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第16話、メイドの正体

「手紙?」


 お兄様が帰って、

 3日くらいした時だった。


「はい、アスナ様にお手紙が

 届いていたのでお持ちしました」


 メリッサが、やはり無表情で

 封筒を差し出す。

 それを、廊下で受け取る。


「ラウルに持たせてくれても、

 良かったのに」


「それをやると、中身を見られた上、

 最悪処分されかねないので」


 あぁ、そうね。

 お兄様に筒抜けになっても困る。


 ラウルに知れた事は基本的に

 お兄様に報告がいく。


「じゃあ、メリッサは、お兄様に内緒で

 持ってきてくれたのね」


「他の用事のついで、ではありますが。

 私はアーク様に従う前に、

 私のしたい事をするので」


 はっきりと、メリッサは言い切る。

 これが、自分で逃げてきた者の

 意思の強さか、見習いたいもんだ。


「それでは、私は失礼します」


「感謝いたしますわ、メリッサ」


「もったいないお言葉です」


 頭を下げて、メリッサは帰っていく。


 私は自分の部屋に戻って、

 手紙を眺める。


 宛名は無いけど、誰からだろう。

 何も考えずに、封筒を開いた。

 

 そこに、ラインハルト家の紋章を見た。

 

 え?


 それは、レオン様からの手紙だった。

 心臓がドクンと鳴った。

 震える手で手紙を開いて、

 その文字に目を通した。


「なんですか? それ?」


 いきなり声がして、手紙を奪われた。


「な! カルア!」


 いつの間に現れたカルアが

 手紙を取り上げて、それを眺める。


「返して! 私の!」


 手を伸ばすと、ボンっとカルアは消えて

 後ろに現れる。

 手紙を眺めながら、


「なるほど、罠ですね」


「はぁ?」


「あなたに会いたいと。書いてあります」


「だからなに?」


「あなたを呼び出して、

 手にかけるつもりでしょうね、と」


「あ、あ、あんたに!

 そんな事、言われたくない!」


 そうだ。そんな事、

 他人に言われる筋合いはない。


「もしかして、会う気ですか?

 殺されるとわかってて?」


「あ、あんたには関係無いでしょ」


 カルアは手紙を眺めながら、

 やれやれと息を吐いて、


「困るんですよね。

 わざわざ殺されに行かれては。

 私は、あなたを守りたいのです

 わかりますね」


──わかりますね。

 

 みんなそう言って

 勝手な都合を押し付ける。


 なにもわかんないよ!

 勝手な事言わないで!


「彼に、会いに行かれては困ります」


 そう言って、

 カルアはライターを取り出した。


「は?」


「キマイラの小屋から、

 拝借してきまして」


 ライターに火をつけて、

 そこに手紙を近づける。


「やめて!」


 私の手が届く前に、カルアは消える。

 そしてまた現れる。

 ライターと手紙を持って。


「あ……」


 こいつは、やろうと思えば、

 私の手の届かない所で、

 手紙を処分する事もできるのに

 わざわざ私の目の前で、燃やす気なんだ

 私の心を折る為に。


 カルアが笑う。

 その余裕しか無い顔で。

 

 思考がガシンと固まった。

 怒りで歯を食いしめた。


 突然メリッサの声がした。

「そんな事は、させません」


 ライターが弾かれる。

「な!」


 ボンとカルアが消える。

 消えた所に、ナイフが突き刺さった。


 すぐ現れたカルアの側に、

 メリッサが白い煙と共に現れる。


「アスナ様に、返してもらいます」

 手紙を取り上げて、

 ほぼ同時にナイフを振り下ろす。


 カルアが羽根を翻し、

 転がるように距離をとる。


 床で体勢を整え、顔をしかめた。

「なるほど、同族ですか」


 え?

 

 私は、そこに立つ、メイド服姿で

 無表情のメリッサを眺める。


「メリッサ。使い魔だったの?」


 そうだ、一瞬前まで居なかったのに、

 白い煙と同時に現れた。


 床にメリッサが投げたナイフが

 刺さっていた。火の消えたライターも

 転がってる。


「そうです。私はアーク様の使い魔で、

 魂だけの存在。あなたと同じです」


 と、カルアを指して、

 メリッサは言う。


「これはアスナ様に返して貰います」

 と奪った手紙を手に、メリッサは言う。


「あなた、この人に使えてる訳でも

 ないでしょう!」


「えぇ。でも、私が運んだ物、誰かに

 壊されるのは気分が悪いです」


「そのせいで、この人が殺されるハメに

 なったとしても?」


「それを決めるのはアスナ様で、

 あなたでは無い。無論、私でもない。

 それだけです」


 メリッサがはっきり、言い切る。

 カルアは顔をしかめて、

 ゆっくりと立ち上がって


「あぁ……後悔しても、知りませんからね

 今日は大人しく引いて差し上げますが

 次はこうは行きませんから……」


 忌々しげに捨て台詞を吐いて、

 カルアは消えた。


 メリッサはふぅと息を吐いて、


「アスナ様、失礼しました。どうぞ」

 と、レオン様の手紙を渡してくれた。


「ありがとう! メリッサ!

 感謝しますわ!」


「お礼には及びません。

 私は私のやりたい事をするだけなので」


 そう言ってナイフをしまい、

 床と壁に刺さったナイフも抜いた。


 ナイフ投げられるの、すごい。


「あの、メリッサ。聞いても良い?」


「なんなりと」


「メリッサって、なんで魂だけなの?」


 精神形状体、魔族。魂だけの存在。


「そうしなければ。私の居た世界から

 逃げれなかったので」


 私のいた世界?

 

「え? メリッサ違う世界から来たの?」


「はい。そこで肉体を捨て、

 魂だけになって、漂っていた所を

 アーク様に召喚されました。

 魂を召喚する禁呪の魔術です」


「魂だけになるのって、どうやって?」


「それは、説明しても意味ないです。

 向こうの世界の方法なんで」


 向こうの世界? 

 この世界とは、違う所? 別の世界。


「あるの? 別の世界」


「あるか、ないかは、行ってみなければ

 わかりません。私の時はあって、

 アスナ様の時には無い、みたいな事も

 ありえます」


 行ってみなければ、わからない。

 もちろん、無くても戻れない。


 ははっ。私の口から笑いが漏れる。

 なにそれ、でたとこ勝負。

 その賭けを、メリッサはしたのだ。

 いや、するしか無かった。

 そこから逃げる為には。


「それにしても、

 彼、姿を現したんですね」

 と、メリッサが

 何もない空間を眺めて言う。


「彼? カルア?」


「はい。アスナ様が屋敷にいた頃から、

 付いてるなーとは思ってました」


 分かるんだ、そういうの。


「アーク様は苦手みたいで、アーク様が

 いる時は見かけなかったんで

 ほっといたんですが。現れましたか」


「え? 今もいる?」


「今はいません。どっか行ったんで、

 この話も聞かれてません」


 良かった。じゃあ、

 お兄様との会話も聞かれて無いのか。


「あと、多分、水も苦手です」


「え、そうなの?」


「シャワーとプールの時は

 見かけなかったんで。

 着替えの時は、いるのに」

 

 苦手なんだ、水。

 今度、水理玉、ぶつけよう。

 ていうか……


「あいつ、私が着替えてるの、

 近くで見てるの?」


「えぇ、大抵いつも。トイレの時も」


 あ、あいつ絶対、許さない……


「あ、前にアスナ様が、下着だけで寝る

 って聞かなかった時もすぐ近くに……」


「も、もう良いから! 言わないで!」


 カルア、アイツ絶対今度

 びしょ濡れにするから!

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

『次回予告』


「行くな」


「な、なんで……」


「危ねぇから、そっち行くな」


「あ……あなたに、関係ないでしょ……」



 楽しかった、って方は、

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 今日もお疲れ様! モフモフー

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