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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

《声劇台本》金で雇われて人を殺している者です

作者: うかんむり

0:株式会社サクラメントのオフィス・昼


0:仕事をしているオフィスに銃と包丁を両手に持った男が入ってくる


ヒット:ここが株式会社サクラメントのオフィスで間違いないでしょうか?


ヒット:僕ですか? そうですね。なんと名乗りましょう。ああ、良いのがありました


ヒット:金で雇われて人を殺している者です


0:翌日・同場所・昼


ダグラス:犯行に使用された凶器は拳銃と家庭用の包丁。犠牲者17名。建物内の生存はゼロ……。ひどい事件だな


ケビン:許せません。一刻も早く犯人を捕まえないと


ダグラス:前あった銃殺事件とも、弾丸の種類は一致している。同一人物の犯行と考えて良いだろう


0:マフィアのアジト


ボス:ほぉ、その場にいた者は皆殺しですか


ヒット:はい! 何か問題がありましたか?


ボス:問題ありません。ライバル会社を潰すというクライアントの目的は果たされています


ヒット:そうですか! よかった……1件で20万ドル貰える仕事なんてはじめてです! 企業様の案件依頼は、本当に気前がいいですね


ボス:いえいえ、ヒットはいつも頑張ってくれてますから。これが今回の報酬です


ヒット:ありがとうございます!


ボス:こちらからの用件は以上です。この報酬で、今夜は奥様と豪華なディナーでも召し上がってください


0:ヒットの家・夜


ヒット:企業案件最高! るんたったー! るんたったー! ただいまー!


0:ヒットは中に入り扉を閉める


ミーナ:………


ヒット:聞いてくれよミーナ! 企業案件で今日20万ドルも稼いだんだよ! 凄いでしょ!


ミーナ:………


ヒット:おい〜、どうしたの? 悲しいことでもあったのかい? ほら、コレ見て元気出して!


0:札束の入った封筒を渡す


ミーナ:あなた……こんな仕事はもう辞めて……


ヒット:え? 急にどうしたんだよ。僕が働いてるから、君もこうしてご飯を食べてるんじゃないか


ミーナ:あなた……人を殺すのはダメだとわかってるの?


ヒット:そりゃ、法律で禁止されてる事はもちろん知ってるよ


ミーナ:私はそういう話をしているんじゃないの! 殺人はやってはいけない事なのよ……?


ヒット:いけない事って事はないだろ? 逮捕されるから、やらないほうがいいってだけで


ミーナ:……あなた、おかしいわ?


ヒット:おかしいのは君さ、ミーナ


ミーナ:どこがよ!?


ヒット:嫌なら君が働けば良いじゃないか


ミーナ:ハローワークで今探してるわ。高卒程度の学歴じゃ、採用なんかされないのよ。あなたもそれはわかるでしょ?


ヒット:そうだね。だから僕も君も大学に行きたかった。でも親のお金もないし、奨学金を貰えるほど勉強で優秀でもなかった


ミーナ:そうね……


ヒット:だから僕の手先の器用さを活かして起業したんじゃないか。倒産してしまったけどね?


ヒット:僕は知っている。肉体労働の苦しさも、経営の難しさも。殺人は僕にフィットした仕事なんだ。働く場所を自ら捨てるのは愚かな事だろう?


ミーナ:で……でも! それだからって殺人は許される事じゃ!


ヒット:たしかに僕は、この3ヶ月の間に43人殺している。警察に逮捕されたら確実に死刑だ


ヒット:だが、まだ逮捕されてない。何故だか分かるか? 証拠を残していないからだ。証拠がなければ、この国では罪がないのと一緒なんだ


ミーナ:人殺しはそれ自体が悪よ!


ヒット:人じゃなかったらいいのかい? 例えば豚や牛、鶏なんかはどうだ?


ミーナ:何が言いたいの?


ヒット:僕は昨日、君が焼いてくれた美味しいステーキを食べた


ヒット:牛を誰かに殺してもらって、それを僕が食べる。生きるために。そして僕は、人殺しを生きるためにやっている。食べるのと同じようにね?


ミーナ:他にやり方があったじゃない……


ヒット:他にやり方? そんなものが僕たちにあったかい? 借金を返すために、僕の臓器を売るか迷った挙句たどり着いた結末だろう?


ミーナ:でも……でも……! こんな生活耐えられない……!  沢山の人の死の上に立つ生き方なんて……毎晩悪夢を見る! 罪悪感で頭がおかしくなりそう……!


ヒット:君は今まで生物を殺した事があるかい?


ミーナ:え?


ヒット:でもゴキブリでもいい。自分の手で君は生物を殺した事はあるか?


ミーナ:あるわ……


ヒット:じゃあ何故罪悪感を持たない! 命に貴賎きせんがあるとでも言うのか?


ミーナ:訳が分からない事を言わないで! 私は……あなたの殺人の共犯者よ!


ヒット:共犯者だなんて。じゃあ、僕らはみんな牛殺しの共犯者、豚殺しの共犯者ってことになる


ヒット:そもそもこの国のたみは、独立戦争で犠牲になった多くの死の上に立っているんだ


ミーナ:うう……もう嫌!


0:(ヒットの携帯が鳴る)


ヒット:おっと! ボスからだ。ミーナ、仕事の電話だから静かにしていてくれ


ヒット:はい、もしもしヒットです? ああ………新しい仕事ですか。わかりました


ヒット:じゃあ、ミーナ、いってくるよ。この話はまた今度


ミーナ:………


ケビン:警部はこの犯人、どういった人物だと思いますか?


ダグラス:なぜそのような事を聞く?


ケビン:多くの犯罪には動機どうきがあります


ケビン:理由のない殺人事件も存在しますが、この殺人には動機があるような気がします


ケビン:その動機が、犯人の像に近付く鍵ではないかと……


ダグラス:犯人の像か……この未解決の殺人事件で、2人以上が殺害されたのが全部で4件


ダグラス:10人以上が3件ある。銃殺、刺殺しさつ、爆破。それらの事件には共通点がある。なにかわかるか?


ケビン:犯人の目撃者がいない事でしょうか警部


ダグラス:そうだ。3名が殺害された事件。おそらく2名の男性は、犯行現場を目撃した事で、巻き込まれたと推測される


ケビン:犯人は見られるのを酷く嫌う……いや、捕まる事を嫌う!


ダグラス:何を言っている? そんな事は犯罪者としては当然だ


ケビン:いえ、その行動から分かる事があります。奴は殺人が最終目的でない。または継続的な殺人を求めている


ダグラス:どういう意味だ?


ケビン:過去のシリアルキラーの中には、殺人に満足し、抵抗もなく逮捕されるやからも居たんです


ケビン:やつは違う! 冷静で証拠を絶対残さない。几帳面きちょうめん理性的りせいてきな人間!


ダグラス:ああ、証拠となる目撃者を生かして帰さない犯行の数々から、犯人は警察内でDollmakerドールメイカー《人形の造り手》と呼ばれるようになった


ケビン:死体を人形に喩えたDollmakerドールメイカー……まるで死神ですね


ダグラス:死神か。だが奴は神でも悪魔でもない。人を殺すのはいつだって人間だ。Dollmakerドールメイカーのお陰で州警察しゅうけいさつの信頼は地の底。警察の威信いしんにかけて必ず捕まえてやる


0:ギャングのアジト・夜


ボス:以上が次の依頼内容です


ボス:ヒット、浮かない顔ですね?


ヒット:そう見えますか? 僕は元気ですよ


ボス:人の上に立つ仕事をやってると分かるものです。よろしければ、私に話してごらんなさい


ヒット:……妻と……言い争いをしました


ボス:ほう、夫婦喧嘩ですか。喧嘩するほど仲が良いと言いますね


ヒット:いえ、ちょっとそういうものとは違います。彼女は、僕が人を殺す事に対して、『罪悪感で耐えきれない』と言ってきました


ボス:そうですか……それを奥様から言われたのは、はじめてですか?


ヒット:はい


ボス:きっと我慢していたんでしょうね。裏社会で、罪の意識に耐えきれず、壊れてしまう人が居るのを、わたしは何人も知っています


ヒット:はい


ボス:……


ヒット:ボス、申し訳ありません。1度家に帰ってもよろしいでしょうか?


ボス:ええ、良いですが……? 奥様と仲直りしに行くんですか?


ヒット:いえ! 家の掃除をしていなかったのを思い出して


ボス:はは、本当に几帳面な性格ですね


ヒット:ええ、小さな事でも、取り返しのつかない事になる。僕は5年間の会社経営から、それを学びました


ボス:そうですか、奥様によろしくお伝えください


0:ヒットは出ていき、扉が閉まる


0:警察署


ダグラス:君がここに転属して来てからどれくらいになる?


ケビン:1ヶ月くらいです


ダグラス:じゃあ、この3ヶ月の間に起きた事件についてもう一度話そう


ダグラス:Dollmakerに10人以上が殺害された事件の中に、カイト暗殺あんさつ事件がある。カイト氏の使用人しようにんや、近隣きんりんの通行人も殺害されたこの事件


ダグラス:カイト氏は病院を経営する医者だ。しかし、病院内での医療ミスの隠蔽いんぺいが発覚している。恨まれてもおかしくない人物だった


ダグラス:そしてこの事件の他にも、資本家しほんかや経営者が殺される事件もある。これはつまり……


ケビン:つまりDollmakerドールメイカーは誰かが得するように人を殺してきた……?


ダグラス:そう。その誰かというのは個人や団体だろう


ケビン:株式会社サクラメントのライバル会社、何社かにも捜査に行きました……ですが、何も怪しいものは出てきませんでした……


ダグラス:そんなもの残してると思うか? だが、Dollmakerドールメイカーと《得をする者》。これは同一ではないが、なんらかの繋がりを持っている。必ず共通する答えが出てくるはずだ


0:ヒットの家・夜


ミーナ:もう限界よ……ヒットが出かけてるうちに、ヒットの事を警察に……!


0:ミーナがドアノブに触れた瞬間、扉がゆっくりと開く


ヒット:ただいま、ミーナ……


ミーナ:ひっ……ヒット!? どうして!? あ……えっと……帰るのが……早かったわね……?


ヒット:いや、忘れ物をしてしまってね? 取りに帰って来たのさ


ミーナ:忘れ物? 何を忘れたの……? すぐに取ってくるわ……!


ヒット:いや、取ってこなくてもいい


ミーナ:そ……そうなの? 玄関に置いてある物?


ヒット:忘れ物は……


ヒット:君の命さ! ミーナ!


0:マフィアのアジト


ボス:ヒットの奥様も、選択肢さえ間違えなければ、幸せになる人生があったというのに。お気の毒です


0:ヒットの家・夜


ヒット:ミーナ……怖くないように一撃で殺すつもりが……。よけちゃダメじゃないか……


0:ミーナは後ろに倒れ、肩から出血し、それを押さえている


ミーナ:ヒ……ヒット……あなたおかしくなったの?……私はあなたの妻よ?


ヒット:君がいけないんだ。僕を不安にさせるから


ミーナ:不安……? もしかして私が不倫してるとでも? わたし不倫なんてしてない……。勘違いよ!


ヒット:不倫か。何か勘違いしているのは君だ、ミーナ。僕は、君が他の男と寝るくらいで殺すような男じゃないよ。より良い遺伝子を残そうとするのは女性の本能だ


ヒット:僕が殺人犯だと知っているのは、ボスと妻の君だけ。君は、僕の仕事を応援してくれてると思ってた


ヒット:ごめんね。君の事は愛していたよ。これからの未来も、一緒に困難な道を歩いて行けると思った


ヒット:けど、そう思っていたのは、僕だけなのかもしれないね?


ミーナ:あなたのしている事は……誰にも言わない……! あなたの仕事も心から応援する! だから……!


ヒット:社長夫人として5年、会社が倒産してからの3年。君には感謝してもし切れないよ。ミーナ。今までありがとう


ヒット:愛しているよ。さよなら


0:ヒットは包丁を振り下ろす


ミーナ:ヒット……やめ……あっ(絶命)


0:ギャングのアジト


ボス:ヒットに疑われれば、ヒットの奥様と同じようになってしまうんですかね、私も……。恐ろしいですね……


0:ヒットの家・夜


0:ヒットは壁に飛んだ血を拭いている


ヒット:よいしょ…よいしょ! っと! 客が来た時のために、綺麗にしとかないと……


0:ヒットはミーナの遺体を抱える


ヒット:5年前、チャペルで君をお姫様抱っこしたっけ? あの時よりもずいぶん痩せたね


ヒット:………………


ヒット:病める時も、健やかなる時も、める時も、貧しい時も、妻を愛し、共に助け合い、命ある限り真心を尽くす事をちかいました。そう……命ある限り……


0:警察署


ケビン:先程Dollmakerドールメイカーの人柄の部分を考えていきましたが、今度は立場を考えてみるのもいいかもしれません


ケビン:使われる凶器はシンプルな物が多いです。今回使われた銃も、刺し傷から特定された包丁も、そこら辺のホームセンターで売ってる形……


ダグラス:凶器が、高級なサーベルや銃、取り扱いが難しい薬品ならグッと容疑者を絞れたんだがな


ケビン:凶器からの特定は難しそうですね


ダグラス:そして指紋ひとつ残さない。だが、犯人が唯一残したこの弾から、身長の推測はできる。


ダグラス:弾丸の入射角にゅうしゃかくから犯人の身長は6フィート3インチ。その身長なら恐らく男性。


ダグラス:凶器として刃物を真正面から使っている事から、運動能力も非常に高いと思われる


ケビン:運動神経の良い6フィート3インチの男性? それだけの情報で探せって言うんですか?


ダグラス:そこで、カイト氏殺人の動機があるのは分かってるだけで13名。これらの繋がりから洗い出す。資料を見てくれ


ケビン:タイラー・ストーンくん、6歳……


ダグラス:この子の母親はカイト氏の病院で手術に失敗し、亡くなっている


ケビン:警部はこんな小さな子どもまで疑うのですか?


ダグラス:もちろん。タイラーの父のケビン氏もこの資料には含まれている。Dollmakerドールメイカーに繋がるヒントがあるかもしれない


ダグラス:完全にシロでなければ徹底的に調べ上げる。そうしなくては今回の犯人は捕まらない


ケビン:肝に命じておきます……


ダグラス:いや、今回の事件は特殊だ。普通の捜査であれば、無駄な情報はとことん省け。情報の処理が追いつかない


ダグラス:警察がここまでしてもボロが出てこない事件は普通ない。如何にDollmakerドールメイカー狡猾こうかつな人間かを物語っている


ケビン:本当に……Dollmakerは居るんでしょうか? そんな人間は存在しない……invisibleインビジブル killerキラーなのでは……


ダグラス:いや、必ずDollmakerドールメイカーは存在する。徹底的に炙り出せ!


ケビン:徹底的に……。殺人事件以外にも行方不明になった人間も、このDollmakerドールメイカーに殺されてるかもしれません! 行方不明者や失踪事件しっそうじけんを当たってみます!


0:ヒットの家・夜


ヒット:さて、ミーナを殺してしまったが、まずいな……


ヒット:急に家からミーナが居なくなれば近隣住民きんりんじゅうみんに怪しまれるし、かと言って何者かに殺されたと言えば、僕が疑われる……どうしたものか………


ヒット:答えは一つか……異臭騒いしゅうさわぎになる前に山に埋めに行くとしよう


0:1ヶ月後


0:警察署


ケビン:警部! 事件に近付く情報が!


ダグラス:何!? 話してみろ!


ケビン:ミーナ・トンプソン。1ヶ月前から行方不明で、旦那のヒット・トンプソンが捜索願そうさくねがいを出しています


ダグラス:お? その女性がどうした


ケビン:問題は旦那の方です、警部。このヒット・トンプソン。マフィアのクライス・ファミリアのアジトによく足を運んでいるんです


ダグラス:なに? クライス・ファミリアだと……? 株式会社サクラメントのライバル企業のひとつ、株式会社ハキームはクライス・ファミリアと関係があると疑惑を掛けられている会社だぞ……!


ケビン:点と点が繋がりました。今すぐヒット・トンプソンの所に向かいましょう


ダグラス:ああ!


0:街中をヒットは歩いていた


ヒット:ちゃららっちゃら〜ら〜ら〜るんたった〜るんたった〜


ケビン:あの! あなた、ミーナ・トンプソンのおっとのヒットさんですか?


ヒット:はい。そうですが。あれ……どこかでお会いしましたっけ?


ケビン:我々は州警察しゅうけいさつです


ヒット:警察官の方だったんですか! いつもお疲れ様です


ケビン:(警官だと分かっても反応なしか……本当に事件に関わっていない?)


ヒット:(どうして警察が? 山に埋めたミーナが見つかったか? だがそんな報道はない……いや、メディアに情報規制をされている可能性も)


ケビン:実は、ヒットさんの奥様が行方不明になってると伺いまして、奥様のミーナさんが失踪するまで、不審な行動とかはなかったですか?


ダグラス:(ヒット・トンプソン……こんな街中では殺せないだろう……。そしてこの後、我々が殺されれば、ヒット・トンプソンを被疑者ひぎしゃとして拘束するように仲間に伝えてある……)


ヒット:はい。捜索願そうさくねがいを出したのも僕です。妻が居なくなる前日、仕事の事で喧嘩をしてしまいまして……


ヒット:すぐ帰ってくると思ったんですが、最近殺人事件も起きているので、心配で


ダグラス:(心配……か……白々しい……本当に心配なら、そんな上機嫌には歌わないで、必死になって探すはずだ……! お前が殺したんだろう?)


ダグラス:ヒットさん、仕事は今何をされてるんですか?


ヒット:今は日雇ひやといのアルバイトでなんとか食いつないでいます


ダグラス:そうですか……アルバイトはどういったものを?


ヒット:引越し業者だったり、イベントの手伝いだったりです


ダグラス:ほお。ありがとうございます。それでは我々は失礼します


0:ヒットが見えなくなる


ダグラス:日雇い労働者はそんなブランドの服は着ないんだよ……殺人鬼………


ケビン:動じるそぶりがないのが逆に怪しいというか……印象値はクロです


ダグラス:税務署ぜいむしょに問い合わせろ。おそらく奴のここ3ヶ月の所得はゼロだ。それを叩きつけて脱税だつぜい容疑でもなんでもいいから拘束する! その間に殺人が起きなければ奴はクロだ!


ケビン:はい!


0:拘留所・取り調べ室


ヒット:刑事さん、どうして僕が拘留所こうりゅうじょに? 心当たりがありません


ダグラス:ああ、ヒットさん、あなた、脱税していますよね。日雇い労働者とおっしゃってましたが、税務署に裏を取った所、あなたが申告している所得しょとくは0でした


ダグラス:本来なら家に税務局ぜいむきょくの職員が向かうのですが、あなたの脱税は悪質だ。よって警察で対処する事になりました


0:拘留所・傍受室


0:ケビンは外の部屋からダグラスとヒットの会話を傍受している。ケビンの声は向こうには聞こえない


ケビン:多少無理はありますが、ここはなんとか押し通しましょう……!


0:拘留所・取り調べ室


ヒット:あ………やば……それは


0:拘留所・傍受室


ケビン:これで拘束中にDollmakerの殺人事件が起こらなければ、ヒットの容疑は深まる


ケビン:決定的な証拠はなくとも、こいつの周辺を警察が全勢力で捜査すれば必ずボロが出るはず


0:ケビンの電話が鳴る


ケビン:もしもし? 何かありましたか? え? それは本当ですか!?


0:ケビンが取り調べ室に勢いよく入ってくる


ケビン:警部!


ダグラス:どうした?


ケビン:今すぐ来てください!


ダグラス:ん?……ああ


0:ケビンとダグラスは取り調べ室を後にする


ヒット:ふふ


0:ヒットのいない部屋まで来る


ケビン:殺人事件が起きたんです……Dollmakerの犯行です……!


ダグラス:なんだと……だが、あいつはずっとここに!本当にDollmakerなのか!?


ケビン:手口がDollmakerのものと類似している部分が多く……間違いないかと……


0:ダグラスがヒットの部屋に戻ってくる


ダグラス:ヒット・トンプソン、出ろ


ヒット:え?


ダグラス:拘留所を出ていいと言ってる


ヒット:そうなんですか? ああ、帰れるに越した事はないんですが、携帯を返してくださいません? 迎えを呼びたくて……


ダグラス:ああ……


0:拘留所の外


ヒット:お騒がせして、すみません……次からはちゃんと税金は収めるようにします


ケビン:そうしてください


0:車が拘留所の駐車場までやってくる


ヒット:では、刑事さん、もうここには来ないようにします


ヒット:あ!ボス! 迎えに来てくれてありがとうございます!


ケビン:あれは……! クライス・ファミリアの組長…ボス・クライス!


ダグラス:やはり奴はクライス・ファミリアとの繋がりが……!


0:車の中


ヒット:疑われてしまいました……失敗はミーナをあのやり方で殺した事ですね


ボス:そうですか………。ヒット、これからどうされるつもりなんですか?


ヒット:この国には居れないですね? 外国に逃亡します


ヒット:それよりボス、ありがとうございます


ボス:車で迎えにきた事ですか?


ヒット:僕が捕まってる間に僕の殺人をしてくれたでしょう?


ボス:ええ、これは貸しです。私を奥さんと同じ目には遭わせないでくださいね?


ヒット:仲介業者を殺したら、信用問題が大事な裏社会で食いっぱぐれてしまうじゃないですか


ボス:私を殺した後に、裏切られたから仕方なくとでも言えばいいんですよ。死人に口なし。それをあなたは身をもって実感してるでしょう?


ヒット:無駄な仮定の話やめませんか?


ボス:ヒットが殺しの話が好きだと思って話振ったんですよ


ヒット:好きじゃないですよ。殺しなんて。僕は、金で雇われて人を殺している者ですから

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