第十三話 ちょっとした冒険
今日は生命コンテストの日。朝早くに、レグルスさんが家に来た。
ヴァルナスが生命コンテストで不在だから、ミレイユさんの体を取り戻しにいくと、わざわざ連絡をくれた。
ミレイユさんの体をいち早く、気づかれずに取り戻すつもりらしい。
「ご連絡ありがとうございます。お気をつけて!頑張ってくださいね!」
私はレグルスさんに伝えると、ルミエルが私の袖を引っ張って話し始める。
「私もついて行きたい…。生命の取り扱いは、精霊である私が一番適任だし…」精霊のルミエルが言い出した。
ルミエルはきまぐれな精霊、ここまで何かをやりたい、というのは珍しかった。ちらりとレグルスさんに目を向けると、
「せっかくだし、一緒に来るかい?危険はそんなにないだろう」
「では、つきそいとして私もついていきます。だから…、展示の方はミカエルとメモリナでお願いね」そういって私もついていくことにした。
「一応、連絡取れるようにこれを渡しておくね」メモリナが私に小型無線機をくれる。
「ありがとう!では、みんなよろしくね!」
私は今、科学技術班のヴァルナスの家の前にいる。家というよりは研究所ね。
ミレイユさんの体はここの地下の奥の部屋にあるはずだ。
小型無線機から連絡が入る。
「メモリナです。ヴァルナスは今、こちらにいます。どうぞ~」
「了解!ありがとう!では作業を開始します!」
どうぞ~なんて言われたから、ついそれっぽい口調で話してしまった。ルミエルからの視線がちょっと恥ずかしい…。
小説の通りなら、ヴァルナスがいない今、家の中には誰もいないはずだ。
「ヴァルナスの不在も確認できたみたいだし…、では、入ろうか。心配ない。捜査状は持っている」
神様の家は、防犯意識がとても低い。というのも盗むという概念自体がまずない。
衣食住に関わることや簡単な物であればなんでも神の力で用意できるからだ。
「あっ、ちょっと待ってください。念のため見られないように工夫します」自分とルミエルの体に光学迷彩を施した。
光学迷彩とは、周囲から体が受け取った光をそのまま体から発することで、周囲と同化するという地球で発明された技術だ。
これなら、ぱっと見ではわからないし、監視カメラがあったとしても多少ごまかせる気がする。
「君たちは、無線機の事といい、しっかりしているね」
みんな生命コンテストに参加しているのだろう、家の周りには誰もいない。私たちは家に侵入した。
物音を立てないように慎重に、地下への階段を探す。
レグルスさんが静かに指を指した。あった。あっちだ。レグルスさんの後ろを私とルミエルは慎重に進んでいった。
神の家としては珍しく監視カメラがある。光学迷彩をかけておいてよかった。
地下に降りると、ミレイユさんの小説の通り奥の部屋がある。私たちはそっと入っていった。
神の体に、ドラゴンの翼、思念体の頭脳にゴーレムの手足、お腹にはドラゴンの頭。
薄暗い部屋には合成獣がいた。監視カメラが存在しないことを確認すると、私は光学迷彩を解いた。
「あった…。ミレイユさんの体だ…」
「やっぱり、合成獣は気持ち悪いわね…」
「ええ。とてもかわいそう…」
そういうとルミエルは、精霊の力でくっついた生命体をひとつずつ順に分離していく。
生命体に対する精霊の力は、神の力を軽く超えるみたい…。一つ一つの所作がとても神秘的に見える。
合成は、生命体が生きたまま行われるらしく、分離されると一つのちゃんとした個体として分離された。
「今は連れていけないの…。ごめんね」ルミエルはドラゴンの頭をなでながら話しかけた。
ドラゴンは一度目が合うも、そのまま眠りについた。
「さすがは、精霊ですね…。とても生命の扱いがうまい…」レグルスさんがルミエルをほめていた。私も黙って頷いた。
「後は、こちらで引き受けるよ。ありがとう」
「こちらこそ、わがままに付き合って頂いてありがとうございました」
私は、お礼を言うと、ルミエルとテレポートで家に戻った。
「レグルスさんも言っていたけど…、ルミエルって生命に対しては特別なのね…」
私は、気まぐれな精霊だと思っていたルミエルに感心していた。
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