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青い鳥のアナタとなら、3000年のデートが欠かせない。

初心者なので、文章が読みずらいと思いますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。


 ──これはエピローグであって、プロローグの始まり。


『──俺は祈葉いのりはさんのことが好きだ』


 時計台の前に立つ私が何をしようとしているのか彼は知らない。


 彼には知らなくて良い話だ。何よりも私が知って欲しくない。


 彼が三千年前から私を運んでくれた幸せの青い鳥だったという真実を消すことを。


「だって、しょうがないじゃない」


 私は隣に立つ彼に聞こえない程の声でボソリと小さく、そう呟いた。


(君が私よりも先に、好きだなんて言うのはズルいよ……)


 予想外の出来事に、私はあの瞬間、呆気に取られるのと同時に、目から涙が溢れ出てしまっていたのだ。


 長い間、涙なんて流していなかったから、流石にもう出ないだろうと思い込んでいた先程までの自分を恨みたいくらいだ。


 ──本当に、この人は一体なんで私なんかを好きになってしまったのか。


 せめて、全てがなかったことになる前に、このことだけは彼に訊いておきたい。


 私は隣に立つ彼の方を向いて、目を合わせた。


「君は私の何処に惚れちゃったの?」


「…………」


 私の問い掛けに、彼は顔を下に俯けて、しばらく黙り込んでいたが、上目遣いで時計台の方を見る仕草をすると「よし」と言って、顔をあげて再び、私と目を合わせた。


「今から終わって、また始まる三千年のデートを『あなた』とするために──」


 私の問い掛けの答えになっていないその言葉は、過去を噛み締めているようにも聞こえて、未来を悟っているようにも聴こえた。


 そして、当然ながら、その言葉に私は、しばらく呆気に取られていた。


「き、君は何処まで知って──」


 少しだけ冷静さを取り戻した私は彼に、また訊ねようとしたが、その言葉は途中で途切れてしまった。


(これで、君とはお別れか……)


 これから私は、また独りだ。


 独りで三千年の月日を巻き戻っていく──そのはずだった。


 でも──、


「右手が温かい……」


 何なのだろう?この温もりは。なんだか初めての感覚ではないような気がする。


 そんなことを考えていると、隣から不意に声が聞こえてきた。



「──左手が温かいな」


 そう言って、私の方を見つめて優しく微笑んできたのは彼だった。


「言っただろ。俺は祈葉さんが好きだ。だから、三千年間のデートをしようって」


 そう、彼はあの瞬間からずっと私の手を握ってくれていたのだ。


「私は別に告白も、デートもOKした訳じゃない」


 私は彼に、私となんか手を繋いだ馬鹿な彼に、そう言った。


 ──もう、元には戻れない。


 私のしていることを悟っていたのなら、こんなことぐらい彼にもわかっていたはずだ。


 きっと知っていて、彼は手を放さなかったに違いない。


「ねえ、どうして──」


「…………」


「どうしてなの?幸分創希ゆきわけそうき君……」


「…………」


「私を好きになったのは、どうしてなの?私の幸せの青い鳥さんっ!」


 私は、いつの間にか、彼に向かって必死に問い掛けていた。


「ねえ、どうして?」


「そうだな──」


 沈黙していた彼が、ようやく口を開いた。


「もし巻き戻った先で、『あなた』と俺が今までの記憶を覚えていたら教えてあげるよ」


「…………」


「だから、この手の温もりを絶対に忘れないでくれ。俺も絶対に忘れないから」


 私は彼の言葉に、いつの間にか頷いていた。


 ──もしも、今の彼とサヨナラした先に、幸せの光が存在するのなら──、


 エンドロールした世界の彼と三千年のデートをしたい。

読んでいただきありがとうございます。

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