マーリンさん、遭遇する
「は!」
アルの槍がホブゴブリンの胸を貫く。
このホブゴブリンで今日倒した魔物は3体目だ。
私達は目標の魔石15個を集めることに成功した。
後は無事、森を抜け、平野に作られている先生達のキャンプに帰還するだけだ。
まだ、気を抜くことは出来ないが少し肩の荷が降りた気分だ。
「よし、少し休息したら森を出よう」
「そうだね」
「水を出しますわ」
「ありがと」
シアか魔法で出した水を受け取り一息つく。
あともう一息だ。
「うあぁぁあ!」
私達が地図を見ながら話し合っていると何処からか、悲鳴が聞こえて来た。
「なんだ⁉︎」
「レオくん、誰か来るよ!」
私達の視線の先にある茂みから飛び出して来たのは、バカ貴族のランスなんとか率いるAクラスのメンバーだ。
ここは1番深い場所だから私達より奥にいたと言うことはルートを外れて奥に踏み込んでしまったのだろう。
彼らは何かから逃げるのに必死で私達に気づいてはいない様だ。
「グブゥゥウ!!」
次に茂みから現れたのは、オークだった。
しかし、このオーク、他のオークより一回りも、二回りも大きい。
簡素な作りの革鎧ではなく、しっかりとした鉄の鎧を身につけている。
「な、オークジェネラルだと!」
レオが驚愕の声を上げる。
オークジェネラルはCランクの魔物だ。
正直私達では荷が重い。
そうこうしている間に取り巻きのオーク達も集まって来た。
「不味い、逃げるわよ!」
「ああ、だけど彼らはどうする?」
レオの視線を辿ると行く手を岩に阻まれ立ち往生しているバカ貴族達、なんてバカなんだ。
「撤退ルートぐらい考えろ!」と言いたい。
「く、くるな!」
「ちっ」
ドカ
「あぐぅ」
「今だ!」
その時、バカ貴族が平民のクラスメイトをオークの方に突き飛ばした。
そしてオークがそちらに気を取られた隙に逃げ出したのだ。
「なんてことを!」
「不味いぞ」
オークが槍を振り上げてAクラスの生徒を狙う。
ギン!
「くっ」
ギリギリでレオが間に滑り込むと槍を盾で防ぐ。
しかし、オークの腕力は強く、レオでも長くは持たない。
「勇気と肉体を司る者よ 彼の者に力を 【フィジカルブースト】」
「はっ」
「やっ」
私の魔法で身体能力を強化されたレオはオークを少し押し返す。
急に強く押され、バランスが崩れたオークにクルスとシアが飛びかかる。
アルは他のオークとオークジェネラルを牽制してくれている。
バカ貴族のせいでオークジェネラルと戦うハメになるとは、最悪だ。
生還したら絶対ぶん殴ってやる。
私は怒りを込めて呪文を詠唱するのだった。




