ページ4
こんにちわ
六軒目の家を燃やした時、この不幸な町の名前が『Nightingale』であることを知った。まあいまさらどうでもいいことだが。さっき燃やした家から火が燃え広がっている。この区域は放っておいても燃え尽きそうだ。なら、別の場所へいこう。
そういえば、あの狼者の男は死んだのかな。別に気にはならないが、生きていたら厄介なので一応見に行くことにした。
バー「Ingel」についた。しかし、そこに男の姿はなかった。
(…なぜ)
血の跡はあるのだ。バーを間違えた様子はない。ならば、どこへ…
ガタッ
バッと音のした方を振り返る。そこには一棹のクローゼットがあるばかりだった。無言でクローゼットに近づき、扉を蹴破る。しかし、そこには誰もいなかった。
「…」
少年は、何を思ったのかいきなりクローゼットに向かって斧を振り下ろした。バリバリと音を立ててクローゼットが粉砕する。すると、クローゼットの後ろから血塗れの狼者の男と、全身傷だらけの見覚えのない人間の少年が現れた。
「…よく、ここがわかりましたね。」
傷だらけの少年が口を開いた。
「あたりめェだろ。なめてんのか?」
「…そうですか。それは失礼しました。」
「んで?おめェはだれなんだ?見たところ人間だろう。その男は狼者だ。悪いことは言わねェからそいつから離れろ、危ねェ。」
「へぇ、案外優しいんだ…」
「うるせェ。それで、お前は誰なんだ?」
「人に名前を聞くときはまず自分から名乗るのが礼儀でしょう。」
「そうなのか?あァ…めんどくせェ…えーっと、俺はあかずきんってェ名で呼ばれている。もちろん本名じゃあねェがな。」
「…僕はグレーテルと言います。これは本名です。」
「おォ、そうかい、ご丁寧にどうも。」
「…そして僕は医者です。だから、貴方が心配してくれたのは嬉しいけれど、彼を治療します。」
「医者?ハッ!なんで人間の医者が狼者を治すんだ?そんな必要はねェだろう!まあどうしてもってェなら俺は止めねェがな。おめェらは特例として殺さないでおいてやるから勝手にしろ!」
そうして、あかずきんは「Ingel」を離れた。おかしいおかしいこんなのおかしい。今度あったらあのグレーテルとやらを殺そう。これ以上、“おかしいこと”が起こったら、この世界がもたないんだ。