ジン30
古代京エリュシュガラ、第一層関門町。
二日め。
ジンは昨日に続き、残滓の魔核を追いかけ回した。
午後にもなると足が鈍くなる。
疲労がたまっているからではない。
「……だいぶ討伐したよな?」
集中して周囲を見回す。
微かな光を探すために。
「第一層にしては、少ない?」
普通のダンジョンなら、第一層は広域で魔物数は多いのだ。
逃げモンがわんさかいるのが、第一層。
(魔術付加扉で新たな魔物の出入りがないからな。カッツが殲滅した当時の魔物しか遺っていない。低層階に上層階から下りてくる魔物もほぼほぼいないから)
「そっか、じゃあ増えないもんな……あっ、金糸発見」
ジンはやっと見つけた金糸を辿る。
(それに、ここの関門町は狭い。第二層が多いのだろう)
「了解。どうやら、ここにいるようだ」
ジンは建物を見上げた。
「宿屋だな」
そこでジンは今夜の寝床を考えた。
この古代京エリュシュガラの外で、修行中ずっと野宿になるのか、と気が重くなって。
「ここを今夜の寝床にしたい気分だ」
(第一層の残滓の魔核を全て突けば可能だろう)
「あ、そっか。外からも第二層からも入ってこないもんな」
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ーーーーーー
で、夕闇。
脳内に描いた関門町をくまなく三周ほど巡った後、ジンは再度関門前に立った。
廃城を見上げ、関門町に伸びる金糸があるかを広い視野で確認する。
ここ古代京エリュシュガラは、山の勾配を使って築城された都市国家。
段々畑のような都市構造で、まさにダンジョンのように階層がはっきりしている。
その階層ごとに町が広がり、次の町へは蛇行して登っていく。
階段状、もしくは階段の踊り場といえばわかりやすいだろうか。
「第一層主はいないんだよな?」
大半のダンジョンは階層ごとに主がいるのだが、第一層は逃げモンばかりで、主がいないことが多い。
(ああ、いない)
「じゃあ、今夜は宿屋で休める」
ジンはフッと体を弛緩した。
(いや、まだだ、ジン)
「まだ、残滓の魔核が!?」
ジンはザッと周囲に注意を払う。
(最後に第一層の浄化をして締めるべきだ。魔核が潜んでいたら、感知できるだろう)
「……領域浄化 、いや領域感知が先か?」
黄金紋の聖女が浄化で場を清めることと同じ。魔物に襲われた町や村、ダンジョン内で休む時などに行うことが多い。
聖域を作り、一定期間魔物を寄せ付けないようにできる。
ザッケカランも強力な浄化の領域展開がされている。
(そうだ。第一層の地図は脳内にあるな?)
「ああ」
(やってみろ。浄化黄金玉の感覚は掴めているだろ?)
ジンはこん棒を地に伸ばす。
「治癒回復浄化」
まずは自身へ。
それから、関門町を頭に思い浮かべ脳内巡りをする……と、領域を掴む感覚。
見えている建物のその奥まで視えているような透視感。
鼓動を合わせる。
浄化黄金玉とだけ。
((トクントクントクン))
『魔気が在るか感知』
((トクントクントクン))
鼓動の乱れはない。
残滓の魔核は無のようだ。
『領域展開』
崑具に収まった三玉から光が関門町を巡る。それは、うねる金龍のようだ。金色の川とも。
第一層関門町が光に包まれる。
『領域浄化!』
光がスンッと地面に吸い込まれた。
静寂の後……微風が流れる。
とても清々しく心地よい。
(初めてにしては、上出来だ)
「うっせ」
ジンは減らず口を叩きながらも、満面の笑みをこぼしていた。
第二層噴水広場町。
三日めから十三日め。
第一層宿屋を拠点に第二層の残滓の魔核と対戦する。
たった一人で魔物のパーティーを相手するのだ。
実害はなかったとしても、ジンはかなりやられている。実体があったなら、満身創痍に近いかもしれない。
「……果てしなさすぎる」
ジンは宿屋に入ってポツリと呟いた。
(果てはある。封鎖されているダンジョンだからな)
新たに魔物の侵入はなく、確かに果てはある。ゴールは確実にあるのだが、いかんせん圧倒的多数対ジンだけ。
「せめて魔物一体の魔核を同時に突けたら早いんだけど」
第二層に上がり、魔物一体の魔核数は二から四と増えた。そして、パーティー相手。きりがない感覚に陥っていた。
(やっと、気づいたか。一気に複数の魔核を突く。やってみればいいだろうに)
「は?」
(我を伸縮して使っているのに、なぜ別の使い方ができないと思うのだ?)
ジンはハッとする。
こん棒を棒という武器として扱わず、伸縮するイメージをして実際にできたように、複数の魔核を突くイメージをすればいいわけだ。
同調がそれを実行(実効)するのだから。
(崑具と三玉を装填した我の使い方が今まで通りでは、なんのためにここにいる?)
「確かに……」
その修行のためだったから。
ジンはこん棒を床に伸ばし、イメージを始める。
……例の修行僧のような見た目だ。
「魔核を突く……突く、槍か」
崑具の三玉からスッと鋭利な光が放たれ、槍の刃のような形成になった。
だが、まだ朧げ。ジンは槍の刃の形状を決めかねている。
「複数突く……槍、刺す……っ!」
浮かんだのは、ランジの姿。
ルララルーのダンジョンに串刺しにされた痛々しい姿。
「氷柱……」
ジンは氷柱をイメージした。
それも複数の。
ルララルー残滓の聖女レーリが、手を広げダンジョンから突起物を出したあれーー複数の氷柱のような槍を。
『我が手に氷柱槍を!』
明確になったイメージが、具現化する。
こん棒の先端、三玉が収まった崑具は姿を変えていた。
それはまるで三本の蝋燭を灯す燭台のような形。
(成功したようだな、ジン)
ジンはトライデントのような槍と化したこん棒に頷いてみせた。
トライデントーーポセイドンが持つ三叉槍




