みつり小井戸
一枚、二枚、こんにち小井戸〜 久しぶり!、みつり小井戸です!
突然ですが、皆さんは自分のハンドルネームをどうやって決めたか覚えていますか?もしかすると何回も決めたことがある、なんて方もいらっしゃるやもしれません。
古今東西、名付けというのは姿を縛る呪いだ〜なんて言いますよね。落語で言えば寿限無が有名ですが、めでたい名前をつけたはずが、名前が長すぎて、呼んでる間に子が溺れ死んでしまった、みたいなやつですねぇ。私が初めて聞いたやつは、たんこぶが引っ込んじゃった!ってオチでしたけど。それはともかく、かくいう私にもですね、寿限無みたいに、なんと、名前と、名前の由来があるんですよ!
名前はさっき言いましたよね、姓をみつり、名を小井戸と申します。今日は私の名前の元となった、ある物語を語ることとしましょう!
◇
昔々、ある屋敷に10枚の皿がありました。主人はとてもその皿を大事にしておりました。しかしその家で働いていた下女、みつはある日、皿を洗おうとして、一つを井戸の中に落としてしまいました。ガシャン、という音も聞こえました。失くしたというと主人は大変お怒りになって、10枚が揃うまでけして姿を見せるなと言います。主人がみつを閉め出すと、大雨が降り始めました。皮肉なことに、屋敷以外に屋根のある場所は井戸しかなく、みつはそこで一晩を過ごすことにしました。屋敷からは、主人の皿を数える声が聞こえてきます。みつは、大変なことをしてしまった、と思いました。井戸を覗きこんでも、皿は見当たりません。ただ自分の影が映るだけです。急に、あたりが静かになって、水面に顔が見えました。幽霊ではありません。雨が止んで、月が出てきたのです。その日は満月でした。みつは、今晩のうちに、主人をたずねることにしました。
主人の部屋に入ると、皿を数えながら気絶したと思しき主人が底に倒れていました。夜も遅いので無理もありません。みつは自分の上着を主人にかけてやったあと、皿の一枚を自分の懐に入れました。
「へっくしょん!」
文字通りの濡れ衣を着せられた主人は寒さで目が覚めました。目の前には頭だけが濡れている、さっき追い出した下女のすがたがありました。みつは言いました。「皿が見つかりました。井戸までついてきてくださいませんか?」
月の光の中を、妖しげな下女と水溜まりを踏みながら歩いていきます。井戸へ着くと、みつはその中を指差しました。覗きこむと、自分の顔が見えます。主人は、「皿はどこだ。」と訊きました。「もっと覗き込まないと見えませんよ。」とみつは言いました。もっと深く覗きこむと、突然、皿が見えました。みつが、懐から皿を取りだして、主人の後ろから水面に映したのです。「しかし、なんだか柄が違うような気が。」
「もっと近くから見ないとわからないですよ。」主人が身を乗りだすと、みつは、主人を、井戸の中に皿ごと後ろから突き落としました。
「一枚」
主人がそう言いながら沈んでゆくのをみて、みつは残りの皿も持ってきて、全て井戸の中に落としました。
「二枚」
主人の声は未だ聞こえてきます。最初の皿は、きっと割れてしまっているでしょう。十枚目がないことに気付かれたら。みつは、こう言いました。「主人、わたしの名前は?」
「みつ。四枚、…
…十枚」
声が聞こえなくなったので、みつは井戸の蓋を閉めて、その場を離れることにしました。




