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イタズラ  作者: 蓉司貴史
2/7

恐れ

凛と澄んだ声が私を呼んだ。少しのからかい…その声は少しのからかいを含んでいた。

私は間の抜けた声を出していた。彼女が佳那さんが私に話しかけてきていた。

「ねぇ山本さん私と昼ごはん食べるでしょ」私はまた間の抜けた声を出していた。「どうして…」「ねぇ私とごはん食べるでしょ」そんなこと言われたら私は断ることなんてできない。

でもどうして…「じゃあ行こっか」「…」弁当箱が入った袋を持って鈴木さんの少し後ろを付いていく。何を話せばいいのだろう。

黙り込んでしまって鈴木さんは嫌な思いをしてないだろうか?鈴木さんは黙って私の事を見ている。やはり私の事を不審に思っているのだろうか。でも鈴木さんは私の持っている。手提げ袋をみて「山本さんて自分でお弁当作ってるの?」普通に話しかけてくれた。

「…はいあの…喫茶店でバイトをしているので少しでも料理作るの上手くなりたくて…」

大丈夫ちゃんと喋れている。

「へぇ喫茶店てなんて名前の店なの?」

「喫茶青石って言う名前の店なんですけど」

「あぁ!知ってる。結構前に

撮影で行った店だ。」「売店でパン買ってくるからちょっと待ってて」歩き姿もすごく洗練されていて見とれてしまう。パン一つ買う動作もきれいだった。

彼女が私の所に戻って来る正直こんな瞬間が来るなんて思ってなかった。彼女とお昼ごはんを食べる。そんな事が起こるとは……

すごく嬉しい。何かこれから悪いことでも起こってしまうかもなんて思ってしまう。

「あっ…あのいいところって…」「まぁついてきて秘密の場所なの」私の学校での行動範囲は狭い自主的に移動するのは図書室とトイレと食堂くらいのものだ。こんなところに来るのは始めてだ。扉に資料室と書いてある。知らなかった。「ここ鍵が開いてるのふふっ」彼女はいたずらっ子のように笑うとても楽しそうだ。「さぁ入って」彼女に促されるまま資料室に入る少し埃っぽい。確かに何かの資料が置かれている後は椅子が何脚か畳まれて置かれてた。「あの…鈴木さん先生に怒られないかな…」もしも先生に目をつけられて悪目立ちするのも何か怖かったでも彼女は何でもなさそうに。「大丈夫だいぶ前からここ使ってるけど先生なんて来たことないしバレなきゃ大丈夫でしょ」「でも」「心配性なのねふふっ」彼女は全く気にしていないようだ。すると彼女がふいに私の頭に手を伸ばしてきた何をされるのかと思った瞬間本当に優しく髪を撫でられ驚いたそして始めての感覚がありくすぐったかった。なんともいえない感覚だった。「あ…あの鈴木さんくすぐったいです」顔が熱くなるのを感じる体もみじろいでしまった。急に頭を撫でられて心が少しざわつく。「ふふっくすぐったかった?ごめんね」

私はまた黙り込んでしまった。こんなときの言葉も見つからない鈴木さんは畳んであった椅子を二脚開いて向い合わせにしてしていた。

そんな姿さえ絵になっているドラマでも観ているみたいだ。「じゃごはん昼飯でも食べますか」」「いっただっきまーす」「…いただきます」向い合わせで一緒にお昼ご飯をたべる。今までこんな素敵なことが起こったことなんて無かったかもしれない、バイトの面接に受かったときも嬉しかったがそれ以上に嬉しいかもしれない。鈴木さんがパンをひとくちかじったどうやらコロッケパンみたいだ。「鈴木さんパン一つで足りますか?」「ん~そんなお腹空いてないしちょうどいいかな」鈴木さんも私のお弁当をみている。私も卵焼きを食べた少し甘い味の卵焼きだ美味しく出来ている最初の頃は焦げたり形が上手くできなくて苦労したがいまは前より上達したみたいだ。「その卵焼き美味しそう」「あ…の一つ食べますか?」すると彼女が私の方に手を伸ばしてきた。どうしたのだろう?と思っていたら彼女が私の顎を少し上向きにする。「…っ」彼女の顔が近づいてくるのに驚いていたら唇が重なった。彼女の柔らかな舌が口の中に入ってくる熱を感じた。まだ口の中に残っている卵焼きを味わうように舌が動いている。桃のようないい匂いがした彼女のつけてるフレグランスの匂いかもしれない。「…ふっ…ん」なんだか喉から変な声がでてしまった。全身に熱がたまるような変な感覚になった。「卵焼きすごく美味しいね」と言う。私は急いでお弁当を片付けると逃げるように資料室を出た。



逃げてしまった。いきなりキスはやり過ぎただろうかでもひとまず私は満足だ彼女の瞳柔らかな唇を思いだし微笑みが自然と出る。床には彼女の落としたお弁当を包むハンカチが落ちていた。拾ってきれいに畳む。洗って返してあげようまた話す口実ができる。慌てていたから落としたのだろう。キスももしかして初めてだったのかもしれない。まだ残っているパンを食べる。

いつもよりパンも美味しく感じる。全部食べきって私も資料室を出た。


図書室で眺めていた台本のドラマの撮影だひとまず自分の出る番の撮影は終わった、次の番までとりあえずの待ち時間だ。「佳那ちゃんお疲れ様なんかいつもより機嫌良いんじゃないの!」

相手役の共演者が話し掛けてきた。いわゆる今をときめく売れっ子の男性俳優だ21歳私より芸歴は浅い。私との役の間柄は幼なじみ。友達以上恋人未満よくある役だ。「なんですか?突然いつもは不機嫌みたいな言い方じゃないですか」「ごめんごめんそう言う事じゃなくてなんか嬉しいことでもあったのかなってさ」「うーん秘密ですふふっ」「やっぱりなんか嬉しそうそんな嬉しそうな佳那ちゃんに良いものあげるよ」「ちょっと待ってて」楽屋にでも何か取りに行くのだろうか急ぎ足でスタジオを出ていった。物の数分もしないうちに戻ってきた。手には封筒を持っている。「これ!遊園地の優待券今行く暇無くて佳那ちゃんにあげるよ友達とでも行ったら?」「入場料も乗り物も全部無料だよ良いでしょ」「へぇいいですね貰っちゃおふふっありがとうございます」「どういたしまして次の撮影も頑張んないとな」「えぇはい」へぇ遊園地の優待券かもちろん誘う人は一人しかいない山本さんにはお弁当包みも返さなきゃいけないしその時にでも誘おうまぁあんな事をしたから誘いに乗ってくれるかはわからないが。

「まぁいっかふふっ」さぁまた撮影だ気をわずいつも通りにやろう。




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