2話 海よりかき氷
人間の幽霊はいる。なら、他の生物の幽霊もいるのではないか。なのに、なぜ人間の霊ばかりを見るのだろうか。
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高校1年生の夏休み中の話だ。
俺は、朱雀とオータニ先輩と共に海に繰り出していた。
オータニ先輩は、「海は嫌い」と言っていたが、無理矢理連れてきた。
「なぁんで、海なの?プールでよくない?」
「海だからいいんですよ。わからないんですか?」
「あぁ。全く」
俺たち3人は海に到着する。すると、オータニ先輩は露骨に嫌な顔をした。
「どうしたんですか?先輩」
「いやぁ、やっぱり海だなぁって」
「え、何を見てるんですか?」
「お前らにとっての海って青色だろ?」
「まぁ、はい」
「俺にとっての海は黒いんだよ」
「え、なんでですか?」
「一匹4cmくらいのオタマジャクシみたいなやつが大量にいるの。海中そいつで埋まってる。見えない?」
「え、別に?」
「だから、幽霊なんだろうなぁ、って。ほら、あそこに人がいるだろ?きっと、その人達は海に入った後だ。体中に黒いオタマジャクシみたいなのが付いてる」
オータニ先輩は水着姿のお兄さんを指差した。
「はぁ、まぁそうでしょうね」
「ったく、お前らには見えないんだろうな。見えたらきっと海に来たくなくなるぞ」
「オータニ先輩、海入りません?」
「俺は入らない!かき氷でも食ってくる!」
「ちぇ、先輩青春しないんですね」
「俺にとっては{海よりかき氷}だな」
オータニ先輩は一人で海の家に行ってしまった。俺には何も見えないんだが、海には本当にオタマジャクシのような霊はいるのだろうか。
花より団子 ならぬ 海よりかき氷。