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あかずきんが「Nightingale」に来てから数刻が経過した。そのころにはもう「Nightingale」は町としての原形をとどめておらず、燃え盛る木材と肉塊の山と化していた。その様子を、あかずきんは町はずれにあるもみの木の上から眺めていた。そして、生き残った狼者を見つけると飛び降りて殺すことを繰り返していた。いつのまにか最後に残ってたもみの木にも火が燃え移っていた。その炎に目を奪われる。異常に赤々と燃え狂う炎がもみの木をその長い舌で舐めまわす。
バキバキッ
音を立ててもみの木が倒れた。無事だった上の方まで炎の貪欲な口の中に放り込まれる。
もみの木を喰べて勢いを増した炎は、さらなるエモノを求めてこちらに襲いかかってきた。とっさに身をかわそうとしたが何故か足が地面にへばりついて動けない。炎が迫る。来る、来る、来る…!
ドシャッ
何かが体に勢いよくぶつかった。その反動で地面に転がる。うまく受け身が取れなかった。落ちていた木の塊にいやというほど頭とぶつけた。
「がっ…はっ…」
歪む視界の中で、一人の少年がこちらに手を伸ばしてきていた。
あかずきんの記憶はそこで途絶えた。