表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジン(第一部終わり)  作者: 桃巴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/46

ジン30

 古代京エリュシュガラ、第一層関門町。

 二日め。


 ジンは昨日に続き、残滓の魔核を追いかけ回した。

 午後にもなると足が鈍くなる。

 疲労がたまっているからではない。


「……だいぶ討伐したよな?」


 集中して周囲を見回す。

 微かな(きんし)を探すために。


「第一層にしては、少ない?」


 普通のダンジョンなら、第一層は広域で魔物数は多いのだ。

 逃げモンがわんさかいるのが、第一層。


(魔術付加扉で新たな魔物の出入りがないからな。カッツが殲滅した当時の魔物しか遺っていない。低層階に上層階から下りてくる魔物もほぼほぼいないから)


「そっか、じゃあ増えないもんな……あっ、金糸発見」


 ジンはやっと見つけた金糸を辿(たど)る。


(それに、ここの関門町は狭い。第二層が多いのだろう)


「了解。どうやら、ここにいるようだ」


 ジンは建物を見上げた。


「宿屋だな」


 そこでジンは今夜の寝床を考えた。

 この古代京エリュシュガラの外で、修行中ずっと野宿になるのか、と気が重くなって。


「ここを今夜の寝床にしたい気分だ」


(第一層の残滓の魔核を全て突けば可能だろう)


「あ、そっか。外からも第二層からも入ってこないもんな」


 ーー

 ーーーー

 ーーーーーー


 で、夕闇。

 脳内に描いた関門町をくまなく三周ほど巡った後、ジンは再度関門前に立った。

 廃城を見上げ、関門町に伸びる金糸があるかを広い視野で確認する。


 ここ古代京エリュシュガラは、山の勾配を使って築城された都市国家。

 段々畑のような都市構造で、まさにダンジョンのように階層がはっきりしている。

 その階層ごとに町が広がり、次の町へは蛇行して登っていく。

 階段状、もしくは階段の踊り場といえばわかりやすいだろうか。


「第一層主はいないんだよな?」


 大半のダンジョンは階層ごとに主がいるのだが、第一層は逃げモンばかりで、主がいないことが多い。


(ああ、いない)


「じゃあ、今夜は宿屋で休める」


 ジンはフッと体を弛緩した。


(いや、まだだ、ジン)


「まだ、残滓の魔核が!?」


 ジンはザッと周囲に注意を払う。


(最後に第一層の浄化をして締めるべきだ。魔核が潜んでいたら、感知できるだろう)


「……領域浄化 、いや領域感知が先か?」


 黄金紋の聖女が浄化で場を清めることと同じ。魔物に襲われた町や村、ダンジョン内で休む時などに行うことが多い。

 聖域を作り、一定期間魔物を寄せ付けないようにできる。


 ザッケカランも強力な浄化の領域展開がされている。


(そうだ。第一層の地図は脳内にあるな?)


「ああ」


(やってみろ。浄化黄金玉の感覚は掴めているだろ?)


 ジンはこん棒を地に伸ばす。


「治癒回復浄化」


 まずは自身へ。


 それから、関門町を頭に思い浮かべ脳内巡りをする……と、領域を掴む感覚。

 見えている建物のその奥まで視えているような透視感。


 鼓動を合わせる。

 浄化黄金玉とだけ。


((トクントクントクン))


『魔気が在るか感知』


((トクントクントクン))


 鼓動の乱れはない。

 残滓の魔核は無のようだ。

 

『領域展開』


 崑具に収まった三玉から光が関門町を巡る。それは、うねる金龍のようだ。金色の川とも。

 第一層関門町が光に包まれる。


『領域浄化!』


 光がスンッと地面に吸い込まれた。

 静寂の後……微風が流れる。

 とても清々しく心地よい。


(初めてにしては、上出来だ)


「うっせ」


 ジンは減らず口を叩きながらも、満面の笑みをこぼしていた。




 第二層噴水広場町。

 三日めから十三日め。

 第一層宿屋を拠点に第二層の残滓の魔核と対戦する。

 たった一人で魔物のパーティーを相手するのだ。

 実害はなかったとしても、ジンはかなりやられている。実体があったなら、満身創痍に近いかもしれない。


「……果てしなさすぎる」


 ジンは宿屋に入ってポツリと呟いた。


(果てはある。封鎖されているダンジョンだからな)


 新たに魔物の侵入はなく、確かに果てはある。ゴールは確実にあるのだが、いかんせん圧倒的多数対ジンだけ。


「せめて魔物一体の魔核を同時に突けたら早いんだけど」


 第二層に上がり、魔物一体の魔核数は二から四と増えた。そして、パーティー相手。きりがない感覚に陥っていた。


(やっと、気づいたか。一気に複数の魔核を突く。やってみればいいだろうに)


「は?」


(こんぼう)を伸縮して使っているのに、なぜ別の使い方ができないと思うのだ?)


 ジンはハッとする。


 こん棒を棒という武器として扱わず、伸縮するイメージをして実際にできたように、複数の魔核を突くイメージをすればいいわけだ。

 同調がそれを実行(実効)するのだから。


(崑具と三玉を装填した(こんぼう)の使い方が今まで通りでは、なんのためにここにいる?)


「確かに……」


 その修行のためだったから。


 ジンはこん棒を床に伸ばし、イメージを始める。

 ……例の修行僧のような見た目だ。


「魔核を突く……突く、槍か」


 崑具の三玉からスッと鋭利な光が放たれ、槍の刃のような形成になった。

 だが、まだ朧げ。ジンは槍の刃の形状を決めかねている。


「複数突く……槍、刺す……っ!」


 浮かんだのは、ランジの姿。

 ルララルーのダンジョンに串刺しにされた痛々しい姿。


「氷柱……」


 ジンは氷柱をイメージした。

 それも複数の。

 ルララルー残滓の聖女レーリが、手を広げダンジョンから突起物を出したあれーー複数の氷柱のような槍を。


『我が手に氷柱槍を!』


 明確になったイメージが、具現化する。

 こん棒の先端、三玉が収まった崑具は姿を変えていた。

 それはまるで三本の蝋燭(ろうそく)を灯す燭台(しょくだい)のような形。


(成功したようだな、ジン)


 ジンはトライデントのような槍と化したこん棒に頷いてみせた。





トライデントーーポセイドンが持つ三叉槍

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ