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 私の母とマカロン伯爵とクラフティ公爵は王都学園時代からの親友だった。

 父と母は愛し合っていたけど、父はお姉さまの母親マリサ様と政略結婚を余儀なくされた。


 マリサ様は父と母の事を知っており、愛人にすれば良いと言ったのだ。

 父とマリサ様は6年前に離縁している。

 私達はロザリンお姉さまに拒否されて別宅で生活をしていたが、4年前にやっとお姉さまに認めてもらったのだ。


 お姉さまは私と仲良くしてくれた。セオドアが私に冷たく当たるのをいつも申し訳ないと詫びてくれた。

 私も母も優しいお姉さまが好きだ。


 私がセオドアに酷い扱いを受けても両親は黙って首を振った。『耐えろ!』と。

 親友同士と言っても家の格差があって物申せない、セオドアは伯爵家で私に尊大に振舞っていた。


 そんなセオドアが遂に天罰を受ける日がやって来たのだ!


 二人の婚約は父親同士が親友だから、同じ年の子どもを親の勝手で婚約させただけ、政略的な意味はない。私の記憶の中では姉とセオドアの仲は非常に良かったと思う。


 お姉さまとセオドアが間もなく卒業で1年後には結婚という状況で、事件は起こった。


「私はセオドア様とは婚約を破棄して、教師のマークス様と結婚致します!」

 マークス様は王弟のご子息で、この方も庶子だった。

 セオドアが婚約破棄された!王族とはいえ()()に負けたのだ。


 ザマァごらんあそばせ~!庶子を馬鹿にするからよ!笑いが止まらなかった。

 三男のマークス様は婿入りし、姉が伯爵家を継ぐことになるだろう。

 セオドアはもう私とは一切関係ない、私は自分で自分の婚約者を見つける。

「ああ、私はもう自由だぁあ!」


 だが事は簡単に進まなかった。


 姉を溺愛するセオドアは婚約破棄を頑なに拒んで、どんなに説得しても聞き入れなかった。姉の不貞が発端であり、こちらとしては強く言えない。

 うん?これはお姉さま、非常に不利なのでは?


「セオドア様は長く妹のコレットを『庶子』と蔑み、精神的ないじめを繰り返してきました。そんな貴方を私は許せなかったのです!」


「虐めた覚えは無い。庶子と陰口を囁かれているコレットの幸せを願っていた。そんな言い訳をして自分の不貞を正当化するな。この件は裁判にかける!」


 話し合いは行き詰まった。

 未練がましい男だ、振られたのだからスッパリ諦めればいいものを。

 王都学園の卒業まで揉めに揉めて、ある日決着がついた。



「え⁈」


「だからね、コレットを婚約者にするならロザリンとの婚約は解消で良いと公爵家から提案されたんだよ」


「は⁈」


「私にはこうなるような予感があったわ。お受けしなさいなコレット」


 あの男が私の婚約者になる?いやいやいやいや・・・ 


「嫌です!酷い、私を売るのですか?あの男は私と婚約して、お姉さまと繋がりを持ち続けたいだけです!庶子の私と婚約なんて・・・絶対にショックで頭がイカレたのよ!」


「いや、彼はコレットが好きだと思うぞ」

「ええ、セオドア様はコレットに異常に執着していたわねぇ」

「思い返せば、

いつもコレットの事ばかり、あれではどっちが婚約者だったのかしら」


「私を丸め込もうとしていますね?そんな妄想は絶対に信じないわぁあああ!」

 サロンに座り込んで私は絶叫していた。



「妄想ってなんだ?庶子の分際で何を迷っている、黙って公爵家に来ればいいんだ」

 突如サロンにセオドアが入ってきて、半泣きの私の隣に立った。


「最高の男を吟味中だと言っただろう。文句はないな」

 最高の男?最低でしょう!何を偉そうに・・・


「ほら、ロザリンとの婚約解消の書類にサインした。これが欲しければ、コレットはこっちにサインするんだ」


 私に婚約の承諾書を突き付け、そこには既にお父様のサインが!

 何この状況?・・・誰か私に、嘘だ、夢だ、幻だと言って!


「どうだ、破り捨てるか?」


 脅迫されている。ピンチだ。でも、婚約して後で解消に持ち込めばいいのでは?どうせこの男は庶子が嫌いなんだし、今は嫌がらせで無茶を言ってるのだ。


「サインします。なので姉の事は諦めて下さい」

「ああ、ロザリンの件は水に流す」


「はぁああ~」とあっちで父の安堵の溜息が聞こえた。

 裁判で負けて公爵家に慰謝料なんか払ったら、うちは破産だものね。


 サインが終わるとセオドアはしっかり確かめて「よし!」と満足そうに頷き、父に「即刻提出を!」と命令した。


「かしこまりました!」父は書類を受け取り、セオドアを拝んでいる。


「コレットは頂いていく」

 セオドアは告げるなり私を抱きあげた。


「え⁈」


 家族の方に顔を向けると、三人とも横を向いて沈黙・・・そんな!

 ・・・クッ‼・・・なんて酷い家族!!!


読んで頂いて有難うございました。

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