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マーリンさんの学業奮闘記  作者: はぐれメタボ
三年生
20/31

マーリンさん、驚愕する

 初日は主に座学とホームルームだったのでユウ先生とは軽く自己紹介しただけで別れてしまった。


 しかし、今日は3年生になって最初の模擬戦の授業だ。

 私達は模擬戦用の武器を持って、ユウ先生に指定された場所に向かっている。


「なぁ、あの子どう思う?

 俺にはとても、二つ名持ちの高ランク冒険者には見えなかったんだが?」

「甘い! 甘いよレオ!

 彼女は間違いなく実力者だよ。

 油断するとボコボコにされるし、油断してなくてもボコボコにされるよ」

「ボコボコにされるのは確定じゃない」

「それだけ僕達と彼女の間には実力の差があるって事だよ」

「な、何だか怖くなって来ましたね」

「クルスさん、学院の模擬戦ですからそこまで怯える必要は有りませんわよ」


 私達が指定された場所に近づくと何やら良い匂いがして来た。

 朝ごはんを食べたばかりだが、若い胃袋が食欲をそそる匂いに反応するのは仕方がないだろう。


「あ、皆さん、こちらですよ」

「あの、ユウ先生…………何してるんです?」

「見ての通り、串焼きを焼いているんですよ」

「いえ、何故、串焼きを焼いているのかを聞きたいのですが」

「お腹が空いたので………………なんちゃって。いや、ちゃんと訳が有るんですよ。

 まぁ、お腹も空いているんですが」

「それで今日の訓練は何をするのですか?」


 レオが尋ねるとユウ先生は頷き、答えた。


「取り敢えず今日は皆さんの戦闘力を見せて貰います。

 今からこの円の中にわたしが入ります」


 そう言うとユウ先生は足元に描かれた円を指差した。

 円は直径1メートル程の小さな物だ。


「そして、串焼きを食べます」

「「「「なんでだよ(ですか)」」」」

  「まあまあ、最後まで聞いてください。

 ここに砂時計が有ります。

 これは5分で砂が落ち切ります。

 皆さんには5分間、攻撃してわたしが串焼きを食べるのを阻止して貰います。

 わたしが円から出るか、5分以内に串焼きを食べきれなかったらクリアです。

 先ずはレオさんから始めましょうか」


 ユウ先生が串焼きを1本持ち、円の中に入った。

 

「では、始め」


 ユウ先生は「始め」というと串焼きの1番上の肉を口に運ぶ。

 レオは少し戸惑った様な表情を浮かべたが、直ぐに顔を引き締めると、ユウ先生に斬りかかる。

 

「はぁ!」


 2つ目の肉を頬張るユウ先生にレオの鋭い斬撃が迫る。

 当たると思った次の瞬間、レオの剣はユウ先生が手に持っている串焼きの串(肉2つ分食べたので、その分串の部分が出て来ている)で受け止められていた。


「なに⁉︎」

「え、ど、どうなっているんですか⁉︎」

「なぜ、あんな細い串で剣を止められるんだ⁉︎」

「落ち着いて! アレは魔力強化よ。

  串に魔力を込めて強化しているのよ」

「しかし、強化しているとはいえ、あの細い串で剣を受け止める事なんて出来るのでしょうか?」

「出来てるんだから仕方ないじゃない」


 私達が驚愕し、目の前の現象を考察していると気を取り直したレオが怒涛の勢いで剣を振るっていた。


「はぁぁあ!」


 流れる様に振るわれる精錬された剣技は、全て串焼きの串で受け流されていた。

 激しい剣撃の中、串焼きの肉はどんどんユウ先生の小さな口の中に消えていく。

 そして、肉が残り一切れになった時、レオの剣は串に絡め取られ、空高く跳ね上げられた。

 

「はい。 そこまで」


 最後の肉を飲み込んでユウ先生は終わりを告げた。

 すでに疲労困憊だったレオは膝をつき荒い息を整えようとしている。

 砂時計はまだ、3分の1程しか落ちてはいなかった。


「剣術は綺麗に習得出来てますね。

 しかし、それだけでは実戦で勝つ事は出来ません。

  ただ、型通りに剣を振るうのではなく、相手の呼吸を乱す様に、相手の行動を阻害する様に剣を振るわなくてはなりませんよ」


 ユウ先生は砂時計を元に戻すと2本目の串焼きを手に取った。


「では次は、クルスさん」


 ユウ先生はニコリと笑顔を浮かべ、若干青くなっているクルスに声を掛けた。

 どうやらアルの言っていた事は全て本当だったようね。

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