第六話 合成獣キメラ
ヴァルナスに促されるまま、私たちは奥の部屋に入る。
ヴァルナスは私たちが入ったことを確認すると、扉の鍵を閉めた。
不穏な感じがする…、私の心はざわつきはじめる…。
レグルスさんは、部屋の中にもう一つ生き物がいることを確認する。
「こちらは、申請されていないようですね…」
ヴァルナスは語り始めた。
「こんな少数の捜査とは私はついている。しかも片方は人形ではないか…。
さきほどの残念な生き物をみただろう。生き物と思念体はそもそも触れ合えないのだ。
思念体は生き物の思考を乗っ取ることはできても、思念体と生き物はうまく合成はできない。
必ずほころびが生じてしまう。
その点、神の体は素晴らしい。生き物も思念体も自由に触れることができる。
神の体を用いることによって、思念体も生き物も自由に合成できる。
その神の体を使っているのだ。申請なんてできるわけなかろう。
まだ未完成品ではあるが十分だろう!合成獣キメラよ、やれ!」
神の体に、ドラゴンの翼、思念体の頭脳にゴーレムの手足、お腹にはドラゴンの頭がついている。
それぞれの最強部位を集めた合成獣のようだ。お腹のドラゴンの頭はブレスをはくに違いない…。
神の力を使えない私では、全く対抗できない…。
レグルスさんの影に隠れて、じっと防御姿勢をとっている。
レグルスさんは、合成獣とヴァルナスを同時に戦っており少し劣勢のようだ。
私は外に出て助けを呼ぼうとして走り出すも、扉の鍵は開けられなかった…。
部屋の内側にいるのに鍵が開けられない…、この部屋は中の生き物を閉じ込めるように設計されているということ…。
体中に悪寒が走り始める…。
レグルスさんはだんだんと防戦一方になっていた。無理を悟るとレグルスさんは大声で叫んでいる。
「ミ……ユ!…。…」
戦いの騒音でよく聞き取れない。でも私への言葉みたい。なんて言っているんだろう…。
「ミレイユ、よく見ろ!
あれは自分の体だろう!
自分の体を取り戻せ!」
私は、はっとする。薄明りで暗くて神の体をよく見えていなかった…。よく見ると確かに私の体だ。
私は思い出す。そうだ。あの体は私の体だ…。
私にも人形の体の心得はある。
今の人形感覚の相対座標から、私の体感覚の相対座標へ意識の切り替えを行う。
手を動かしてみる。うん。私の体は反応している…。大丈夫。私の体、ちゃんと動く。
私は自分の体で指を鳴らす。くっついていた生命体が、神の力で離れていく。私は意識を自分の体へ戻した。
「ありがとう!レグルスさん。私、思い出した!」
レグルスさんは少し微笑んだ。
形勢は逆転、レグルスさんはあっという間にヴァルナスを捕まえた。
「私は、ヴァルナスを連れていくから、ミレイユは家に先に戻っておいてくれるかい?」
「ええ」
私は、指を鳴らし、神の力が使えることを確認すると、以前より鮮明な青い空を眺めながら家路についた。
よかったら、コメント、感想、ブックマーク、評価をぜひお願いします。




