マーリンさん、疑問に思う
図書館での事件が終わり、アルの妹さんの病気も解決し、私達は残りの学園生活を平穏に過ごしていた。
そして今日、ここ、王都に来て約1年が経ち、私達の学園生活は2年目を迎えていた。
「おい、見ろよ。1年生が来たぞ」
「後輩か、もう1年が経ったとはね。
正直私は学園に来たく無かったんだけど今は無理やり学園に放り込んでくれた師匠に感謝してるわ」
「なにを言っているんですかマーリンさん。
それではまるで卒業するみたいでは有りませんか。
学園はまだ2年も有りますわ、これからは先輩として、後輩達の模範となる様に心掛けなけれは成りませんよ。
それからレオ様、窓から身を乗り出されては、はしたないですわ」
「ははは、確かにマーリンはババくさい事言ったね。
まぁ、僕達は多分卒業しても付き合いは続くんじゃ無いかな。
かなり濃い経験をしたしね」
「あぁ、あの図書館での出来事は一生忘れないな。
まさかあんな大事に巻き込まれるとは思わなかったからな。
でも、いつかまた、皆んなで冒険してみたいな」
「はは、レオくんは流石に無理だと思うよ。
もう成人して、正式に王太子になってシアさんとの婚約も発表されたんだからね」
皆んなでこの1年を振り返っていたけどやはり出て来る話ではあの図書館での戦いが多いわね。
せっかくだから前々から気になっていた事を皆んなに聞いて見るのも良いもしれない。
「ねぇ、実はずっと気になっていたんだけどさぁ、カイト先生……カイトはなにがしたかったのかしら?」
「何をって、どう言うこと?
カイトは王都に来た人達をこっそり攫って邪神への生贄にしていた邪教徒で、図書館に入り浸っていた僕達が邪魔だったからおびき出して殺そうとしたんじゃないの?」
「でもさ、考えてみたらそれって変じゃない?
カイトは王都に来たばかりの人を狙って攫っていたのよね?」
「うん、あの後、憲兵から聞いた話では僕達が巻き込まれるまで、人が攫われている事に誰も気がつかなかったらしいよ」
「それだけ周到にやって来た奴が私達をねらう?
私達の中には、王族に高位貴族と居なくなればそれはもう、国が全力で探しに来る様なメンバーがいるのよ?」
「たしかに、今まで秘密裏にやって来た手口と矛盾しますわ。
慎重に行動するなら私達が卒業するまで3年、大人しくしておくのが最良だったはずですわ」
「たしかに……これは何かの間違いだろうと今まで口にしなかったのだがな、実はカイトの遺体の死亡推定時刻には矛盾があったんだ」
「矛盾ですか?」
「ああ、カイトが死んだのは俺たちが戦った日の3日前だと診断されたんだ。
検視を行ったのは王宮医師だから信頼出来る者なのだが、実際に俺たちはカイトと戦っているのだから誤診だろうと思っていたんだがな」
「つまり、マーリンさんはこの事件の裏には何か別の真相が有るのでは無いかと思っているのですか?」
「うん、カイトが死んだのが事件の3日前、私たちがカイトに情報を貰い、図書館の地下を調べようと決めたのも事件の3日前なのよ」
「地下を調べられたく無い何者かが僕達を殺して、罪を全てカイトに被せようとしたって事かい?」
「カイトが無実かどうかは分からないけど、何か裏が有ると思うのよね」
2年生となった私達の生活は過去の事件の謎と共に始まるのだった。