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ジン1
*今作は書き終えていない作品の公開となります。完結追いの読者様はご注意ください。
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俺だって、本当はかっこいい剣がよかったさ。剣じゃなくたって槍でもいいし、弓でもよくて、もう最悪大男が持つような大鎌でもよかったのに。なんで、俺の武器はこん棒なのさ。なんで武器が変えられないのさ。
武器召喚の儀式、どんな荘厳な武器が召喚されるのかと皆が期待を寄せる中、現れたのは……
カラーン
『こん棒』だった。
重厚で荘厳な召喚台の上にこん棒。
それも、細く軽々しい単なる棒。
例えるなら、筋骨隆々の弱い兵士……分かりづらい。ならば、玉座に座ったぬいぐるみが妥当か。
召喚者の王は、一瞬そんなことを思ったのだと後で言ったとかなんとか。
さて、期待のボルテージは『こん棒』が出現した瞬間霧散する。
代わりに言い知れぬ恐怖の静けさが支配した。
拍手喝采もなければ、歓声も起こらない。だって『こん棒』だから。
王が静けさを破る。
「……飛龍紋、勇者ジンに、『こん棒』を授ける」
そして、ジンは『こん棒』を賜った。
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