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『高等学校の勉強は将来役に立つか』は世界七不思議のひとつである。
嘘である。
嘘だけれど、それは俺にとって大きな疑問だ──それこそ、世界七不思議のごとく。
『まともな大人になるための役に立つ』は誤答で、正しくは、『汚い大人になるための役に立つ』だから、俺が高校の勉強をする理由にはならない。
『社会貢献できる大人になるための役に立つ』──社会貢献なんてまっぴら、俺は自己満足に尽きて死にたい。
『高等学校の勉強は社会の常識だから役に立つ』ことはない、知っての通りまったくない。
国語、数学、理科、社会──そういうのは学者になりたいやつが勉強すればいい。
音楽、美術──そういうのはアーティストになりたいやつが勉強すればいい。
だから、ゲーマーになりたい俺は、こうして毎日、部屋に引きこもってゲームをしているのである。
ゲームに出てくるテキストは現代文の教科書より勉強になるし、戦闘や育成の中にある緻密な計算は数学の公式を覚えるより勉強になるし、海外のゲームソフトは何気に英語の勉強になる。
アーティスティックな素養は俺にはいらん。
社会と俺は相容れない。
その点では、ミア・リタリエルは俺に賛同してくれている。
ミア・リタリエル。
うっすら水色がかった白いショートボブが特徴の女の子。
狩りを生業としていると自称していて、弓を所持しているが、その体躯は弓を引く力もなさそうに見えるほど華奢だ。
俺は彼女の声で目を覚ます。
でも俺は、前述した通り引きこもりで、姉もいなければ妹もいない一人っ子で、女の子の声で起こされるなんてありえないはずなのだけれど──あれ、そういえばなんで寝てたんだっけ?
新しいゲームの配信を知らせるメールが来て、そのゲームをインストールしてる途中に寝落ちしたのかな。
ならばもうインストールも終わっているだろう、思う存分楽しませてもらおう。
俺が目を覚ましたそこは、さてお待ちかね──異世界だった。