第十二話 ミカエルと生命コンテスト
しばらくしているとメモリナが戻ってくる。
「一通り見て回ってきた…。そろそろ、交代しよう」
「あ、ありがとう!じゃ、次は私が見てくるね」
「機械の体だと見えない生命が展示されていたのかな…。何も見えない展示もあった…」メモリナが不思議そうに首をかしげてた。
「ふ~ん…。気になるわね…。ちょっと楽しみ!」
展示番の仕事を簡単に引き継ぎ、私は、周りの展示から見てまわった。
「メモリナが見えないって言っていたのはこれかな?」正直私にも見えない。
展示横の看板を見て、少し笑ってしまった。
「悪魔の証明の悪魔」
悪魔の証明とは、「存在しないこと」を証明する困難さを示す概念の事だ。
存在しないことを証明するのは難しい…。
今、たまたまいないだけかもしれないし、私の見えない未知の何かがいるのかもしれない。
存在しないことを証明するには、すべての時間、全ての次元で存在しないことを検証する必要がある。
既に、今来ただけの私にはそれは不可能だった…。
よく見ると、お隣のレグルスさんの展示みたい。
時々悪魔の調査をする審律官ならではの展示ってことね。
横に置いてあるモニターにいいねをつけて次に展示に進んだ。
展示にもさまざまある。ありきたりの生命体の展示もあれば、ペット自慢をしている神様もいる。
神様のペットは、なかなかに独創的で、かっこいいもの、美しいもの、強いもの本当に様々だった。
なかでも、生命力の高いペットは面白かった。いくらつぶしても死なないし、切っても分裂して生き続ける。
過酷な環境において進化を促したことで、生命力たくましく成長したということらしい。
そんな中、とても不思議な展示があった。
「時間の流れに無関係な生命体」
研究を司る神たちのチームによる展示だ。
展示ケースにえさをまくと、突然魚の姿の生命体が複数現れる。そして、食べ終わるとふと消える。
消えたと思ったら、まだあるかなと現れては消えたり、大きい個体が現れたり消えたり…。
展示によるとこの生命体は、私たちの時間軸と異なる時間軸を持っているらしい。
この生命体は普通に成長しているのだが、私たちの時間軸とは異なるため、突然成長したり、元に戻ったりしているように見えるらしい。
隣同士に並んでいる個体が、実は時間の違う同じ個体であることもあるんだって…。すごい不思議…。
発見されること自体まれで、急遽展示されることになったみたい。
展示で一番注目を浴びているのはここね。観察を仕事とする神々のスペース。
「相手の希望する姿かたちに変わる生命体」
ホープ様と同じ「星の観察」を仕事している神の展示。通り過ぎる神と目が合うたびに、姿を変えている。
目が合ってしまった神は、恥ずかしくて立ち去る神が多く、次から次へとさまざまな姿かたちが見られるため、見ていて全く飽きない。
そして、その隣もとても人気。
「声真似の上手な生命体」
「生物の観察」を仕事している神の展示。
一度聞いた声、しゃべり方を記憶したうえで、話す内容を指定して、しゃべらせることができる。
姿かたちは、普通の小鳥ではあるが、ここまで声を似せることができるなんて、すごい…。
この小鳥は、販売されているらしく、小さな行列ができている。
次はマジックショーみたい。
「時間を戻す生命体」
サルの姿をした生命体が、紙を破る。そして、呪文を唱えるふりをして紙を元通りに戻す。
紙を戻す瞬間に、展示している時を司るからわずかに神の力が感じられる。
生命体が戻しているのではなく、隣の神が紙の時間を戻し、その影響で、紙を元に戻している。
子供は無邪気にとても喜び、それを見ている大人は知っていて「すごいね」と子供とは一緒にしゃいでいる。
ショーが終わると種明かし。「天界では時間戻しは禁止事項だよ」と教えていた。
時を司る神による、教育的な展示だったってことか…。
残りは、科学技術班のスペース。
展示の中で一番大きい生命体はこれのようね。とてもとても大きなライオンの展示。
地球のライオンと比べたら、体長は3倍はありそうね…。こんなに大きい個体よく見つけられたわね…。
それと…、天界の時間戻しの事件で、今一番怪しいとされるヴァルナスの展示。
これは、ミレイユさんの小説に合った通り、生き物が合成されていて、見ていて少し気持ち悪い…。
ホープ様のお使いの天使として地球の生命体を長く見てきて、生命体に詳しくなったつもりだったけど、まだ知らないことたくさんあった。
今日はとても充実した一日だったな。
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