1話 扉
扉。それは、何かと何かの間に作り、それを遮断するものだ。
不可侵の領域というものもあるのかもしれない。
==================
これは、俺が中学2年生の頃の話だ。学校終わりに、オータニ先輩と朱雀の男3人でカラオケに来ていた。
「なぁ、なんか隣の部屋から感じるか?」
「隣の部屋ですか?」
特に何の異変も感じない。
「何も感じませんけど」
「朱雀は?」
「別に」
歌の合間に朱雀は答えた。
「そうか、ならそういうことか。自決!」
「ちょっと、俺たちにも教えて下さいよ!オータニ先輩」
「まぁ、端的に言う。この部屋から出るな」
「はぁ?どういうことですか?」
「多分、隣の部屋に霊がいる」
「霊ってどうしてですか?」
「わからん。感覚だけでなんの霊かわかるとか、一流じゃないから。胡散臭いおっさんじゃないから」
「で、なんで部屋からでちゃだめなんですか?」
「取り憑かれるぞ」
俺には何も感じられない。でも、オータニ先輩は一人ピリピリしている。
「大丈夫ですよ。別に」
俺は扉を開ける。すると───
「浅葱!閉めろ!」
「え?」
俺はオータニ先輩に怒鳴られて急いで扉を閉める。
「な...何があったんですか?」
「こっちに入ろうとしてくるんだよ!ほら!扉に!」
俺が扉の方を見ても何もいない。
「またまた、何もいませんよ」
「あぁ...そうだろうな...もう、中に入って来ちまったんだから...」
「え?」
「振り向くなよ?いいな?そのまま、ゆっくりドアを開けて外に出ろ。ゆっくりだ。今日は、全員で帰るぞ」
「えぇ?荷物は?」
「大丈夫だ。お前の荷物は持った。帰るぞ」
オータニ先輩は極度のケチなので、カラオケを中断するはずはない。危機が迫っていたのだ。
俺たちは店の外に出る。
「何が...いたんですか?」
「JKの幽霊だよ。死んだことに気付いていないやつ。いつどこで死んだのかわからないけど、死んだことに気付いていないっぽい。心霊現象が起こるぞ。別に俺はオカルトマニアじゃないんだ。嫌なんだよ、この体が」
オータニ先輩はそう呟く。その日は、そこで解散になった。
オータニは心霊現象とかが苦手です。でも、よく幽霊を見るそう。