第十一話 生命コンテストとミカエル
今日は生命コンテストの開催日。セレスティア・プラザは、すでにきっとにぎやかに違いない。
朝、レグルスさんが来た。ホープ様とルミエル、レグルスさんは別行動をするため、生命コンテストはメモリナと私だけで参加することになった。
「ミカエル。もし、私のこと聞かれたら、今日は仕事ってことにしておいてね。じゃ、よろしく!」
「はい、わかりました。ホープ様もお気をつけて」
私は、セレスティア・プラザは初めて。前回の文明発展コンテストの時は、モニターで眺めているだけだった。
今日は、ちょっと緊迫する状況だけれど、怪しまれないように普通らしく振舞うためにも、一旦事件の事は忘れて楽しもうって思ってる。
「メモリナ、展示番もあるし、交互に展示をみてまわろう。先に私が展示番するから、メモリナは見てきなよ」
「わかった。そうしよう。ついでに、録画しとくよ」機械でもあるメモリナがいてくれてとても助かる。
私たちの展示は、ホープ様が地球から持ってきた、白と合わせて8匹の七色のカエル。
専用のガラスケースに入ってもらって、展示してる。
私たちの展示スペースには、机一つと椅子が二つ、モニターが一つ用意されていた。
椅子一つは予備として、後ろにおいて荷物置き場にすることにした。
椅子に座って、周りの展示の様子をみる。
誰でも見学可能ってことで、機械や人形を使って見て回る人も多いようだ。
時折、展示を見て、モニターにタッチして、いいねしてくれる。
最初は、7色のカエルの希少性に気付いてもらえるかなって心配していたけれど、
そもそも見た目がきれいって理由でいいねしてもらえてるみたい。
「ありがとうございます」お礼を言いながら、私は少し安心していた。
「あら、ミカエルじゃない。こんにちは」
唐突に声をかけられた。見覚えがある。この人は確か…、今回の生命コンテストの審査員の一人、観察を司る神、ノエリアさんだ。
「あっ。ノエリアさん、初めましてミカエルです」
「あら、覚えていてくれてうれしい。いつも地球の観察報告見させてもらっているわよ」
ノエリアさんは、ホープ様の仕事「星の観察」を取りまとめる立場の神様、地球の言葉でいうと観察の社長ってところかしら、もちろん私は知っている。
むしろ末端のホープ様のお使いの天使である私を、ノエリアさんが知っていることの方が少し不思議…。
「ノエリアさんって、もしかして、全部の報告に目を通してるんですか…?」
「ええ、もちろん。私は、観察を司る神ですからね」
「いつもつたない報告ですみません」
「いえいえ、そんなことないわ。えっと…、いつだったかしら、地球で思念体が見つかった時の報告とか、よくできていたわよ」
その報告は確か…、思念体が地球人の思考を乗っ取ろうとしたけど、急に思念体が離れていって…、よくわからないから適当に報告した時のものだ…。
恥ずかしくなって、ノエリアさんの言っている意味もよく分からないし、私は適当に頷くことしかできなかった…。
「それより、このカエル、きれいなだけじゃなくて、珍しいわね」
「はい、私もそう思います!」
よかった…。気づいてくれる神様もいるみたいだ。
生命体の多くは、太陽の光をエネルギーとして取り込んでいる。光を直接取り込む植物と、それを食して間接的に取り込む動物と大きく二分される。
光の波長による吸収効率が星によって変わり、吸収に適する色とそうでない色に分かれる。そして進化の過程でそうでない色は自然淘汰されていく。
地球では、青色を持つ生命体は非常に珍しい。緑は光合成に適し、赤や黄は警戒色として進化したが、青はそのどれにも属さず、限られた環境でしか見ることができない。
短時間のうちに、美しさと希少性を考慮して七色のカエルを選んだホープ様のセンスに、私は改めて感心していた。
「今日は、ホープはいないの?」
「はい、ホープ様は今日は家で仕事しています」
「あら、挨拶したかったんだけど、残念ね…。いつも人類への敬意と愛が感じられていい観察ねって伝えておきたかったんだけど…」
「わかりました!私が、伝えておきます。きっと喜びます」
「では、お願いね。それと、観察していて最近様子がおかしいことないかしら?例えば、時間が進んでいるみたいな…」
唐突に聞かれて、私はとっさに言葉がでなかった…。
「まぁ、いいわ。ここでは、話しづらい事もあるし…、もし何かあったら、ここに来て。では、またね」
ノエリアさんはそう言って、名刺を渡し、他の展示に向かって行った。
仕事上の上司に当たるノエリアさんに対して“家で仕事している”って表現してよかったのかな…?
ノエリアさんは、さすが観察を司る神なだけあって、優美というか優雅というか、存在自体が素敵な方だった…。
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