マーリンさん、学校に行く
この作品は拙作『薬師のユウさん、大斧担いで自由に生きる』と同一の世界のお話です。
世界観、ストーリー、登場人物などがリンクしています。
「マーリン、君には修行として王都の学院に入学し3年間の学生生活をして貰う」
「は?」
私は師匠から唐突に告げられた言葉を直ぐに理解出来なかった。
魔導の真髄を極め、次代の大賢者と成るべく修行を積んでいた私がなぜ王都の学院などに通わなければならないのか?
そもそも学院とは貴族や大商人の子供が顔を繋ぎ、知己を得る為に通う場所で、学問や武術などはお飾りだと聞いた事がある。
そんな場所で一体何をしろと言うのか?
学院などに通っている時間が有れば魔法の1つでも習得するべきである。
例え師匠の命令だとしても軽々しく首を縦に振る訳には行かない。
私は断固抗議する!
「そう思っていた時が私にも有りました」
結局、師匠に言いくるめられた私は王都へ向かう乗り合い馬車の中で大きなため息を吐くのだった。
乗り心地最悪な馬車に詰め込まれ早4日、漸く王都に着いた。
王都には師匠に連れられて何度か来た事が有る。
学院の場所もその時、物のついでの様に教わった。
「すみません。学生管理室はこちらですか?」
「はい。そうですよ。入学希望ですか?」
「はい。あ、これを学生管理室で渡す様に言われているのですが」
私は師匠から預かった手紙を差し出した。
「はい。拝見します」
師匠の手紙に目を通した受付の女性は何度か頷き、奥にいた人に手紙を渡した。
「ナミヤ様のお弟子さんのマーリンさんですね。
お話は聞いております。直ぐに案内の者が来ますのでそちらにお掛けになってお待ち下さい」
言われた通り、椅子に座って案内の人を待つとしよう。
すると奥の廊下から女性が歩いて来た。
良く言えば凛々しい、悪く言えばきつそうな雰囲気だ。
「あなたがマーリンさんですね。
私は学生寮の寮監、サマンサです。
生徒たちの寮での生活を監督しています。
王国法により、この学院内では全ての生徒の身分は平等です。
貴族だろうと平民だろうと王族だろうと皆、平等です。
例え貴女が、大賢者ナミヤ様の弟子であろうと、それは同じです。
くれぐれも問題など起こさない様に!」
「は、はい」
開口一番に怒涛の自己紹介を頂いた。
なかなか強烈な性格のおば「ギロリ」
……お姉さんだ。
サマンサさんに着いて学生寮に向かった。
学生寮はかなり大きな建物だ。
学院に通う全ての生徒が暮らす建物なのでこれくらいの大きさが必要なのだろう。
「ここが貴方の部屋です。制服と教本は机の上に有ります。
クラス分けの試験までに不備が無いよう確認して置くように。
食事は決められた時間に食堂で取って下さい。
ではわたしはまだ仕事が有りますので、何か問題が有りましたら生徒管理室に来て下さい」
「はい。ありがとうございました」
私に与えられた部屋は手狭だが1人で暮らすには十分な広さだった。
簡素なベッドと机と椅子が有るだけだ。
机の上には教本と制服が置いてある。
3日後に有るクラス分けの試験までは特にすることは無いので、私はどう時間を潰すべきか悩むのだった。
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_:(´ཀ`」 ∠):