第十一話 政界の黒幕 その四
銀座の会員制高級クラブで(睡眠状態の尋問により)自白させた島田議員の愛人を詳細に調査した結果、港区にある高級マンションの一室に彼女が囲われていることが判明した。年齢と胸の大きさは私と同じぐらい。(日本人の平均より)少し小さい胸好きな島田議員の嗜好を事前に調べた結果なのだろう。私は彼女の部屋の監視を開始した。
そんなある日の午後、彼女が一人で外出する。週三回の愛人との蜜月スケジュールでは、島田議員は今日彼女のマンションを訪れない日だ。いつも自宅で島田議員を迎え入れる彼女はとても蠱惑的な服装(下着)をしているが、今日の彼女は凄く野暮ったい恰好で外出している。どうやら彼女はこうした偽装に手慣れているようだ。
そんな訳で自宅から彼女を尾行すると、渋谷駅前のハチ公像前で待ち合わせていたイケメンな若い男と合流し、そのまま道玄坂のラブホテルへ二人で入って行った。一見チャラそうな男に見えるが、歩幅や歩き方などで彼が訓練された外国の軍人だと分かる。
「昼間からラブホテル……それにしても男に二股かけるとは彼女もなかなかよね」
本来あまりこうした用途(?)には使いたくはないが、仕方がない。仮契約の使い魔を利用することにしよう。チュッチュッ……そう、渋谷ではどこにでもいるドブネズミだ。私の使い魔になったドブネズミはホテルの下水管を使ってラブホテル内へと侵入。無事お目当ての部屋の天井へとたどり着く。ちなみに使い魔の視覚・聴覚は私にも直接連携されているのだ。
部屋の天井にある通気口から私の使い魔がそっと覗き込むと、ちょうど部屋のダブルベッドの上で裸の男女がまぐわっているところだった。もちろん先ほどのイケメン男と島田議員の愛人の彼女だ。男の後ろからの攻めに対し、彼女が獣のような咆哮を上げている。喫茶店で待機している私にはちょっと刺激が強い内容だったので、いったん彼らの一応の目途がつくまで使い魔からの視覚共有を切って待つことにした。でもあえぎ声だけは聞こえるんだけどね……。
そして小一時間経過。本当になんて奴らかしら。私をこんなに待たせるなんてありえないわ! 独りで憤慨してしまったが、ちょっとだけ勉強にはなった。あそこをああやって使うなんてね……全然知らなかった。途中、ちょっとだけ視覚を戻したのは内緒だ。
☆☆☆
「それで島田議員からは新たな情報はないのか?」
「ハァハァ……こんなにあたしを虐めておいてもう仕事の話? 今のところこれといって新しい情報は無いわよ。でも今週末の会議で重要な議題が話し合われると彼は言っていたわ……」
汗だくで喘ぐ全裸の彼女が同じく全裸でペットボトルの水を飲むイケメン男へと言葉を返す。どうやら島田議員の愛人はこの男に身も心も堕とされたらしい。媚薬などのクスリも使用されたのかもしれない。これは敵性国家Kが色仕掛けで機密情報を盗む時のいつものやり口だ。今回は男性がターゲットなので、手頃で扱いやすい日本人女性をスパイに仕立て上げ、ハニートラップとしてターゲットに接触させた。もしターゲットが女性であれば、おそらくこの男が直接堕とす役割なのだろう。はぁ……お姉さん、情けなくてため息が出ちゃうわ。
「そうか。では来週までに報告をもらうとしよう」
「ねぇ……もう一度慰めてよ。あの人(島田議員)のアレでは全然物足りないの♡」
「ふふっ、お前も相当な淫乱だよな」
「こんな淫乱女にしたのは誰のせいよ! ちゃんと責任取ってよね……♡」
「分かった、分かった。お前が満足するまでヤッてやるよ」
ディープキスを開始した二人は休憩時間を延長して思う存分楽しむようだった。
その後、ホテルの外で島田議員の愛人と別れたイケメン男を尾行して隠れ家を突き止める。私が認識阻害魔法を使っているため、男は尾行に気付いていないようだ。
隠れ家は上野のお一人様焼肉店か……。今話題のお店を偽装に使うとは敵もなかなかね。だがいよいよ今回の任務もend of a play(終劇)に近づいてきたわ。
これでストック分が切れましたので、次回からはカクヨムとの同時更新となります。
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