マーリンさん、確認する
レオのお姉さんに会った日の午後、昨日から読んでいた本もそろそろ終わりに差し掛かった所で興味深い物を見つけた。
今日は授業は午前のみなので時間が有ったのだ。
そのページを見た私は衝撃を受けると同時に身体中から嫌な汗が噴き出す感覚に襲われた。
もし、このページに書かれている事が真実ならあの人は…………
考え始めるといくつもの些細な疑問が疑いに変わる。
あの人が邪教徒だなんて何かの間違いではないかと思う。
どうにか確かめる事はできないか……
そうだ、方法はある。
あの人が邪教徒だったとすればカイトを操る為に必ずアレが有るはずだ。
アレを確認するしかない。
ガタ
私が立ち上がると皆んなの視線がこちらに集まる。
「とうした? マーリン」
レオの言葉に皆んなに私の考えを話すべきか悩む。
いや、まずは確かめる事が先だと思う。
「いや、なんでもないわ」
「?」
不思議な物をみる様な視線を受けながら私は自分の部屋に戻る。
机の1番上の鍵が掛かる引き出しから1つの箱を取り出す。
箱には封印術によって封印が施されている。
これは師匠が封印した強力なものだ。
この封印の鍵は私の魔力だ。
私は封印術の魔方陣の中心に指を当てると魔力を流す。
軽く発光すると箱に施された封印は解除された。
箱の中には1本の鍵が入っていた。
私は鍵を手に取ると、箱を引き出しに戻し、鍵を掛け直す。
そしてローブを脱ぎベッドに投げた。
露わになった私の左腕には、肩から肘にかけて複雑な魔方陣がいくつも連なって1つの大きな魔方陣を形成している。
これは私が生まれ持った力を師匠の封印術によって封印しているものだ。
私はまだ、この力を使いこなす事が出来ないので、封印するしかなかった。
しかし、この力を使えばアレを確認する事が出来る。
私は鍵を左腕の魔方陣の中心に当てると魔力を込めた。
夜の校舎の影、力を使い確認を済ませた私は、あの人を呼び出し、待っていた。
闇の中から1人分の足音が聞こえてくる。
あの人があらかじめ印を付けて置いた位置に来るまで息を潜めて待つ。
あと3歩……2歩……1歩……今だ‼︎
地面に描いた魔方陣に魔力を流すと結界魔法が発動し、あの人を結界の中に閉じ込める。
それを合図に隠れていた皆んなが武器を手に現れる。
「おい、マーリン。
本当にこの人が黒幕なのか?」
「そろそろ僕達にも詳しく話して欲しいんだけど」
「彼は何度もわたくし達を助けて下さいましたよ?」
「僕も信じられないよ」
「詳しく説明せずにごめん。
結界とかの準備にだいぶ時間を使っちゃってね。
でも、これでもう逃げられないわよ。邪教徒!」
私の言葉にレオ達の視線は結界に捕らえられた人物に向けられる。
「おいおい、邪教徒?
一体なんのことだ?
俺にも分かるように説明してくれ」
「そうですね、では説明しましょう」
私は言葉を区切ると手にした杖に魔力を込め、いつでも戦闘を開始出来るように構えてから話しかける。
「地下で邪神への供物として多くの人を殺し、私達を襲い、カイト先生に罪を着せて殺した邪教徒は貴方です」
私は息を整えると声高に宣言する。
「コーレル先生‼︎」




