詐欺にはご注意を
ある日、サトシは自身の貯金通帳を見て驚いていた。
「は……? なんで……? お金が?」
彼が驚いていたのは、身に覚えのないところからお金が入金されていたからだ。
その額はおよそ5万円。
(俺金なんて借りてないんだけどなぁ……)
とりあえず使わずに放置してみる事にした。
そして数日後、ケータイに非通知で電話がかかって来た。
「もしもし?」
『もしもしー。金融会社はなまるの田中ですがー。
お約束頂いた利息分がまだお支払い頂けてないのですがー?』
「は? ちょっと待ってください。お金をそちらからお借りした覚えはありませんが……」
『ああ!? こっちはテメェが泣きついて来たから貸してやったんだろうが! なめてんじゃねぇぞ!』
「いやぁでも、本当にお金お借りした覚えがないんで! 切りますよ!」
『〇〇市〇〇町の〇✖️だったよな?』
電話を切ろうとした矢先の言葉に手が止まる。
「なんで……住所を?」
『金払わなかったら行くからなぁ!! 覚悟しとけよ!?』
そう言って、電話が切れた。
****
数日後、田中は仲間を二人連れてやってきた。
サトシが金を払わず、その上着信拒否をしたからだ。
「舐めた野郎だ。裏の怖さ、教えてやんねぇとなぁ? お前ら!」
二人とそう言いながらサトシの自宅前に到着した。
住宅街から離れた、やや洋館を思わせる一軒家だった。
「いいとこ住みやがって……おら! 行くぞ!」
まずはインターフォンを鳴らす。
が、出ない。
そして、ドアをドンドンと叩いてみる。
「居留守か? いい度胸だ………。あ?んだ? ドア開いてんじゃねぇか! 本当舐めてんなぁ!」
ドアが開いている事をいい事に、中に土足で入る。
綺麗な玄関を通り、居間に入った刹那、妙な匂いを感じた瞬間から意識が途絶えた。
「おはようございます。押し貸し詐欺のお兄さん」
田中が目覚めると、その光景に目を疑った。
仲間の二人がぶら下がっていた。
裸で。
そして、泡を口から吹いて。
「あーそのお二人なら先に殺させてもらいました。邪魔だったので。結構綺麗に吊れてるでしょう?」
そう言うと、二人の首吊りの間に立ち両手を広げ、田中に目が笑っていない笑顔を向ける。
「で、あなたが田中さんですよね? あ、この二人──まぁすでに殺させて頂いたんですけども、から聞きまして。そうして拘束させて頂いております」
そう言われて初めて、田中は自分の状況を認識した。
お高そうな椅子に座らされ、首から下全てをガムテープで何重にも巻きつけられて全く動かせない。
そして口にもガムテープが貼られている上、中に何か詰められているのか舌を動かす事も出来ない。
この状況の異様さに、嫌な感覚を覚える。
「いやー田中さん。わざわざ来て下ってありがとうございました。おかげ様で、長年の夢が──やっと、裏の方を殺す夢が叶いました! いやー本当、ありがとうございました! あ、安心して下さい! 俺は、どこまで殺れるか含めて夢でしたので、こう裏の方々とー殺し合える! 本当、感謝してます! 俺を選んでくれて、その思い、時間をかけてたっぷりと、お返しさせていただきますね!」
そう言ってゆっくりと田中に向かってくるサトシの右手には電動ドリル、左手にはハンマーが握られていた。
これから始まる悪夢に田中は意識が遠のく感覚がした。
押し貸し詐欺グループを狙った殺人鬼のお話