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第6話 愛情たっぷり味は二の次

  はぁ〜。

  さいこうだぜ!



  おれは今、未来の彼女であるユウナちゃんと二人で田んぼ道を歩いている。

  ようやく森を抜け、村のある近くまで来たらしい。



  ここら辺は田畑が多く、ユウナちゃんたちは自給自足の生活をしているらしい。

  彼女が森に入ったのも山菜を採るためだったようだ。



  そんなおれは剣を背中に担ぎ、片手で猪の肉を持つ。

  生肉を包むのに良さそうな巨大な葉っぱを見つけたので、それに包んで俺が持ってきたのだ。



  そう、おれは今片手が空いているのだ!!



  まあ、本当は手を繋ぎたいが今は我慢だ。

  焦ってチャラ男なんていう印象を持たれたくはない。



  おれはジェントルマン!

  英国紳士のような男なのだ!!



  大人ぽく、クールに振る舞うおれ。

  そんなおれをチラチラとバレないように見てくるユウナちゃん。



  くぅ〜〜!!

  本当に可愛いぜ!!



  おれは心の中で未来の彼女を正面から抱きしめる。

  今は妄想の中だけで我慢だ。


  耐えるんだマサト。

  きっと、来週の今頃はリアルでユウナちゃんの温もりを感じていられるはずだから……。



  おれは隣にいる美少女を前に、必死にクールを装うのであった。



  そして、ちらほらと村の人らしき者たちが見えるようになる。


  彼らの近くを歩くと、その話し声が聞こえてくるのであった。



  「ユウナの隣にいる男は誰だ?」



  「なんかすっげぇ剣を背負ってるぞ、あいつも剣王杯に出る選手なんじゃねぇか?」



  田舎っぽい話し方をする村人たち。

  ユウナちゃんの横を歩くイケメンのおれが気になって仕方ないのだろう。


  ふっ、いい気持ちだぜ。

  これが彼女持ちだけで味わえる感覚なのか。


  通り過ぎるモブたちがおれを羨ましそうなまなざしで見つめてくる。


  お前たちモブキャラのようなやつらは一生かかってもこの気持ちがわからないのだろう。

  哀れなやつらだぜ。


  おれはリア充として遥かな高みから彼らを見下ろして立ち去るのであった。




  ---




  「到着しました。ここが私の家です」



  ユウナちゃんが笑顔で微笑みかけながらそう告げる。


  ふむ、なるほどなるほど。


  おれはユウナちゃんが紹介してくれた家を見て、正直思うことがある。



  貧し過ぎないか……?



  なんだこれは。

  まるで、平安時代の農民の家でも再現したかのようなボロ屋じゃないか!



  こんな所にユウナちゃんは暮らしているというのだろうか?

  確かに、言われてみれば彼女の服装は貧しそうな格好だ。


  とてもじゃないが、良いとこのお嬢さんには見えない。

  だけど、それでも、可愛いことに変わりはない!



  女は顔が全てなんだ!!

  おれはユウナちゃんに全てを捧げると決めたんだ!!!!



  安心してくれよな、ユウナ。

  絶対におれが、いつか豪邸に済ませてやるからな。


  そして、室内プールで水着姿のユウナとイチャイチャムフフな展開で一日中過ごすのだ。

  まったく、夢が広がっちまうぜ。



  おれは隣で微笑みかけてくれる美少女に対し、並々ならぬ想いを寄せるのだった。



  そんなおれの様子に戸惑いながらも、彼女は家の中へと案内してくれるのだった。



  「それでは、こちらでくつろいで待っててくださいね。今からとびっきりの手料理を作ってあげますからね!」




  ズッキューーーーン!!!!




  100点満点の笑顔。

  その笑顔を見た瞬間、おれの中で再び恋に落ちた音が響き渡る。



  あぁ……。

  異世界さいこうだぜぇ。




  ---




  そして、そんなこんなでユウナちゃんが料理をする後ろ姿を眺めて待っていると、ようやく料理が完成したようだ。



  木製の茶碗によそられたイノシシ肉のスープとパンみたいな塊。

  それがおれの目の前に出されたのであった。

 


  「お待たせしました! わたしの自信作ですよ! おいしく召し上がってくださいね」



  かわいい仕草で少し照れながら料理を手渡してくれるユウナちゃん。

  おれはこの時点で結婚までも視野にいれていた。



  「ありがとう。それじゃ、いただくよ」



  おれはユウナちゃんから手料理を受け取ると、クールに振る舞いつつパンに手を伸ばし、スープに浸す。

  そして、それを口へと持っていくのであった。



  「その……お味はどうでしょうか? お口にはあいますか……?」



  不安そうな表情でおれをジーっと見つめてくるユウナちゃん。

  一生懸命作ってくれたこの手料理の感想を聞きたいのだろう。




  ふむ、それでは味に関するおれの意見を言わせてもらおうか。







  ユウナちゃんが一生懸命作ってくれたこの手料理の味は……。












  クッソマズい!!!!








  念のため、もう一度言おう。







  クッソマズい!!!!





  マズい!! マズい!! マズい!!


  マジィィィィ!!!!!!!!





  これは人間の食い物なのか?

  家畜のエサなんじゃないかと思えてくるほどのマズさだ。



  まず、イノシシの肉の臭みがまったく取れてない。

  さらに、スープからは旨み成分を1ミリも感じない上に、雑草みたいな野菜が入ってる。


  パンに関していえばパッサパッサのボロボロで噛んでも噛んでも甘みが出ない。

  苦味の極地がここにはある。



  おれは、ユウナちゃんの手料理を食べながら涙を流していた。



  「うっ、うまいよ……。こんなの食べたこともない……。うっぷ」



  おれは何とか意識を保ちながら言葉を紡ぐ。

  正直なことを言えば、ユウナちゃんが傷ついてしまうだろう。


  これは、そんな男の優しさなんだ。



  すると、彼女はおれの言葉を聞いて満面の笑みを浮かべる。



  「本当ですか!? それはよかった〜」



  まるで天使のような微笑み。



  かわいいは正義だ!



  よし、おれがこの笑顔を守ってやろう。


  人には一つや二つ、欠点があるものだ。

  もしもユウナちゃんが料理下手というのなら、おれがそこをカバーしてあげればいい。


  なぁに、これからおれが料理を覚えればいい話だ。

  そうすれば、天使のユウナちゃんと幸せな日々を送れる。


  そんなことをおれは考えていた。




  だが、こんな二人の幸せにも邪魔をする者というのが現れる。


  突如として、ユウナちゃんの家に見知らぬ青年が姿を現したのだった。



  「たっく、くっせぇ臭いがぷんぷんしてくると思ったらユウナ、お前また料理なんて作っていやがったのか!」



  「死人が出るからやめろって何度も言ってるのによ〜」



  黒髪で後ろをポニーテールのように結んだ男がユウナちゃんに語りかける。



  こいつ、人の家に勝手に上がり込んできて何様だ!?



  おれは警戒心を露わにする。


  見たところ、先程まで見てきた貧相な村人たちと服装は変わらない。

  ただ、決定的に違うところとして背中に剣を持っているという部分があった。



  「そんなっ……。そんなこと言わなくっても」



  男に暴言を吐かれたユウナちゃんは悲しそうな表情でうつむいてしまう。




  こいつ、おれの未来の彼女を悲しませやがって……。



  おれの中で闘志が燃える。



  「おい! お前、何様のつもりだ!?」



  そして、おれは見ず知らずの男にメンチを切るのであった。

作者「みなさま、更新が遅くてもうしわけございません。あと少し、あと少しで第1章が終わるので気長にお待ちいただけると嬉しいです」

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