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波、晴るる。  作者: 潮留 凪
19/48

19 君の笑顔と夏の影 -はる



うみに、自分の全てを話した。

 

今まで誰にも話したことなどなかった。

そもそも、受け止めてくれる人なんて。

 

うみは沢山、泣いてくれた。

こんな自分のために、悲しんでくれた。

 

もう忘れかけていた気持ちが、心の中にそっと広がる。

確かに感じたこれは、幸せ。

 

 

喜びも、嬉しさも、そして幸せも。

初めて父に殴られたあの日から、諦めていた。

自分にはもう、訪れないのだと。

 

全部、うみが運んできてくれたから。

 


 ✱ ✱ ✱



────あの日から、もっとうみが愛おしくなった。

 

うみが笑うと、胸がきゅっと痛くて、けど幸せで。

変わらない屋上での日々が、ずっと続いて欲しくて。

 

今まで耐え続けてきた自分へ、神様からのご褒美なんだと。

柄でもなく、自分は神様に感謝した。

  

 


7月も後半に差し掛かり、日々暑さを増していた。

 

 「もうすぐ夏休みだね」

 

うみは梅おにぎりを頬張りながらそう言った。

 

 「はるは何か予定あるの?」

 

何となく、うみはワクワクしているようだった。


 「特にないかな」

 

自分は愛想もなくそう言って、無糖の紅茶を一口飲んだ。

 

 「じゃあさ、どっか行こうよ!」

 



夏休みは、正直あまり好きではなかった。

今まで、誰かと遊びに出掛けた思い出もない。

ただ部屋に鍵をかけ、淡々と宿題をこなし、後は消費するだけの暑い日々だと。

 


 「…うみと、自分で?」


 

何も期待はしていなかった。

夏休みに良い思い出なんてなかったから。



 「うん、二人で!」

 


期待していなかったはず、なのに。

 

うみがあんまり嬉しそうに笑うから。

自分まで、少し嬉しくなる。

 

 「いいよ」

 「行きたい場所、どこにでも行こう」

 

愛おしい君となら、どこにだって行けそうな気がしたから。

 

 「やった!」

 

さっきよりも嬉しそうに、うみは笑う。

太陽よりも眩しい君の笑顔に、少しだけ。

 

少しだけ、夏休みが楽しみになった。

 

 

 

 







この時は、思いもしなかった。

これが、君とこの屋上で過ごせる、最後の日常になるなんて。

今話も読んでいただき有難うございます。


いよいよ、新章突入となります。

これから、このお話のテーマである二人の"夏"が動き出します。


少し重い、踏み込んだ内容になっていきますので、書いている僕自身も少し苦しかったです。笑

それでも、二人にとって、永遠の"あの夏"。


二人の運命を、どうか見届けて頂ければと思います。



次話もよろしくお願い致します。

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