7話 詐欺電話
自分にある欠点に、助けられることもある。
個性を利点ととるか、決定ととるか。その差で、人間というものは決まるのではないか。
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これは、俺が高校1年生の頃の話だ。
「なぁ、この前俺の家に詐欺の電話がかかってきたんだよ」
オータニ先輩はそんなことを話し始める。
「もしかしてオレオレですかーッ?」
「YES! YES! YES! "OH MY GOD"」
「NOだわ!勝手に答えるな!」
俺と朱雀は軽く小突かれる。
「で、どんな電話だったんですか?」
「それがだな...」
***
オータニ先輩───俺の家の固定電話に1本の電話がかかってくる。
その電話には、俺が出た。
「もしもし」
「もしもし。大谷さんのお宅ですか?」
「あ、はい。そうですが...」
「その、大谷さんの後輩なんですが...会社の車で事故をしてしまって」
「あ、はい。そうですか...」
「それでお金が必要で...」
「あ、はい。そうですか...」
「300万程、用意できないでしょうか...」
「あの...父さんに変わって貰えないですかね?」
「は、はい?」
「父さんに変わって貰えないですかね?」
「すいません、ノイズが酷く」
「だーかーらー!父さんに変わって貰えないですかねぇ?」
「ひっ...」
受話器の向こうから、小さな悲鳴が聞こえてくる。そして、その瞬間自分の後ろに霊の存在を感じた。
「霊かよ...」
「す...すいません...もう一度」
「父さんに変わって貰えないですかね?」
ガタンと、何かがぶつかる音がする。
「もしかして...」
俺は何かに勘付く。
「す、すいません!もう一度!」
「こーんーどーはーおーまーえーのーばーんーだー」
俺は棒読みでまるでホラーでありそうな台詞を伝える。
「うわぁぁぁぁぁ!」
その瞬間、電話が切れた。
「詐欺」
しっかり、お父さんは帰ってきた。
***
「だな」
「へぇ、すごいですね」
「流石先輩」
「小並感否めないぞ。高校生諸君」
「で、その幽霊に助けてもらったってことですよね?」
「まぁ、そうだな」
「よかったじゃないですか」
「詐欺なんて基本鼻であしらって終わりだよ。警察署の住所でも教えてやれ」
オータニ先輩はニヤニヤしながら答えた。きっと、この言葉を言いたかっただけだろう。
だから、詐欺と幽霊の話は前座ってわけ。