マーリンさん、問い詰める
「俺が邪教徒?
一体何を言っているんだ。
何故俺が邪教徒だって事になるんだ?」
「まず初めの疑問は地下でカイト先生と戦った時です。
あの時、先生は何をしていましたか?」
「それは……情けない話だが、カイトの魔法を受けて麻痺していた。
だからどうしたんだ?
戦って無いから邪教徒だとでも言うのか?」
「いいえ、しかし、あの時のコーレル先生は不自然でした」
「マーリンさん、何が不自然だったと言うのでしょうか?」
「思い出してみてシア、あの日、コーレル先生はいつもの様にアクセサリーを着けていたのよ」
「そうか! コーレル先生のペンダントは確か『解放の首飾り』と言うマジックアイテム」
「そう、解放の首飾りを装備していたコーレル先生はあの時麻痺していなかったのよ」
「そ、それは……このマジックアイテムも万能では無い。
稀にレジストに失敗することも……」
「いいえ、解放の首飾りは一定以下の威力の自由を奪う魔法や毒を無効化するマジックアイテム。
コーレル先生の解放の首飾りは上級品の逸品ですわ。
このクラスの物なら闇属性の下位魔法【パラライズ】のレジストに失敗する事はありえませんわ」
「そ、それは……」
「コーレル先生、なぜ麻痺した振りをしたのか説明していただけますか?」
「ぐぅっ…………実は……実は怖かったんだ。
カイトと戦うのが……
だからカイトがお前達と戦っている内に隙をみて逃げようとしてたんだ。
すまない、俺は教師として失格だ。
でも、決して邪教徒なんかではない!
信じてくれ!」
「マーリンさん、本当にコーレル先生が邪教徒なのかな?
コーレル先生はあの時、僕達を助けてくれたんだよ?」
「そうだ! 俺は……怖かったがレオンハルトを助ける為に魔法を放ったんだぞ」
「あの時は既にカイト先生は限界だった。
レオを殺す事は出来ても直ぐに私達に取り押さえられていたわ。
それならばレオを助けて王族に恩を売った方が良い。そう判断しただけよ」
「だが、マーリンの推論は俺が邪教徒だった場合、そう考えられると言うだけで俺が邪教徒だと言う証拠にはならない」
「確かに……マーリン、何か証拠になるものでもないと君の考えは推論の域をでないよ」
「証拠は有るわ。
シア、コーレル先生の机に鍵を返しに行った時のことを覚えてる?」
「は、はい。薬草や魔石、木彫り人形などが乱雑に置かれていましたわ」
「その木彫り人形の中にドラゴンを飲み込もうとする大蛇の木彫りが有ったでしょ?」
「はい、確かに有りましたわ」
私は『邪神崇拝と狂信者』を取り出すと最後の方のページを開く。
「ドラゴンを飲み込もうとする大蛇は邪神を崇拝する秘密結社《新たな支配者》のシンボル、構成員は必ず目につくところにドラゴンを飲み込もうとする大蛇の木彫り人形を置いておかなければならない。
貴方はこの木彫り人形が目立たない様にわざと机を散らかし、多数の木彫り人形を並べていた」
「まてまて、まってくれ。
邪神崇拝? 新たなる支配者?
知らない! あの木彫り人形はたまたま露店で買ったんだ。
木彫り人形を集めるのが趣味なんだよ」
「……ではコレが何か分かりますか?」
私は左袖をめくり、肩まで露出する。
「!」
「マーリン、お前、それは……」
「マーリンさん……」
「ふ、封印術による封印だな。
……かなり強力なヤツだ」
「はい、コレは私が生まれ持った力を封印しています」
「生まれ持った力?」
「ええ、私は肉眼で魔力を見る事ができるんです」
「ま、魔力を!」
「それはまさか最上級の魔眼【精霊王の瞳】ですか?」
「そうよ。
もっとも、私はまだコントロール出来なくて、魔力を視認するくらいしか出来ないけどね」
「そ、それでなぜ魔力を見たら俺が邪教徒だと分かると言うんだ?」
「それは、コーレル先生の左胸にある魔術刻印が見えるからよ。
その刻印は死霊術の禁術【リーンカーネーション】を使うための魔術刻印。
カイト先生は私達と話した後、殺されて【リーンカーネーション】で蘇り、操られていたのよ」
「【リーンカーネーション】の魔術刻印は身に刻むだけで重罪だ。
コーレル先生、大人しくして頂けますか。
もし、マーリンの見当違いならきちんと調べて証明しましょう」
「…………………………………いや、レオンハルト。その必要はない」
「先生?」
「まったく…………お前達はいつもいつも…………余計な事ばかりに首を突っ込みやがって……」
私達は無言で武器を構え、コーレル先生……コーレルから距離をとる。
「まぁ良い、この場で全員の魂を邪神に捧げれば問題ない」
コーレルを捕らえていた結界が破壊された。
不味いな、まさか生身であの結界を破壊されるとは思わなかった。
コーレルは口の端をあげるとニヤニヤしながら告げる。
「さぁ、祈りの時間をくれてやる」




