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「申し訳ありませんでしたぁっ!!」
森を出た後結稀と共に村人達の前に現れたゴブリン達は、バッと地面に頭をつけ土下座をしながら村人達に謝った。ゴブリン達の謝罪に、リタ達も村の人達も驚きで呆然としてしまっていた。
「ゴブリン達も反省してるし、許してあげて貰えないかな?万が一また村の人達を襲う様な事があったら、僕には直ぐに分かるからきついお仕置きを喰らわせるよ。」
“きついお仕置き”という単語に顔を青ざめさせながら、ゴブリン達は「いや、絶対もう二度と襲ったりしませんから!」「勘弁して下さい、姉さん!!」と情けない声を上げる。
「もう村を襲わないのなら、これまでの事は水に流そう。」
「のう、皆。」と村長が語り掛けると、村の人達はこくりと頷いた。
「有難う!お礼に俺達に出来る事なら何でもするぜ!!」
ゴブリン達が嬉しそうにそう申し出ると、村長は「なら・・・」と口を開く。
「農作業や織物の染料作りなんかの力仕事を手伝って貰えると有難いのぉ。人手が足りなくて、困っておったんじゃ。」
「勿論!力仕事は得意だから任せてくれ!」
互いに握手をし合い和解した村人達とゴブリン達。彼等が上手く強力し合えば、村の運営も少しは楽になるだろう。騒動が一件落着し、結稀はほっと安堵した。
「じゃあ、僕達はそろそろお暇しようと思います。本当にお世話になりました。」
村の皆と暫しお喋りした後、結稀達は旅支度を整え村を去る事にした。
「こちらこそ世話になった。また何時でも遊びにおいで。」
「結稀、クロノス、助けてくれて本当に有難う。」
「お姉ちゃん、お兄ちゃん、また会おうね。」
「村の人達の安全は俺達が護りますので安心して下さい。結稀の姉さんとクロノスの旦那、お元気で。」
お別れの時、村の人達やゴブリン達が温かい言葉で2人を見送ってくれた。
「有難う。皆もお元気で!!」
皆の心の籠ったお見送りへの感謝の気持ちを込め、2人は一言挨拶を述べ大きく手を振った。それに答える様に、村人達やゴブリン達も笑顔で手を振り返してくれたのだった。
「それで結稀、これから何処へ向かうんだい?」
トルビ村を後にし歩き始めた結稀に、クロノスが問い掛ける。結稀は村長から貰った地図を出し、ある地点に指を差す。
「王都のリーデンを目指そうと思う。このリヴァントについてもっと詳しく知る為に、リーデンの街を見てみたい。だから、東に進む。良いかな、クロノス?」
ちらりと遠慮気味に視線を向ける結稀に、クロノスはくすりと微笑みを浮かべた。
「構わないよ。私は君が約束を果たしてくれるその日まで、君の隣に居て力になるから。」
クロノスの優しい眼差しと力強い言葉に、結稀は背中を押された様な気がしてとても心強く感じたのだった。
「有難う。改めて・・・これから宜しくね、クロノス。」
結稀は立ち止まりクロノスの方へ向くと、片手をすっと差し出した。
「こちらこそ宜しく。」
クロノスは静かに答えると、結稀の手をしっかりと握った。時の神と契約した1人の少女が異世界を統一するまでの遥か長い冒険譚―その第一歩を彼女達は踏み出したのだった。