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オタクおばさん転生する  作者: ゆるりこ
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「なんじゃと!? 貴様ッ 口のきき方に気をつけよッ」


 キャサリンの勢いに一瞬驚いた剣士だったが、すぐに鼻で笑い返した。足腰すら立たないほど弱っているのに、危機感はないのだろうか。イークレスが諭すように言った。


「そうですよ、立花様。あなた方はミユキ様が石から戻してくださったというのに……」


「だから石ってなんなんだよ!? 知らねぇってそんなの」


 愕然とミユキを見上げる少女と槍を持った少年に立花は気がつかない。


「その……ミユキ…さん?」


 槍を持った少年は立花を無視してミユキに問いかけてきた。顔色が悪い。


「お…僕、徳山って言います。あの、僕達やっぱり石になっていたんですか?」


「なったよ」


 答えたのはおかっぱの少女でだった。

 蚊の鳴くような、か細い小さな声で、しかしはっきりと言った。

 驚いた立花と徳山が少女を見る。少女は目を閉じた。


「わたしはふたりが石になったところまで見てたもの。それから……」


 おずおずと己を見る少女に、イークレスは涙を浮かべている。


「こゆみ様、本当に、本当にすみませんでした。あなたを石にしてしまうなど、知っていたら世界が瘴気に滅ぼされてもここにはお連れしなかったのに」


 こゆみの指に唇を当てながら剣呑なことをさらりと言うエルフである。エルフが自然と平和を愛する種族というのは、やはり違っているらしい。しかし少年や少女達を封印の道具としかを見ていない人間ばかりではないことに、少しほっとしているミユキだった。


「えーと、とりあえず、先を急ぎたいので信じられないなら立花君も一緒に行きますか?」


「え?」


「百聞は一見にしかずといいますし。あと四人、早く解呪しないといけないので、私は先を急ぎます。終わったらとりあえずこちらに連れて来ますので、イークレスさん、このまま皆さんと待っていていただきたいのですが」


「某も参る」

「妾もじゃ」


 ふたばを小脇に抱えたコウスケはさっさとミユキの横に立った。キャサリンも当然のように右にならえである。


「わ、私も連れて行って下さい」


 力が入らないであろう体を懸命に動かしながら、こゆみも声をあげた。その小さな体をイークレスがふわりと抱きかかえる。お姫様抱っこである。やはり、イケメンはお姫様抱っこか!


「私はこゆみ様と共に」


「僕もお願いします!」


(やっぱそうなるよね……)


 ミユキは両手の手のひらを三人に向け、ぐるぐる回しながら呪文を唱える。本当は無言でもいけそうだが……,


「ピン○プルピン○ルパムポップン♫パン○ルピンブル○ムポップン」


 何のかんのでこれが一番楽しいのだ。もっと鼻にかかった感じで可愛く言えればいいのだが、声は低いほうだし、歳が歳だけにしかたがないのよ〜と腹の中で言い訳するミユキである。


「な~おれなおれ、ルルラララ~~~~」


 ミユキの手のひらから湧きでた緑色の光が辺り一面に広がり、それぞれに吸い込まれる。呆然と見ていた三人は自分の体調の変化に気づいたようだ。立ち上がり、全身をチェックし始めた。


「なっ、なんだこれは?」

「え? え? え?」

「………? 目が……?」


「あ、そうだ。皆さん、空は飛べますか? というか、浮けます? こんな風に」


 ミユキはふわりと浮いて見せた。それをみていたふたばもじたばたとコウスケの腕から飛び出て同じように浮いてみせる。人間とエルフは目玉が飛び出そうなほど凝視した。


「「「………できません」」」

「できねーよ!」


「そうですか……」


 残念なものを見るように言われて立花が奥歯を噛みしめている。


「コウスケさんとキャサリンさん、大変申し訳ないのですが、みなさんを背中に載せて頂けませんか?」


「承知した」

「構わぬぞよ」


 頷いたふたりに頭を下げ、ミユキは呪文を唱える。


「ラ○パスラミ○スルルルルル~~~~」


 らせん状の光が二人を包み込み、広がっていく。その後現れた二頭の竜に四人は開いた口が塞がらない。


「あれ、キャサリンさん、そんな色だったんですね」


 白銀の竜の横に佇むのは、深紅の竜であった。


「なんで……ッ!?  ぐはッ」


 竜に剣を向け、駆け寄ろうとした立花が突然うめき声を上げ、後方に転がっていった。尻を天に向けてでんぐり返っている。


「あぁ~、すみません。いきなり背後に立たないようにお願いしとくの忘れてました~。大丈夫ですか? ホントにごめんなさい」


 駆け寄った徳山に抱き起こされた立花は、口と鼻から血を流して、意識が朦朧としているようだ。ぺこぺこと頭を下げながら回復の光を飛ばすミユキをエルフが怯えた目で見ていた。


「それじゃ、出発しますね~。イークレスさん、おそらく瘴気の中に突っ込みますので結界を張っておいてくださいね。他の皆さんは勇者なので大丈夫ですよね~」


 コウスケの背に立花と徳山にふたば、キャサリンの背にはイークレスとこゆみが載り、その間にミユキが立って二頭の竜の首に手をかけた。


(よし、着いたらまず全員の体力魔力の回復だ! いやいやその前にみなさんのMPを使わずに移動できますように〜〜!)







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