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第7話 砂とトカゲと監獄と

「海だー!青空最高!」




 どこまでも続く白い砂浜青い空、透き通るようなマリンブルーの海、聞こえる潮騒の音、照り付ける太陽に時折吹き抜ける潮のにおいを含んだ心地よい風。




 どこのリゾート地だと思うこの景色、ジャングルと違って最高だね!全裸でも許されるような気がする。




「一人ヌーディストビーチ!いや、まだわからない誰か来たらその人も全裸かもしれない」





 まぁなぜこんな事になってるかというと単純で、気が付いたらこの砂浜に流れ着いてたんだよね。


 きっと滝から落ちて川を流れて海に出たんだと思う。あれから何日経ってるかも全然わからないし、もしかしたら海洋でプランクトンの様に食べられ続けてたかもしれないしね。




 とりあえずジャングルから抜け出せたことを祝いたいと思う、あそこは地獄だった。そして今は流木を拾い集めて火をおこしと拠点を作る準備をしている。




 拠点は前と同じように床を上げて作ることにした。ちょうど大き目の石と根元で別れた斜めに生えてる木があったので土台は簡単であとはそこに木を並べて蔦である程度縛れば何とか出来た。




「全裸に虫は天敵だからね、衣類も作りたいけどちょっとまずは食べ物と水と火かな」




 岩場も近くにありトコブシの様な貝が結構取れた、そしてでかいシャコガイの殻も見つけたのでお鍋にできそうだ。




「地球と違ってゴミが流れついてないのがすごいなー、まぁ流木やよくわからない木製の船の破片みたいなのは落ちてるけど」




 木製の木の破片が有るって事は文明があるって思っていいんだよね、このまま野生生活を永遠と続けるのはつらすぎる不老不死だけに。




 まぁそれはさておきこれから頑張って火を起こそうかな、落ちている木を石等でこすったり叩いたりして枝を取り、なるべく真っすぐにして乾いた流木の板に切り込みを貝殻で入れてあとはひたすら擦るのみ!




「つかれたー、何とか日が暮れる前に火が起きてくれたよ」




 石で竈を作り風をふさいで大きな流木を燃やしながらそこに貝を置いて直接焼いて行く、しばらくすると貝から汁が出てジュワジュワと煮えてきたので棒を2本使ってお箸みたいにして貝をテーブル代わりの石の上へ置いて中身を穿ほじくりだして口に運んだ。




 口の中に入れると磯の香りが広がり久々に感じる美味しい塩の味、噛むとポリポリという触感が心地よく口の中に貝独特の風味とうまみが広がって行く。




「うまーい、触感はアワビに似てる。海最高!」




 久しぶりの海の幸に日本人としては叫ばずにはいられなかった。次々と貝を焼いては食べていく。




「あー、皮膚があって手足があって食べ物が食べられるって最高だね。明日は魚を何とか捕まえたいなぁ、とりあえず寝ようかな久しぶりに歩いてなんか疲れた」




 久しぶりの五体満足にテンションが上がり太陽の下うろうろしすぎたかもしれない。拠点は屋根は無いけど雨も降らなさそうだし気持ちよく眠れそうだ。




 空にはいつも通り穴の空いた月が上り屋根のない僕を見下ろしていた。





 次の日の朝は太陽のまぶしさで目覚めたので早速食料を探すことにした。




「魚だ!!」




 潮だまりに20センチくらいの魚が泳いでいるのを発見した。


 その見た目はからどの横に黄色い線があるがアジの様な見た目だった。




 思ったより素手では捕まえにくかったがなんとか魚をゲット!ついでに手の平くらいのカニも2匹見つけたので超豪華なブランチが出来そうだ!




 拠点にもどったので早速料理を始めよう!


 魚は棒を口から刺して直火で焼いてカニと貝は大きなシャコガイの殻に入れて海水で煮ていこう。




 出来上がったカニの実は少ないが味は完全に食べたことあるカニの味だった。




 僕は夢中で身をほじって黙々と食べてしまった。貝も昨日と同じでとてもおいしかった。


 そしてメインの魚はフワフワの身で少し焦げた皮のも美味しく鱗を取るのを忘れていたが良く焼いたので気にならない触感だった。




「おいしかった、海の物は全部おいしいな、なんだよ蛇ってやっぱり塩味最高だね」




 蛇をディスりながら拠点に寝転がる。ちょうど木の陰になり風も涼しく、色々な環境の変化で疲れているのかウトウトとしてしまった。




 それからしばらくしてガシャガシャと食器を運ぶような音が聞こえ目を開けるとそこには鎧を着て槍を僕の首元へ突き付けた人型のトカゲが3匹(人?)立っていた。




 完全に人型の鎧を着たトカゲに混乱しながら声をだす。




 「えっ?えっとキャンプしちゃダメな場所だったとか?それとも全裸が違法だったのかな?言葉通じるかな?」




 冷や汗をかきながら話しかけると、トカゲが口を開いた。




「どこから来た?ここで何をしている?」




 手を万歳の形にしてキョドリながら質問に答える。




「え、えっとー、どこからって言われると日本かな?何をしてるといわれると気づいたらここに流れ着いていたんです」




 すると先頭に立っていたトカゲが目線をこちらから離さず後ろのトカゲに話しかける。




「二ホンなんて聞いたことないな。ササンド、セセンド聞いたことあるか?」




「俺も聞いたことがない、怪しいな」




「ない」




 先頭のトカゲが横にずれながら二人に指示を出す。




「なんにせよ人間だ、捕まえろ連行する」




 抵抗すると刺されそうだったので素直に両手を上げたがまぁまぁ手荒な感じで後ろ手に紐をかけられて連れて行かれることになった。




「あの、どこへ行くんでしょうか?」




「うるさい黙って歩け!」




 どこへ行くのかはわからないけど文明の匂いがする!やっと狩猟生活から開放されるのかと思うと少しにやけるのが止められない。




 にやける僕を前に二人後ろに一人と挟まれて森の中を連行されていく。


 トカゲがちゃんと服と鎧着てるのに人間が裸で連れて行かれるとかすごい恥ずかしいんだけど、先に腰蓑作れば良かったな。




 それから1時間ほど森の中を歩いて開けた場所に出たかと思うと、そこには石を積んで作られた2メートル程の塀があり、真正面には丸太で出来た門があった。




 先頭のトカゲが手を上げると門が開き中へ連れていかれる。




 塀の中は椰子の葉みたいな植物で屋根と壁が作られた南国のビーチの様な建物が並んでいた。




 その中でも唯一木を多く使っている丈夫そうな大きな建物の中に連れていかれ、僕は椅子と机だけの簡素な部屋の中でトカゲ達に囲まれていた。




「お前は何処からきたんだ?」「帝国のスパイか?」




 そしてさっきから何度も同じ質問をされている。




「だからー、違うって言ってるでしょう!そもそも帝国自体知らないし異世界からって来たって言ってるでしょ!」




 トカゲ達はそれぞれ顔を見合って頭を指差して首を振っている。




「もう!頭おかしくないです。あとできたら何か着る物くれないかな?」




 喋ってなかったトカゲが書いていた調書をパタンと閉じて口を開いた。




「もういい連れて行け、時間の無駄だ狂人に付き合うほど暇じゃない」




「誰が狂人だ!失礼だな!」




 二匹のトカゲに両腕を掴まれて外へ連れて行かれる。




 後ろ手に紐を掛けられたまま扉をくぐって外へ出ると、南国風な景色の中そこにはいろいろな種類の獣人が歩き回っていた。




 ここは連行されているトカゲ人を筆頭に犬顔の獣人、猫顔の獣人に獅子顔の獣人など多種多様な獣人の村だった。




「すごいもふもふだ!」




 もふもふに感動していると肩を強く押され連行されていく。


「黙って歩け!」




 トカゲの獣人はどれも軍隊然としていてすごく硬いみたいだ、態度も体も。




 縄をつけられて全裸で連行されているのをいろんな獣人に見られながら変な心の別の扉が開きそうになりながらも、しばらく建物の間を通り抜け石造りの大きな建物に連れていかれた。




「中に入れ!」




 後ろから押されながら入り口をくぐるといきなり気で作られた牢屋が左右に並んでいた。




「臭い」




 鼻をつまみたかったが後ろ手に縛られているのでできなかった。




「さっさと中に入れ!」




 一番手前の右側の牢屋の中に入るように言われ中に入ると、後ろ手の紐を外してくれガシャリと鍵が閉まる音が聞こえた。




そのままリザードマンが入り口近くの椅子に座り牢屋を見張っている。




 牢屋の中は天井近くに光取り用だと思うが縦十センチ横に三十センチ位の細長い隙間が所々開いていてあとはろうそくしか光源がなく薄暗い、部屋の広さは2メートル四方の部屋で隅に壺が2個置いてあり右の壁側には薄い毛布がある一人用のベッドが置いてるだけの部屋だった。




「嘘みたいだ!屋根と壁とベッドにトイレそれに水まである!最高じゃないか!」




「一体どんな所で暮らしてたんだお前は」




 看守のトカゲも呆れ気味だった。

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