第三話 私の神様、残念系男子
レグルスさんは時折、パチンと指を鳴らす。
通常、神様は神の力を使う時に儀式的に指を鳴らす場合が多い。
だけど、レグルスさんは、特に理由もなく指を鳴らしているみたい…。
癖になっているって事かしら…。レグルスさんってやっぱりちょっと残念なのよね…。
神の力を使う時は、杖を使うか、指を鳴らすかが、今の天界の流行。
以前は私も、神の力を使う際に指を鳴らしていたの。
けれど、思念体が大量発生したっていう事件が天界で起こった後から、私は神の力が使えなくなってしまった。
ちなみに、思念体ってのは、地球の言葉では幽霊のことね。人には見えないみたいだけど…。
一応、神の力が使えない件、天界に問い合わせてみたんだけど、原因はまだわかってなくて、しばらくの間、神の力は使えなさそう…。
でも、神の力が使えない神は、私だけじゃないみたいで、重点的に調査してくれているみたい。
それまで天界の簡単なサポートを仕事としていた私は、神の力が使えなくなって仕事が進められなくなって、天界の勧めで一旦神のお使いをすることになったの。
そのお使い先の神がレグルスさん。今の私は、レグルスさんにお仕事をもらう形で助けてもらっている。
神の力が使えず、モニターすら操作できなくなった私を、雇って頂いているし、モニターを操作するための専用のキーボードとマウスも用意してもらっている。
神の力が使えない、こんな私に仕事をくれて、もちろん、とても感謝している。
でも、一点…。
神の力が使えない私は、指を鳴らすことをやめたの。
私はやめたのに、レグルスさんは癖で指を鳴らしている……。
レグルスさんが指を鳴らすたびに、私は自分が神の力が使えないことを思い出しちゃう……。
そして、以前のとても優雅な、とてもきらびやかな仕事を思い出して、私は憂鬱になるの…。
レグルスさんへの感謝もあり、初めのうちはそこまで気にならなかった。
でも、たびたびやっていると少しずつ気になってくる…。
まるで眠る直前の時計の小さな音みたいに、気になってくる。
そして、一度気になり始めるともうすべてがダメに見えてくる…。
レグルスさんの指鳴らしが、私を憂鬱にさせる。
いたって普通に見えていたこの家も、普段の素っ気ない会話もすべて残念に思えてくる。
やっぱり言った方がいい。
「レグルスさん、理由も無く、指を鳴らすのはやめた方がいいですよ。少しみっともないです」
レグルスさんは少し考えて言った。
「すまない。癖になっていたみたいだ、気を付ける」
「ええ、控えていただけると助かります」
言ってよかった。改善してくれるみたい。
でも、時折、忘れて指を鳴らし「あっ、ごめん」と言っている。
やっぱり、私の神様、残念系男子なのかしら…。
私はふと、最近天界で話題のライトノベル「私の神様、残念系男子」を思い返していた。
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