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プロローグ
最初に感じたものは、身体が浮力に押し上げられ、『何か』の中で浮上していく感覚。
『何か』の中は心地よくて、ずっとこのままでもいいと思えるくらいだった。
ゆっくり、ゆっくりと。どれだけの時間、揺蕩っていたか。
浮上し続けて、僕は天井へと到達した。
天井の上には水面がある。
僕は水面に上がらなければいけない気がして、天井を力の限り押し上げた。
でも、天井はびくともしなかった。
どれくらいそうしていたか、いつしか僕は解け始めていた。
おぼろげな意識の中で、あぁ、自分は消えるんだ、と。
自分は何だったのか。何のために意識を持ったのか。
さっぱり分からない。
消えることに残念さも、悲しさも無い。
消えるんだ。
その刹那、自分の内側で何かが動いた、気がした。
―――消える勿れ。
―――紡ぐといい。
―――貴公だけの、物語を。
そこで、意識が途絶えた。




