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「大丈夫ですかー?」
まじか…来ちゃったか異世界。
ここが現実世界ってことはないと思う──だって、この女の子の、身にまとってる服も含めて、この外見はつくりものの世界でしか見たこととがない。
かなりクオリティの高いコスプレとも考えられるけど、いや、ここ草原だし。
なんか羽の生えたウサギがいるし。
自室で眠ってここで起きたってことは、やっぱり異世界に来たとしか思えないなあ。
もっと驚愕して発狂するものかと思ったけれど、普段のオタク活動が耐性をつくってしまって、いまいちなリアクションになってしまった。
それにしても。
「はぁ…ヒロインは巨乳がよかったなあ」
「なっ!?」
可愛いけどね、うん。
現実世界では絶対に会えない絶対的美少女だけど、まあ軽く萌え死ねるけど、妥協してヒロインにしてあげてもいいけどね?
「寝起き早々、初対面の女の子に向かってなんてこと言うんですか!最低です!気持ち悪いです!不審者です!助けなきゃよかった!死んでください!」
めっちゃ嫌われた。
でも、ヒロインの好感度は最初は低めなくらいが丁度いいはず!
初対面の相手に死んでくださいもかなり不審者だけどね。
「きみが助けてくれたんだね」
「そうです、獣の餌食になりそうなあなたを私の親切心で助けてしまいました。私の人生最大の失敗です」
「やめて、人助けを失敗とか言わないで」
こんな華奢な子が人を餌にするような獣に対抗する姿が想像できないんだけど。
しかしここは異世界──想像し得ないことなんて山ほどあるだろう。
「ひとつ質問があるんだけど」
「はい」
「ここどこかな?」
「はい?」
そうなりますよね。
テンプレだね。
ならばこちらもテンプレ発言をしていれば順調に事は進むはずだ。
「俺、ここじゃない別の世界にいたはずなんだけど…」
「え、気持ち悪い上に頭もおかしいんですか?」
おっと。
この世界はテンプレを無視してくるな。
「いや、さっきの失言は申し訳なかったけど、本当にここがどこかわからないんだ」
俺の推測が正しければ、俺はこれから、RPGを実際に体験することになる。
ゲームではなく、本当の体験で。
俺が眠る前にインストールしていたゲーム、その名前は──
「ワールド・リタリアニスです」
だよな。
ここはゲームの中。
ワールド・リタリアニスというゲームをプレイしようとしていた俺は、本当の意味で、ワールド・リタリアニスをプレイすることになったわけだ。
シナリオクリアは何だ?魔王か?
この手のゲームは大得意だ、会話がテンプレ通りに進まなくても、RPGにはRPGのセオリーがあるはず。
だったらまずはキャラクターの自己紹介。
「俺は荒木晴真──荒木が姓で晴真が名。よろしくね」
「アラキ・ハルマ…特殊な名前ですね。私はミアです」
それから──
「ねぇミア、この近くにある町に連れて行って欲しい」