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イセカイノベル  作者: Rerona
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■ 0 0 4 ■

「アメリアは、私のおばあさまです」

 町の中心地、広場まで来た俺たちは、人だかりの中で、事件の詳細を聞いていた。

 俺たちが入手した情報は以下の通り。

 三十分ほど前、突如盗賊集団が襲撃をかけ、ミアの祖母であるアメリアさんの宅から、『神の篇帙』という宝具を盗んでいったらしい。

 どうやら怪我人も出ているようだ。

 犯行はドアを爆破しての突入──家は町の中程に位置しているし、爆破の音を聞いて住民の対応があったはずだが、手際よく盗まれたってことは、その道のプロなのかもしれない。

 犯行は三人で、内二人は全身迷彩に身を包んでいたが、一人は黒い祭服──聖職者の格好をしていた。

 犯行が三人なだけで、そのグループが三人とは限らないが。

 そして、魔法。

 迷彩服の片割れが魔法を使っていたらしい──なんでも、パッと消えてパッと現れる不思議な魔法だそうだ。

 意味わからん。

 そして、問題はここからだ。

 奴らから『神の篇帙』を奪還できるかどうか。

 宝具と呼ばれているくらいだし、その価値は、きっと俺が思っている以上に高い。

 そんなものがいとも容易く盗まれた時点で、この町の住人は一度完敗している。

 まともに戦うこともなく。

 おそらくこの町には、盗賊と張り合える人はひとりもいない。

 みんなそれがわかっているから、誰も奪還することを言い出せないでいる。

 ミアなら戦えるか?

 いや──彼女の魔法はきっと強力だけど、相手は盗賊だ。

 それだけの相手だ。

 だから、多分。

 俺がやらなきゃいけないんだと思う。

 なにができるかわからないけど。

 俺にはなにもできないけど。

 魔法も持たない、ここにいる誰よりも弱い俺が、それでもここに来たのは──偶然じゃないと思う。

 ミアは、俯いている。

 俯いているけど、その小さな拳は、固く握られていた。

「そういえば──」

 と、そこで町の婦人が切り出した。

「そういえば、祭服を着ていた奴の目元に、花に刃物が刺さったような刺青があったわよ」

 途端に、ミアは表情を変えた──その顔には、畏怖と、絶望と。

 そして、抑えきれない怒りがあった。

「待って」

 瞬時に駆け出したミアの細い腕を、俺は掴んだ。

「俺も行く」

 こんな表情のミアを、ほっとけるわけがなかった。

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