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王都へ2

完結です!

「ふっ、ふふっ、ふふふ」

エイミはピンク色のガウンに身を包んだジークを前にして、必死に笑いをこらえていた。

野生の狼がふわふわのピンクの毛布に包まれているようなものだ。あまりにも可愛すぎる。

「そんなにおかしいか?」

ジークはピンクのガウンの裾を持ち上げ、首をかしげた。

「いえいえ。とっても可愛くて。ふふっ」

せっかく用意してくれたのだからと、似合わぬものを無理して着ている彼の生真面目さも愛おしい。

「エイミはピンクがよく似合うな」

「そうですか?」

ジークとお揃いが嬉しくて、エイミも用意されていたガウンを着こんでいた。気味の悪い黒髪に可愛い色は

似合わないとよく言われていたから、エイミもピンクなど着ることはほとんどなかった。

でも、本当はこういう女の子らしい色合いの洋服にあこがれていたのだ。

「うん。白くて綺麗な肌だから、淡い色はよく似合う」

ジークはまっすぐにエイミを見つめて、目を細めた。

褒められて、嬉しいような、恥ずかしいような……エイミはぐぐっとグラスの酒をあおった。

エイミもジークと同じく、そんなに酒には強くないのだが、このピンク色の酒は甘くフルーティーで

とても飲みやすい。

「このお酒、美味しいですねぇ。いくらでも飲めちゃいそう」

エイミは上機嫌だった。

「あまり飲み過ぎるなよ。明日は王都を観光するんだろ?」

「はい! 市場でお買い物をしてみたいですし、このお城より大きいという王宮もひとめ見てみたいです」

「うん。どこでもエイミの行きたいところに行こう」

エイミは目の前の夫をうっとりと見つめた。


ジークの銀色の髪も、鋭い目も、たくましい腕も、その腕にある無数の傷跡さえも、彼のものはすべて

恋しく思う。恋をするとはこういうことだったのか。ジークに出会って、初めて知った。

心臓は早鐘のようにドクドクと打ちつけ、体の芯がかぁと熱くなる。ジークを見つめるエイミの瞳は

熱っぽく潤んでいる。

「ジーク様。わたし……」

エイミはジークにしなだれかかった。

「エイミ……」

彼はふわりとエイミの体を受け止めてくれた。彼の腕がエイミの背中に回り、引き寄せられるように

ソファに倒れこんだ。エイミが押し倒したような恰好だが、仕掛けたのはジークのほうだ。

「ジーク様……」

もう言葉はいらない。そう言うかのように、ジークの大きな手がエイミの言葉を遮った。

ジークの指がエイミの唇をなぞり、ゆっくりと彼の顔が近づいてくる。

唇が触れ合うその瞬間、エイミは叫んだ。

「ジーク様! 大変です、わたし、気持ち悪いです~!」

「ええっ」

次の瞬間、エイミはばたりと泡をふいて倒れてしまった。


酒の飲みすぎによる急性症状だろう。ジークが大慌てでエイミを介抱している、ちょうどそのころ、

ヒースは自室でひとりほくそえんでいた。

「大陸の端からわざわざ取り寄せてあげた、秘伝の媚薬は効果あったかな? あのふたりはどうにも奥手

そうだからなぁ。親友の機転に感謝してくれよ、ジーク」


小さな親切大きなお世話だったヒースの機転のおかげで、ふたりの王都観光デートはお預けとなってしまった。

ピンクのベッドに横たわるエイミの隣に、ジークは腰をおろしている。

ふたりの手はしっかりとつながれていた。

「ごめんなさい! せっかく王都まで遊びに来たのに」

「いや、そんなことは気にするな。ゆっくり休めよ」

「でも……ジーク様、すごく残念そう」

上目遣いに見上げてくるエイミから、ジークは焦ったように目をそらした。

「そんなことないぞ。王都観光なんて、いつでもできるからな!」

そう、王都観光は全然残念なんかではない。そもそもジークにとっては、珍しくもなんともない街。エイミ

が喜ぶ顔が見たかっただけだ。

ジークにとって残念なことは、観光よりもふたりきりの夜がお預けになったことなのだが……それは

エイミにはとても言えない、ジークはそう思った。

「でも……ふたりきりで、お部屋デートも悪くないですね。私、とっても幸せです!」

エイミはそう言って、ジークの手にすりすりと頬を寄せた。


これは、俺の忍耐力を試そうとしているのだろうか? 

ジークは馬鹿げた疑心暗鬼におちいりながら、ややひきつった笑顔をエイミに返した。

















ジークの過去編とか出番の少なかったナットのエピソードとか、もう少しネタはあるので

そのうち番外編を書くかもしれませんが、とりあえずいったん完結です!あまり長編にすると

完結できなくなりそうなので……。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。作品の質の向上のため、評価やコメントをしていただけると、大変ありがたいです。どうぞよろしくお願いします!


今回、かなりほのぼのしたお話だったので次はちょいシリアスを考えています。多分、人生やり直しもの。また読んでいただければ、嬉しいです~。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しんで読んでましたがえらく打ち切りみたいな終わり方を… [一言] 25話にて改行のおかしいところを誤字報告機能にて送信しましたが、おそらくそのまま反映するとおかしなことになるため確認願い…
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