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オタクおばさん転生する  作者: ゆるりこ
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 森の中で、ミユキは猛烈に反省していた。


(あれはマズイよね。オバさんって言われても前はグッと堪えてたよ。ホントにおばさんなんだし……。文句言うとか、大人気ないわ〜。平和主義がモットーだったよね? 偉そうに説教たれるなんて……恥ずかしいヤツだよ)


 気が滅入りつつ、目の前にはオークの死体が多数転がっていたので、一体ずつバッグに収めていくと、ゲギャゲギャ鳴き声が聞こえてきた。蛙ではない。ものすごい数のようだ。それと共に金属音と男の声が混ざってくる。


(戦っている?)


 そろそろと近づいていくと、人間と腰くらいまでの小さな生き物が戦っていた。小鬼のような……。戦うというのか、一方的にやられているのに数で圧してくる消耗戦のようだ。


(あのギルドに来た人の仲間なんだろうなぁ)


 人間は20人近いくらいで、小鬼?は倍以上いるようだが、勢いから言うと人間が勝ちそうである。


(ここで出しゃばっていいのだろうか? 倒すとレベルが上がったりするのなら、邪魔しちゃダメだよね)


 レベルが上がるのならオークだって、他の誰かにとどめをさしてもらう形があったはずだ。


(やっちまった感がありありだよ……)


 頭の中でグルグルしながらオークを回収していく。

 数を数えるのは忘れているが、オークの習性なのか、4、5体ずつ固まっていた。単独行動はしないようだ。集めやすい。


(取りあえず、この先はおとなしくしておこう)


 うっかり忘れていたが、スナイパーGの常套句に「俺には関係のないことだ」というのがあったのだ。


(ソリス村でオークのことを片付けたらさっさと住処を探して森に篭ろう、いや、一旦一人で今後の事をきちんと決めなければいけないよね。行き当たりばったりではマズいよ)


 そもそもこの森のオークを全滅させてしまって、生態系に影響はないのだろうか? オークが森を守ってたりしたら非常にマズいのでは……。名前が似ているだけに、心配な事この上ないミユキだった。


 遠くではまだゲギャゲギャ言っている。結構時間がかかるようだ。


「ふたば、行くよ」


 少し離れたところのにおいを嗅いでいたふたばを呼び寄せつつ、ゲギャゲギャ聞こえる場所に移動を開始したところ、木漏れ日の中、歪んで見える空間があった。


「何だろう?」


 近づこうとすると、その方向を見たふたばが唸り声をあげ、鼻に皺を寄せて牙を向いている。


 ぽっかりと空いた裂け目のような空間の奥から何かが湧いてきている。黒い、霧のようだが、気配が禍々しい。ミユキには霊感など全く無かったのだが、そのようなものを感じた。

 黒い霧が辺りに充満してくる。

 裂け目から湧く黒い霧が舐めるように草木を覆い、覆われた草木は、まるで早送り再生を見るように、枯れていった。


(なるほど)


 裂け目は勢いよく黒霧を押し出してくる。ミユキのいる方向に。ふたばが激しく吠えたが、勢いはそのままに、黒霧が一人と一頭を覆った。


(こりゃ真っ暗だ)


 においは感じないが、纏わりつく気配は堪らなく不快である。草木を枯らすこの霧が森を覆い尽くせば、死の森になってしまうだろう。


(しかし、裂け目はいったい何なのだろうか)


 遠くで戦う冒険者の声に、悲鳴のような物が混ざり始めた。戦況が思わしくないようだ。


(うーん、枯らす霧だから、回復に弱いのかな? 聖なる光的なのが弱点なのかな? 取りあえず、あっちの方々を回復してから考えるか)


 闇の中で手のひらを上に向け、ほわりと緑の光を生みだすと、黒霧がそれを避けるように空間を作った。


(これは苦手なのか。でも、消えるわけではない)


 手のひらを下に向け、押し出すように光を地面に向け放つと、枯れた草が巻き戻し再生のように生を取り戻していく。そのまま更に力を込めるように光を押し出していった。水と油のように緑の光と黒い霧が二層に分かれて広がる。黒霧より勢いよく緑色の光が広がり、森の地面を覆っていった。

 回復で消せないのなら聖なる光でと思うのだか……。


(聖属性、聖属性、聖属性ってひとつしか浮かばない〜〜。とりあえず、ゴメンなさい〜〜)


「ホ……あ、」


 シリーズ中プレイしたもの全てで、最強白魔法だったので躊躇っていたが、もうひとつ思い出した。魔法じゃない、御呪いだ。


「祓いたまえ清めたまえ〜〜」


 直径3メートルくらいの白い光の柱がミユキを中心に雲を突き抜けて天まで伸びたかに見えたが、それは一瞬で粒子になり一帯に降り注いでいく。

 キラキラと落ちてくる光の粒が森の木に触れると、緑が鮮やかに光り輝き、黒い霧は粒に触れると、かき消されるように消滅した。木漏れ日の中、落ちてくる光の粒子は雪のようだ。


(よかった〜〜って、あの裂け目は?)


 裂け目のあった場所を見ると、まだ、そこに存在していた。光の粒がそこに集まり、裂け目を覆い始めている。


(なんだかわからないけれど、こうしろと、ゴーストが叫んでいる気がする〜〜)


 ゴーストは叫ばない。囁くのだと突っ込んでくれる人はいなかった。


「ふたば! 行くぞ!」


「わうわぅ!」


 ミユキとふたばは一目散に駆け寄って裂け目の縁を両手で掴むと右足を引っ掛けて、頭から中に突っ込んだ。ふたばもジャンプしてひらりと中に飛び込んで行く。先っぽの白いしっぽを立てて。


 突っ込んだ先は、底の見えない暗闇だった。


「うーん、困ったねぇ」


 ミユキとふたばは真っ逆さまに奥深く、落ちていった。







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