいという理由で断ることが出来たが、そろそろその手も使えなくなってきそうだ。
いっそ男らしく彼女に求婚して結婚相手として父に紹介出来れば良いのだが、所詮自他共に認めるヘタレである。
何度決心して実行しようとしたことか。
初めは昔から自分の気持ちを知っていた両親は応援してくれていた。
だがあまりのヘタレっぷりに呆れた両親はもう彼女じゃなくてもいいから婚約者くらい連れてこいと言って頻繁に縁談を持ってくるようになったのだ。