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イセカイノベル  作者: Rerona
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■ 0 0 3 ■

「この世界にも魔法はある?」

「ありますよ、当たり前でしょう」

 残念ながら俺のいた世界にはなかったなあ。

 俺はミアの三歩後ろを着いていく。

 ミアもちょうど町へ帰るところだったらしく、こうして共に森の中を歩いている。

 森といっても、獣道のようなところではなく、道は舗装されてるし、そんなに危険はなさそうだ。

「じゃあやっぱり、マナとかMPとかを消費して魔法を使うのかな」

「いや、そういうのはないと思いますけど…本当に知らないんですか?」

「本当に知らないんだってば。この世界のこと、詳しく教えてほしい」

「どのレベルから?」

「初等教育レベルから」

「はぁ…」

 わかりやすくため息をつかれた。

 しかし、マナやMPの概念がないとなると、どんな風に制限がかかるのだろう──個々人の能力に関係なく、魔法には使用制限があるとか?

 さすがに使い放題ってわけじゃないだろうし(ゲームバランス的にも)。

 それに多分、この世界の戦う術は魔法だけじゃない。

 それは、目の前を歩くミアを見ればわかった──彼女の背には、鳥の羽のようなものがあしらわれた、蒼白の弓矢が折り畳まれて掛かっている。

 美術館に展示されていてもおかしくないほどに綺麗だ。

「魔法とは、この世界に存在する一人ひとりに、ひとつだけある特殊な力のことです」

「ひとつだけ?使える魔法は一種類だけなの?」

「そうです。必ずひとりひとつ──例外はありません」

「じゃあその能力って、呪文を唱えて火や水を出したりできるの?」

「いや…火や水を操る魔法はありますけど、それらを何もないところから生み出すという魔法は、私の知る限りはありませんね。それに呪文もいりません」

 うーん。

 俺の知ってる魔法とは少しニュアンスが違う──一人ひとりの固有特殊能力、みたいな感じかな。

「ちなみにミアの魔法はどんなやつなの?」

「私の魔法は、この弓を操る能力です──弓の名はアルテミス、魔法の名を『月の血統(アルテミスト)』と言います」

 彼女の背に掛けられていた弓が開き、眩い光を帯びて宙に浮いた。

 すげぇ。

 弓を遠隔操作できる能力──それならこんな非力そうな女の子でも戦える。

 本当に、呪文も、動作すらも必要としない──本人の意思で魔法が使えるのか。

 こんな、超能力みたいな、俺のいた世界では説明の仕様がないほどに完全な魔法。

 いざ目の当たりにすると感服する。

「魔法は、遺伝子と深く関わっていて、私の家系は狩猟民族に起源があるそうで──私の父も同じ魔法を使います」

「なるほど…」

 深いなあ、魔法。

 もしかして、もしかすると、俺にも魔法が使えるようになるのでは?

 俺に目覚めたたったひとつの魔法、どんなのだろう…やっぱり仮にも主人公(多分)だし、こう、アツくてかっこいいやつだろうな。

 夢がひとつ叶いそうだぜ。

「見えてきましたよ」

 俺が妄想を膨らましているうちに、森を抜けて、町が見えるところまで来ていた。

 おお…そこまで大きな町ではなさそうだけど、田舎感のある良さげな雰囲気だ。

 ん?

「誰かこっちに向かってきてないか?」

 遠くの人影がだんだん近づいてくる。

 走ってるな。

 手を振ってるな。

 何か叫んでるな?

「──様!ミア様!」

「レバルム?」

 息を切らして走ってきたのは老爺だった──いかにも走りにくそうな燕尾服である。

 老爺に気づいたミアが慌てて走り寄る。

 なるほど、ミアの知り合いか…え、様?

「ど、どうしたの、レバルム!」

「たっ、たいへ…ん゛ん゛っ、大変でございます!」

 必死の形相で何かを伝えようとする老爺だが、息切れとむせ返りで上手く話せていない。

 でもこの感じは、良い知らせではなさそうだった。

「アメリア様の、神の篇帙(へんちつ)が盗まれました!」


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