第5話 未来の彼女との出会い
やべぇ……。
もうすぐ死ぬんじゃないかってくらい心臓がドキドキしてる。
まさか、助けた女の子がこんなに可愛かったなんて。
この美少女は現在、おれの背中に腕をまわして抱きつき、おれの胸に顔をうずめている。
その瞳からは涙がこぼれており、イノシシの脅威から助かった安堵からか、おれに向けて熱い視線が送られる。
そして、彼女はハッと我に返ったようでおれから離れる。
「あっ……ごめんなさい! わたし、怖くてつい……」
どうたら、イノシシに襲われた恐怖でおれに抱きついてしまったのが恥ずかしかくなったらしい。
彼女はとても女の子らしい柔らかい声をしていた。
変に声を作っている様子もない。
ぶりっ子をしていないでこの声質というのはアタリだ。
おれの中でドストライクだ!
異世界生活1日目にしてテンションが爆上がりである。
「気にするな。それより、ケガはなかったか?」
まずは安否の確認だ。
モテる男として相手を気にかけるのは当然の行い。
名前や年齢を聞くのはその後だ。
さらにその後は、好きな男のタイプに彼氏に求める条件、そしてハネムーンはどこへ行きたいかを聞こうではないか。
ぐふふふっ……。
スキルとやらで美少女彼女をらくらくゲットだぜ。
おれは心の中で勝利の余韻に浸る。
「えっと……たぶん大丈夫です。それより、あなたは一体……」
よかった。
どうやら彼女は無事だったようだ。
もしもケガをしていたら、おれが背中におぶって家まで送り届けてあげようと思っていただけに、少しだけ残念ではあるが彼女の無事に越したことはない。
そうだ!
お姫様抱っこという選択肢もあったのだ!
まあ、これは結婚式ですれば良いだろう。
それまでお姫様抱っこは大事に取っておこう。
「そうか、それはよかった。おれはマサト。未来の『剣王』となる男だ」
低めの低音ボイスも忘れてはいない。
よくドラマなどで『名乗るほどの者ではありません』などというセリフが出てくるが、おれからしたらナンセンスだ。
名前は覚えてもらい、そして呼び合ってこそ愛は深まるのだ。
名前は名乗った方が得なのだ。
そして、さりげなくチカラを見せつけた後で未来の剣王と名乗っておく。
完璧だ!
運命の出会いに彼女は酔いしれているだろう!
さぁ、これからおれたちの愛の物語をはじめようではないか!!
ぐぅ〜〜〜〜
緊張感のない、情けない音が辺りに響き渡る。
どうなら、おれの胃袋は空気が読めないらしい。
こんな絶好のシチュエーションにも関わらず、腹を空かせたアピールをしてくる。
ばっかやろぉぉぉぉ!!!!
おれは心の中で一人、悲しみのラプソディを奏でる。
おわった……。
こんなドストライクの美少女と出会うなんてもう二度とないのに……。
思えば、あのハゲジジィのせいだ!
あいつが剣だけではなく、食いものをよこせばこんなことにはならなかった!
やっぱ、今度会ったらぶっ殺す!!
おれはジジィへの憎悪を深く心に刻むのであった。
すると、おれの腹の音を聴いて戸惑っていた美少女が声をかけてくる。
「まっ……まぁ、あなた様は未来の剣王様なのですね……。通りでお強いはずですこと」
美少女は気まずそうに話す。
まぁ、こうなるよな。
せっかくここまで完璧だったのに、これじゃ好感度ダダ下がりだよな……。
そして、美少女は気まずそうにしながらも話を続ける。
「その、よかったら食事をごちそうしましょうか? わたしが作る料理でかまわなければですが……」
んん?
なんだって!?
おれは美少女の方を見る。
彼女はもじもじと恥ずかしそうに照れながらおれを食事に誘った。
しかも、彼女が作ってくれる!!
愛! 妻! 弁! 当!
キタァァァァーーーー!!
まぁ、弁当ではないが、それでも愛しき未来の彼女からの手料理!
これを断るようなやつは男じゃねぇぜ!
「それじゃ、ご馳走になろうかな」
落ち着けおれ。
相手は未来の彼女なんだ。
しかし、まだ正式にお付き合いをしているわけではない。
だけど、もしかしたら憧れの『あーん』といったような恋人特有のシチュエーションは叶うかもしれない!
しかも、こんな美少女に食べさせてもらえるなんて……。
ぐふふふっ
心の中で笑いが止まらないぜ。
そうだ!
名前だ!
名前を聞いておかなければ!
「名乗るのが遅れたが、おれはマサトだ。きみの名前は?」
スマートにおれは美少女に名前を尋ねる。
すると、彼女はにっこりと笑って答えた。
「わたしはユウナです! よろしくお願いします、マサトさん」
ズッキューーーーン!!!!
あぁ……。
もう、死んでもいい。
可愛すぎるだろ、ユウナちゃん。
おれのハートが撃ち抜かれてしまったぜ。
「それじゃ、わたしの家まで護衛をお願いしますね。未来の剣王マサトさん」
あぁぁぁぁ!!
可愛ィィィ!!!!
絶対に護ります!
なんたって、ユウナちゃんはおれの未来の彼女ですから!!
「それじゃ、せっかくですからイノシシのお肉をいただきましょう。命には感謝しないとですからね!」
ユウナちゃん、人も良すぎるだろ。
もう、パーフェクト!!
そして、ありがとうイノシシ。
おれたちのキューピットになってくれて。
おれはイノシシに感謝の意を込めて肉を剥ぎ取る。
そして、おれたちはユウナちゃんが暮らしているという村へと二人で歩き出すのであった。
マサト「遂に、未来の彼女であるユウナちゃんが登場したな! くぅ〜、可愛いぜ!」
マサト「ユウナちゃんの年齢、身長、体重、生年月日、好きな食べ物、好きな動物、……。うわぁぁぁぁあ! 知りたいことが多すぎる!!」
作者「ほんとですねー(女の子を前にした時のマサトさん、マジでキショいっす)」
マサト「あぁ? またお前か。よし、今回もおれが次回予告をしてやるぜ!」
作者「(勝手だな〜)」
マサト「次回! ユウナちゃん愛の手料理大作戦! おれのためにユウナちゃんが一生懸命料理を作るぜ」
マサト「それじゃ、次回も楽しみに待っててくれよな!」