マーリンさん、試験を受ける
今日はクラス分けの試験がある。
大賢者ナミヤの弟子として情けない結果を出す訳にはいかない。
試験は筆記と実技に分かれており、筆記では大陸史、王国史、算術、法律の基本教科に魔法理論、剣術理論、魔道工学、戦術論の中から2教科を選び試験を受ける。
私はもちろん魔法理論と魔道工学を選んだ。
実技は訓練所の端に設置されたターゲットを剣や魔法で破壊すると言うものだった。
ターゲットは丈夫で魔法耐性も高い素材だったが私のロックバレットはなんとか貫通する事が出来た。
破壊出来たのは私を含め10数人程だろう。
試験までの3日間、空いている時間を勉強に費やした甲斐が有ったようで、私の成績は総合で2位だった。
クラスは成績順にS、A、B、C、D、E、Fに分けられる。
ひとクラスは20人、Sクラスだけは5人と言う少数クラスだ。
少人数で丁寧に教えようと言う事だろう。
Sクラスの卒業生はいずれも国の官僚になったり、大商会の役員になったりと活躍している。
つまりエリートである。
エリート……良い響きだ。
試験の翌日、初めてクラスで集まった。
まぁSクラスは5人だけだけど。
「お~し皆んな席に……着いてるな。ホームルームを始める。まずは自己紹介だ。
ここに居る者達は3年間苦楽を共にする仲間となる。
仲良くするように。
では廊下側の席から順に自己紹介しろ」
廊下側から自己紹介が始まった。
私は窓側の2番目の席だ。
自己紹介なんてした事がないから少し緊張してきた。
「レブリック公爵家の長女、シンシア・フォン・レブリックです。皆様よろしくお願いします」
「ミルミット王国、第1王子のレオンハルト・フォン・ミルミットだ。この学院では身分は無関係だ。
皆もそのつもりで頼む」
「ガスタ辺境伯家の長男、アルベルト・フォン・ガスタです。よろしく」
皆んな高位貴族ばかりか、まぁ当然だな。
権力でねじ込んだと言う訳ではない。
高度な教育を受けてきた貴族が上位を取るのは当たり前だ。
平民でそこまでの高得点を取れるのは私の様な例外と本物の天才だけだろう。
「マーリンです。一応、賢者様の弟子をやってます。よろしくお願いします」
無難な自己紹介をしておく。
余りに奇を衒っても引かれるかも知れない。
「み、皆さん凄いひとばかりですね。
僕はクルスと言います。平民です。よろしくお願いします」
どうやら本物の天才もいたようだ。
「最後に俺が3年間お前達の担任になるコーレルだ。31歳のナイスミドル、彼女募集中だ。よろしくな。
さっきレオンハルトが言ったが学院内では身分を持ち出す事は厳禁だ。
皆んなも気をつけるように」
なかなかフランクな教官だ。堅苦しいのは苦手なので助かる。
しかし、指環やピアス、ペンダントとアクセサリーをジャラジャラ着けているのは教師としてどうなんだろうか?
「それからレブリック、お前は首席だからこの後の式典で挨拶がある。
短くて良いから何か考えとけ」
そう言うとコーレル先生は教室を後にした。
今年のクラス分けの試験で1位を取ったのは、銀髪の美しい少女だった。
私も彼女の事は噂できいたことが有る。
レブリックの才女と呼ばれる少女だ。
新しい大型船を創り、東方の島国との交易路を開拓したとか。
従来の物より遥かに効率的な農法を発見したとか。
彼女に関しては信じられ無いような話が沢山有る。
しかも、ただの噂ではない。
その全てが真実なのだ。
つい最近、東方の島国との交易路の開拓により、国の発展に大きく寄与したとして、王国金獅子勲章を叙勲された。
王国金獅子勲章は武勇以外の方法で叙勲される勲章の中で最も名誉ある勲章だ。
そして、商人としても名を馳せ、現在、歴代最年少のAランク商人として知られている。
生まれ、美貌、才能と完璧な人間なのだ。
とんでもない奴とクラスメイトになったものだ。