マーリンさん、屈辱を味わう
今日は学院の敷地内に有る訓練場に来ている。
これまでの学院での訓練はパーティ戦術や、個人の武器の習熟、基礎体力などの鍛錬が中心だった。
しかし、2年生からはパーティ戦での模擬戦や集団戦術、戦闘指揮などの訓練が始まるらしい。
私達、Sクラスは5人しかいないので、この戦闘訓練はＡクラスと合同で行われる。
Sクラスの貴族組はみんな好い人達だが当然全ての貴族がシアやアルの様なフレンドリーな性格ではない。
「どけ！ 平民如きが子爵家後継であるこの俺の前に立つなど、身の程を知れ！」
「す、すみません」
…………あいつみたいな勘違いしたバカは掃いて捨てる程いる。
「あ～、ビックリした」
「災難だったわね、クルス」
クルスももう少し強気になれば良いと思うんだけどね。
「行こうか、マーリンさん。
レオくん達が待ってる」
「……ええ」
レオ達と合流した私達は、これからＡクラスの生徒と模擬戦をする事になった。
「え～、じゃぁ、SクラスとＡクラスの1班から模擬戦を始める。他の者は見学だ。
SクラスとＡクラスの1班は戦闘の準備をして訓練場に入れ」
コーレル先生の指示を聞き、私達とＡクラスの1班は模擬戦用の武器を選びに、1班以外のＡクラスの生徒は観戦用の席に移動した。
「ちっ、何故子爵家後継である俺が平民などと戦わなければならんのだ」
あのバカはＡクラスの1班みたいね。
「なんだあいつ、学院での身分は平等だとまだ分かってないのか？」
「典型的なダメ貴族ですわね」
「彼みたいなのが貴族のイメージを悪くするんだよね」
子爵家後継くん、高位貴族様にボロカスに言われているぞ。
なんて哀れな奴だ。
威張り散らしているのも何だか滑稽に見えて来た。
少し可哀想な気がして来たけど、多分気の迷いね。
「フン！ 王太子殿下とシンシア嬢やアルベルト殿が属しているからと言って図に乗るなよ。
貴様ら平民如きが高貴な我々貴族に楯突くことの愚かさを思い知らせてやろう。
まぁ、小汚い平民と賢者の弟子だと持ち上げられて良い気になっている貧乳魔法使いなど、この俺の相手になどなる筈がないけどな、はっはっは！」
胸糞悪い、叩きのめしてやるわ。
「ぷっ、ククク」
「レオ、何かおかしな事でもあったの？」
「い、いや、何も、ククク」
ぐ、こいつ！
チラチラと私の胸を見て笑いを堪えていたレオに模擬戦用の杖を振り下ろしておいた。
天誅である。
「あ～いて、模擬戦前に戦闘不能になるところだったぞ！ 手加減しろよ」
「あれはレオ様が悪いですわ」
「レオが悪いね」
「すみません、僕もレオくんが悪いと思います」
「そうよ、十分手加減したわ！
だいたい、私は貧乳じゃないわ！
普通よ、ふ・つ・う‼︎
ね！ シア」
「え！ そ、そうですわね。
普通かどうかは人間の主観によるものですから、その、普通と言えなくもないと思いますわ……」
「アル」
「…………」
「クルス」
「…………」
「なによ！ 目を合わせなさいよ！」
私の怒りの慟哭が訓練場に響き渡ったのだった。
