6/33
1
夜の闇に包まれた深夜の静寂な山の奥深く。廃墟の洋館の前に1人の少女が現れる。少女は体を震わせながら洋館の前で立ち竦む。
帰りたい・・・。怖い・・・。
少女が恐怖の余り瞳に涙を浮かべていると―
ギィィ・・・
洋館の扉が、軋む様な音を出しながらゆっくりと開く。扉の奥から現れたのは、左目を包帯で隠した1人の少年だった。少年は少女の方に視線を向けると、彼女の方へ一歩踏み出した。
「ひっ・・・」
少女は小さな悲鳴を上げながら後退る。すると少年は目にも留まらぬ速さで一気に少女の目の前まで接近した。
「!?」
少女は驚きと恐怖で腰が抜けてしまい、その場に座り込んでしまう。そんな彼女を見下ろす少年の冷たく紅い瞳と漆黒の髪が、月明かりに照らされキラリと輝いた。少年は少女の服の衿を掴むとぐいっと引っ張り彼女の首に鋭い牙を突き立てた。彼は少女の生き血を啜り、瞬く間に飲み干してしまった。
「・・・退屈だ。」
少女の遺体をぽいっと地面に棄てながら、少年は小さく一言呟く。そして少女の遺体に目もくれず、すたすたと洋館の方へ戻って行ったのだった。