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オタクおばさん転生する  作者: ゆるりこ
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元ネタがわかりにくかったらすみませんです

 空が光に包まれ、光のかけらが舞い落ちてくる。


「なんだ、これは………」


 もう、結界を張る事もできず、このまま朽ち果てるのだと思っていた矢先の体力と魔力のフル回復。傷まで癒えていた。

 そして、瘴気で淀みただ闇が広がるばかりだった空が、今は真っ白に輝いている。

 きらきらと落ちてくる光に手をかざせば、ほんのりと温かな力がみなぎってきた。


「こゆみっ!」


 愛しい人の名を呼び、姿を確かめようとした視線の先には、漆黒の竜と対峙するかのような白銀の竜、そして人間の女が立っていた。旅人なのか? 石となったあのひとに触れようとしている。


「風よ、刃となりて……」


 魔力が満ち足りた今、エルフの自分に勝る風の精霊魔法使いはこの地に存在しない。


「斬り刻めッ!」


 人間の女の、石に触れようとしている手を狙い放たれた風は、吸い込まれるように的に向かった。

 しかし、その手を切り刻む前に、白銀の竜の翼に阻まれ、一瞬で消える。


 竜の咆哮が大地を揺るがさんばかりに響き渡った。


『たわけ者がッ』


「ありゃ、あのエルフさん、この石の方とお知り合いでしたか。うーん、コウスケさん、お助けありがとうございます」


 翼の影から顔を出したミユキが、間の抜けた声で呟いた。


『ミユキ殿、悪いが人型にしてもらえぬか』


「あ、はい。テクマ○マヤコ○テクマ○マヤ○ンコウスケさんになあれ」


 人型になるが早いか、コウスケは袴をはためかせて愕然と立ち尽くすエルフに向かって走り出した。


(おぉっ、走るお姿はやはり○田○先生だなぁ。今度は帽子を被っていただいて片手で抑えつつ、走っていただこう。下駄で)


『今のは何じゃ?』


(こちらは御姫様だな)


「お言葉が通じないので、人型に変わられたかったのかと思います」


『妾もしてみてくれまいか?』


「ええ。でもその前にしばしお待ちくだされ」

(しまった、つられて言葉遣いが変になっちゃったよ)


 光が舞い落ちて、緑が芽吹いていた大地に、広範囲に行き渡るよう、長めの回復の呪文を唱える。これこそ、ぴんぷ○ぱんぷ○で踊りながらやると楽しそうだが、同時にココロに深い傷を負いそうなので踏みとどまったミユキは自分を褒めてあげたかった。


 遥か遠くに生まれた森を見て、守護竜はミユキを凝視している。


「さて、とにかく元に戻っていただきましょう。はい! ラミパ○ラミパ○ルルルルル〜〜」


 石化していた下半身が光に包まれ、次に見た時にはすっかり元にもどっていた。


『な……に……』


「守護竜さん、むちむちセクスィー美女とスレンダー美女、どちらがいいですか?」


『は……?』


「まぁ、とりあえずの仮ということで、次があったら他のお好みにしますので今回はお任せくださいませ」


(ここはやはり、極妻だよね〜〜。あ、いや、流石に着物は動き辛いか……。キャサリンさんでいこう)


「テクマ○マヤコ○テクマ○マヤコ○、2時間ドラマの女王様(グラマーな方)になあれ」


 螺旋の光に包まれて、現れたのは……

 ゴージャスアイリ……ではなく、ゆるふわウェーブを、風に揺らし、ボッキュッボンのナイスバデー、ぽってりとした下唇、最強の流し目の某2時間ドラマのシリーズヒロイン、キャサリン(日本人だけど)であった。


「おお、なんと……おぉっ! 声が……」


「では、失礼してあの方がたを元に戻させていただきますね」


 スカートを翻してくるくる回っているキャサリンにはしばらく好きにしていただいておくことにして、ミユキは石に手をかざした。


「お待ちくださいッ!」


 草原を先ほどのエルフが、緑がかった長い金髪をなびかせて駆けてくる。


 ミユキの目の前に立ったエルフは、それはもう美しかった。尻がむず痒くなるほどに。


「何でしょう?」


「さ、先程は大変失礼致しましたッ! ミユキ様が瘴気を消して下さったとは…… その、申し訳ございませんでした」


 深く頭を下げた後、顔を上げ目を合わせると、エルフの瞳は翡翠色であった。


「いえいえ、大丈夫ですよ。お気になさらず」


 にこりと笑みを返すと、何故か顔を青くするエルフである。しかし、すぐにひきつった笑みを浮かべ、自己紹介を始めた。


「わ、私はフォリウム・ラーディクス国のイークレス=アクイフォリウム=ラームスと申します。イークレスとお呼びください」


「はあ………」


「その……お、お願いがございます。ミユキ様は封印石を、もとの人間に戻せるお力がおありになるとか……。たった今、守護竜様も石から解放されましたよね? お願いです! こちらの石も元に戻していただけないでしょうか?」


「………」

(今やろうとしてたのを、さっき、お待ちくださいって言ったよね……? 何を止めたんだろうか?)


「お怒りなのはごもっともでございます。身の程もわきまえず、ミユキ様に傷をつけようなどと……恥知らずなことをッ どうか、私にできることならば、何でもさせていただきますので……この石を、この石だけでも元に戻していただきたいのです!」


 (この石だけでもって………)


 石を撫でさすりながら訴えるエルフである。翡翠色の瞳が爛々と輝いて何だか不気味でもある。


(エルフって自然をこよなく愛してて、優しくて繊細で思慮深く、弓が上手な種族じゃないの~?)


 かなりの偏見が混じっていたのかもしれない。


(翡翠ごはん……豆ご飯が食べたくなってきた……)


 緑色の瞳でしつこくお願いされ、アンニュイな気分になるミユキなのだった。






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