マーリンさん、お友達になる
集会で学院長の長い話と、首席であるシンシアさんの挨拶が終わり、教室へと戻って来た私達は微妙な空気から脱けだすため、会話を試みた。
「え、え~と、さっきのシンシア様の挨拶、素晴らしかったです」
「ふふ、気を使う必要は有りませんわ。
ありきたりで当たり障りのない挨拶でしたもの。
それと敬語も要りませんし、わたくしの事はシアと呼んで下さい」
「え、良いの?敬語とか苦手だからそう言ってくれると嬉しいよ」
「はい。そもそも公爵令嬢なんて言われてもそれはわたくしの生まれた家が偉いだけで、わたくし個人が手に入れた物では有りませんわ」
「確かに、俺たちは民から敬われる立場にあるが、たまたま貴族に生まれただけだからな。
俺たちは此処から努力して、敬われるだけの人間に成らなければならない。
俺の事もレオと呼んでくれ。もちろん敬語など不要だ」
「レオ様はお立場が有るのですからほどほどにして下さいまし」
「わ、分かってるよ、シア」
「ははは、今から尻に敷かれているねレオ。
女性は怒らせると怖いよ?
僕の事はアルと呼んで欲しい。
これからよろしく、クルス、マーリン」
「こここ、此方こそ、よ、よろしくお願いします」
「よろしく~、所で貴族組の3人は知り合いなの?」
私が気になった事を聞いてみるとレオが3人の関係を教えてくれた。
「俺とシアは婚約している。まだ国民には発表してい無いが、来年俺の成人と共に発表する予定だ。
アルは俺の父上とアルの父上が学院の同期でな、幼い頃から何度も会っている」
「僕とシア嬢は初めて会ったけど、レオから何度も惚気話を聞かされたからね」
「お、おい!アル、何を言っている」
「ふふふ、わたくしもレオ様からアルさんの事は聞き及んでおります。
大切な親友なのだと」
「な、シア!」
「アルさん、後でお話を聞かせてくださいまし」
「はい。もちろん」
おぉ、この国の第1王子が弄られている。
学院の外では有りえないわね。
「ひゃ~、マーリンさんは凄いですね。国のトップと言えるくらいの高位貴族の方達と普通に談笑出来るなんて」
「そお?本人達が普通にしてくれって言ってるんだから普通にしたら良いじゃない」
「そ、そうでしょうか?」
「マーリンの言う通りだぞクルス。
このSクラスを卒業すればほぼ間違いなく上流階級の場に出るのだからな。
今の内に慣れておいた方が良いぞ」
「は、はい。殿……れ、レオくん。頑張ります」
クルスはかなり気が小さいようね。
此ればかりは慣れてもらうしかない。
「所でアルさっきからどうした。元気が無いようだが、何か悩みでも有るのか?」
幼馴染であるレオにはアルの様子がおかしく見えたみたいだ。
私には全く分からない。
「レオには敵わないな。
……実は妹の病状があまり良くなくてね」
「あぁ、ユーリア嬢の石化の奇病か」
「噂は聞いたことが有りますわ」
「うちの執事長が大陸中の医者に声を掛けたんだけど手がかりがなくてね。
マーリンは大賢者イナミ様の弟子なんだよね。
身体が少しずつ石になって行く奇病について何か知らないかい?」
「ごめん。私は魔法を重点的に習ってたから、薬草や病気に関しては基本的なことしかしらないんだ」
「そうか……」
「そうだ!ならこの学院の図書館に行って病気について調べようぜ!」
「そうですわね。わたくしもお手伝いいたします」
「ぼ、僕もお手伝いします」
「私も手伝うよ」
「みんな……ありがとう」
「そうですわ!大陸中を探したなら今度は東方の島国へ行ってみてはどうですか?
あの国は我々とはかなり違う文化を持っていましたから、何か分かるかもしれませんわ」「しかし、東方の島国は最近交流が始まったばかりの国、そう簡単に入国できませんよ」
「それならわたくしにお任せ下さい、東方の島国へ行けるように手配いたしますわ」
「本当ですか?ならすぐに実家に手紙で知らせます」
アルとシアは手紙を書く為、部屋に戻り、私達は先に図書館へと向かう事になった。