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イタズラ  作者: 蓉司貴史
4/7

楽しみ

階段をゆっくり上っている山本さんを見つけた。「山本さん!」彼女が振り返る心なしか目を伏せぎみにしている。まぁあんな事をした後だ気まずいのだろう。「山本さんお弁当包み落としていったでしょ洗っておいたから」「…ありがとうございます」山本さんはお弁当包みの折り目をさわっている。優しく撫でるように。

「後わ~はいこれー!遊園地の優待券貰ったんだけど今度の放課後一緒に行くでしょ!」

「…はいでも私でいいんですか他に仲の良い友達がいるんじゃ…」もしかしたら断られるかもと思っていたが大丈夫だった。ちょっと安心したが断られない自信も確かにもあった。

「山本さんが良いの他の人じゃダメ」彼女の顔には疑問が浮かんでいた意外と気持ちが表情に出るタイプの人みたいだ可愛い。

「詳しいことはまた近くなったら言うから」「はい」「じゃあまたね」「…」彼女は私に押しきられるような形で返事をしていた。

約束の日に限ってこうなるマネージャーからの長い電話だ私は早く切ろうと思うが向こうは矢継ぎ早に話してくる鬱陶しいけど仕事の話だしょうがない。やっと電話を切った。

「はぁもう」約束の時間30分もすぎていた。

急いで図書室に駆ける。扉をバッと開いた。

良かった彼女は待っていてくれた。「ごめん山本さんマネージャーから急な連絡が入って」「…大丈夫です」私は彼女の顔を見て何故か安心感のようなものを覚えていた。

「ほんと!なら早く行こ!」カバンに入っている帽子を急いでかぶる。とにかく早く遊びに行きたかった。「電車で行くんだもんね」制服で電車に乗って遊園地に行く電車なんて久し振りだとても楽しみだ何故か今日は山本さんに変なことをしようとも思わない純粋に彼女と遊ぶのが楽しみだ。「鈴木さんごめんね」「えっ?なにが?」「あの、その電車で…」「あぁ全然大丈夫私撮影でロケ車で行くこと多いから逆に新鮮でいい制服でいくっていうのもいいしねふふっ」「さっ行こ」「はい!」山本さんはお金の心配をしているのだろう全然気にしなくていいのにお金なんていくらでも山本さんになら使ってもいい。なんて私はずいぶん山本さんのことを気にかけている。でもあの瞳を見た日のことが忘れられない。私は山本さんに興味があるのだ。電車では何人かの人に見られていたが別に気にならなった見られることは慣れているそれより山本さんの顔が少しくもっている、もしかしたら私が見られていることを気にしているのだろうかその顔を見て少しの高揚を覚える。

もっと山本さんのいろんな表情が見たい。

遊園地に着いても山本さんの表情はくもりがちだ。別の表情が見たくて私は「わぁきれいふふっ山本さんも見てる?」「キレイですね」「でしょ!」彼女が噴水をみる横顔が素敵だった噴水の反射で彼女の瞳が青く輝くように見えるくもりがちだった表情も今は嬉しそうな顔になっている。「そうそうあの人魚のアトラクションにのりたかったの!行こ!」彼女の腕を引っ張るひんやりとしていて柔らかな腕の感触が気持ち良かった。「うぁー気持ちいいなんかキラキラして可愛いよね」「そうですねふわふわして気持ちいいです」クラゲのような乗り物に乗る。彼女もゆったりして気持ち良さそうだ何かイタズラしようかとも考えただけど彼女の穏やかに楽しんでいる表情をみたらそんな気がなくなった今日は純粋に遊園地を楽しもうと気を

またあらためる。

「そうだ後でポップコーン買おうよ一緒に食べよ」「はい」彼女は素直に返事するその素直さもいい。受動的とも思えるが芸能人たちは自分が自分がという感じの人が多い印象だが彼女は一歩下がって受け止めてくれる。その感じに安心感を覚えるのかもしれない。

「ポップコーン早く買い行こ!」私は早足でポップコーンの売店まで歩く山本さんに食べさせてあげたかったお気に入りの味がある。人魚の容器を買って容器一杯にポップコーンを積めてもらう。キャラメルのいい匂いがした。すると山本さんもポップコーンを買おうとする。

「山本さんは買わなくていいの私が買ったやつ一緒に食べよ」「でも」彼女が戸惑うような表情をする。でも私は彼女に自分の買った分を食べさせてあげたかった。「いいの!一人じゃこんなに食べきれないもの」「ありがとうございます」「よしじゃあ口開けて」そうポップコーンを直接彼女の口にいれたかった。

「えっ?」「いいから口開ける」「はい」山本さんは素直に少し口を開くエサを求める雛のように口を開くなんだか微笑ましくてこっちも楽しい気分になる。彼女はゆっくりポップコーンを噛んでいる味わっているみたいだするとコクンと喉が動く飲み込んだみたいだ。「美味しい」本当に美味しかったみたいで良かった。

「でしょ?ふふっ」「なんかアラビアテーマのアトラクションもあったよね行ってみない?」「はい…」彼女は少し恥ずかしそうにしていた。二人で目的地までポップコーンを食べながら歩くお互い特に会話もなかった。でも落ち着く他の友達だと結構喋るのだが山本さんとは会話がなくても居心地が良かった。突然山本さんが「鈴木さん指血が」「ん?ああこれはしゃいでたからどっか擦ったのかも」「近くにトイレがあるから指洗ってください私絆創膏は持ってます」「これくらい大丈夫でしょ」「ダメです!バイ菌が入ったら大変です!」「わかった洗うよ」彼女は真剣な表情をしているそんな顔もするんだと思った。正直キズができていて良かったと思った今日は山本さんのいろんな顔がみれて嬉しい。トイレについた「急ぎましょう!」「鈴木さん指だしてください」山本さんが私の手をとり水に浸ける血を押し出すように洗われた。「あーいたー」「少し我慢してください」その声は真剣だった誰かにこんなに心配されるのは久し振りだ少しむず痒い感情になる。彼女のハンカチで私の手を綺麗に拭いてくれた。丁寧に絆創膏も貼ってくれる。山本さんは心配性だなと思ったが同時に嬉しい感情も込み上げた。「ふふっありがと」「鈴木さん気をつけて下さいね」「うんわかったふふっじゃあアラビアに向かおっか」外はもう夜だアラビア風の建物やメリーゴーランドに幻想的な明かりが灯っている。ワクワクしてつい「すごーい!良くできてるねきれー!」と声をあげてしまう。

山本さんは光る建物を静かにみていた光が彼女の瞳を輝かせるついその表情に見いってしまう。近くには月も出ていてより幻想感がましていた。「ねぇあのメリーゴーランド乗ろ!」

山本さんも楽しそうに乗っている私も綺麗な景色を見ながらメリーゴーランドを楽しんだ。

「はーもう8時過ぎてる山本さん門限何時?」「9時です」「うそー!急いで帰らなきゃ!パレードは見れないね」「その…ごめんなさい」「全然いいよーそれより早く帰らないとご両親が心配しちゃう帰ろ!」早く帰らせないとと焦ってしまう。門限が9時までとは知らなかった。高校生なのに門限が結構厳しい。真面目なご両親なのかもしれない。

急いで電車に乗る門限を少しすぎてしまうかもしれない。彼女の家まで送るつもりでいたが大丈夫と断られてしまっただけど山本さんの表情は晴れている楽しんでくれたのかもしれない。

彼女と別れて近くの公園に寄るブランコに座って指に貼って貰った絆創膏を眺めたケガをした時の真剣な表情を思い出す。今日は彼女のいろんな面がみれた絆創膏を貼った指を撫でる夜風が気持ち良かった。

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